
PCオーディオやネットワークオーディオの世界で、最高の音楽体験を求める多くのユーザーから絶大な支持を集めるソフトウェア、それが「Roon」です。
しかし、非常に高機能であるゆえに、「何ができるのかよく分からない」「導入が難しそう」と感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、Roonの基本的な仕組みから、具体的な始め方、そしてその真価を引き出すための応用テクニックまで、Roonに関するあらゆる情報を体系的に解説します。
Roonは、どんな人におすすめ?
Roonは素晴らしいソフトですが、全ての人に最適なわけではありません。特に、以下のような方にRoonは最高の音楽体験を提供します。
音楽が大好きで、多くの音源を所有している方
PCやNASに保存した膨大な音楽ライブラリも、Roonの強力なデータベースが自動で整理し、アーティストや作曲家、録音エンジニアといった様々な情報で「横のつながり」を提示してくれます。これにより、自分のライブラリを全く新しい視点から再発見できます。
ネットワークプレーヤーの操作性に不満がある方
Roonを使えば、オーディオ機器側の操作性は気にする必要がありません。再生や選曲といった操作は、すべて使いやすいRoonアプリが担保してくれます。また、DSDに対応していないUSB-DACでも、Roon側がリアルタイムで再生可能なPCMに変換して送出してくれるなど、オーディオ機器に優しい側面も持っています。
Roonを体感する、最も簡単な始め方

Roonは奥深いですが、基本設定なら驚くほど簡単です。まずは無料お試し期間を使い、今お使いのPCだけでRoonを体験してみましょう。
- PCに「Roon」をインストールする
公式サイトからソフトをダウンロードし、PCにインストールします。これがRoonの頭脳となる「Roon Server」として機能します。 - 音楽フォルダを指定する
PC内、もしくは同一ネットワーク上のNASなど、音楽フォルダをRoonに読み込ませます。自動的にアルバムアートや楽曲情報が整理された、美しいライブラリが完成します。 - Roon Ready対応機器やUSB-DACで再生する
PCに接続されたUSB-DACや、ネットワーク上にあるRoon Ready対応のオーディオ機器を、Roonは自動で認識します。出力先としてそれらの機器を選択すれば、すぐに高音質な再生が始まります。
料金プラン(2025年7月現在)
- 月額プラン: $14.99 USD
- 年額プラン: 149.88USD(月あたり12.49USD)
- ライフタイム(永年ライセンス): $829.99 USD
全てのプランで14日間の無料トライアルが利用可能ですが、こちらから申し込むと、1ヶ月に延長されます。
安心の解約方法
無料トライアル期間中を含め、いつでも簡単にサブスクリプションの自動更新を停止できます。公式サイトのアカウントページから数クリックで手続きが完了するので、安心して試すことができます。
Roonの基本的な仕組み
Roonのシステムは、大きく分けて3つの要素で構成されています。この「三位一体」の仕組みを理解することが、Roonを使いこなす上で最も重要です。
Roon Server(サーバー)

Roonの頭脳であり、心臓部です。音楽ファイルの管理、データベースの構築、音声信号の処理など、すべての中心的な役割を担います。
Roon Output(アウトプット)

Serverが処理した音楽信号を受け取り、スピーカーへ音を出すための「出口」です。PCに接続したUSB-DACや、ネットワークプレーヤーなどがこれにあたります。
Roon Remote(リモート)

選曲や再生・停止など、Roonを操作するための「リモコン」です。スマートフォンやタブレット、PCにアプリをインストールして使用します。
機器選びの重要な指針「Roon Ready」と「Roon Tested」とは?
Roonと連携するオーディオ機器には、2種類の認証が存在します。これは、あなたが機器を選ぶ上で非常に重要な指針となります。
Roon Ready ー ネットワーク経由で最高の体験を
「Roon Ready」とは、ネットワークプレーヤーやアクティブスピーカーなどの機器自体に、RAATプロトコルが直接組み込まれていることを示す認証です。
LANケーブルでネットワークに接続するだけで、Roonが自動でその機器を認識し、一切の設定不要で最高の音質を引き出してくれます。手軽さと音質の両面で、最も推奨される連携方法です。
オーディオ機器にボリュームがついていれば、Roonのアプリ上で音量調整も連動します。
Roon Tested ー USB接続でも安心して使える証
「Roon Tested」とは、主にUSBで接続するDACなどが対象です。これらの機器はRAATを内蔵していませんが、Roon LabsのチームによってRoonとの完璧な互換性がテストされ、最適化されていることを保証します。
お使いのUSB-DACが「Roon Tested」に対応していれば、PCやMacに接続した際にRoonがそれを認識し、面倒な設定なしに安定した動作と最高のパフォーマンスを発揮できるよう自動で調整してくれます。この場合、RAATプロトコルは使われませんが、RoonがOSのオーディオ出力(ASIO, WASAPI, Core Audioなど)を直接制御することで、最適化されたビットパーフェクトな信号をDACに送り込みます。
USB接続における動作保証のようなイメージです。
実際には、認証をとっていないUSB-DACでも使用できます。
核心技術「RAAT」“オーディオファイルのためのAirPlay”
Roonの音質と安定性を支えているのが、独自のネットワークオーディオ伝送プロトコル「RAAT(Roon Advanced Audio Transport)」です。
これは、Roon自身が「オーディオファイルのためのAirPlay」と称するほど優れた技術で、一般的な伝送方式とは一線を画します。その最大の理由は、再生の主導権を「Audio Device(再生装置)」側が握る点にあります。
多くのプロトコルでは、送信側(サーバー)の都合でデータが送られますが、RAATでは再生装置のクロックをマスターとし、再生装置が要求するタイミングでデータを送ります。これにより、音質劣化の大きな原因であるジッター(時間軸の揺らぎ)を極限まで抑制し、安定したビットパーフェクト伝送を実現します。
デコードなどの重い処理は全てRoon Serverが担うため、Audio Deviceは純粋に音を出すことに専念できます。
つまり、Roonを処理するサーバーには厳しく、再生するオーディオ機器にはやさしいソフトウェアといえます。
Roonの本質 ー 音楽の海を「横断」する、まったく新しい発見体験
Roonの何が優れているのか、Roonがもたらす新しい音楽体験については、下記ページで詳しく解説ています。

Roon Serverの準備 ー 3つの選択肢
Roonの心臓部である「Server」を、どのハードウェアで動かすかは非常に重要です。ここでは、代表的な3つの選択肢を紹介します。
手持ちのPCで試す
まずは、お手持ちのWindowsやMacにRoon Serverのソフトをインストールし、操作性などをチェックしてみましょう。無料のお試し期間がありますので、その期間中にRoonを使い倒して、ご自身の環境で快適に動作するかを確認するのがおすすめです。
音楽再生専用機を用意する
Roonを本格的に運用するなら、音楽再生専用のPCを用意するのが理想的です。RoonはLinuxベースの専用OS「ROCK」を無償で提供しており、これをIntel NUCなどの小型PCにインストールすることで、非常に安定したRoon Serverを構築できます。
比較的買いやすいオーディオ専用Roon Serverはこれがおすすめです。
NASをRoon Serverとして使う
NASをRoon Serverとして使用することもできます。大容量の音源をお持ちの場合、ライブラリを一括で管理できるメリットや、24時間365日稼働できる強みがあります。
当方ではSynology社のNASを使用していますが、その具体的な設定方法や使用感については、こちらの記事で詳しく解説しています。

重要な土台 ー 安定したネットワーク環境
どの方法でRoon Serverを構築するにせよ、その性能を最大限に引き出すには、安定したネットワーク環境が不可欠です。特に、有線接続と無線接続のどちらを選ぶかは、音質にも影響を与える重要なポイントです。
ストリーミング連携で広がる音楽体験
Roonの大きな魅力が、TIDALやQobuzといった高音質ストリーミングサービスとの連携です。手持ちのライブラリとストリーミング音源をシームレスに統合し、膨大な音楽の海を自由に探索できます。
日本のユーザーにはQobuzがおすすめ
現在、日本で正式にサービス展開しているのはQobuzです。ハイレゾ音源も豊富で、Roonとの連携もスムーズなため、まず検討すべきサブスクです。
TIDALの利用について
一方で、TIDALも依然として魅力的です。日本での正式なサービスはまだですが、利用する方法は存在します。Qobuzとの比較や、具体的な契約方法については、以下の記事で紹介しています。

Roonをさらに使いこなす応用編
基本的な使い方をマスターしたら、次はRoonの真価を引き出すための応用テクニックです。
進化し続けるRoonの新機能
Roonは日々アップデートを繰り返しており、常に新機能が追加され、ますます便利になっています。
自宅にあるRoon Serverの音源を、スマートフォンのアプリを使って外出先からストリーミング再生できる「Roon ARC」というサービスも開始され、ますます便利になりました。

ジャンル情報を整理して、音楽を再発見する
Roonはジャンルの階層表示など、高度なライブラリ管理が可能です。自分のライブラリを整理し、新たな音楽と出会う楽しみ方を紹介します。

クラシック音楽ライブラリを完璧に整理する
Roonの強力な機能の一つが、クラシック音楽の「作品(Work)」と「楽章(Part)」を認識し、階層表示してくれる機能です。この仕組みを理解すると、同曲異演をかんたん選べる、複数の曲の中から、特定の作品だけをまとめて再生できるなど、クラシックのライブラリが格段に使いやすくなります。

完璧なライブラリを作るためのタグ編集術
Roonはレーベルや型番、クラシックであれば、指揮者やオーケストラに作曲者など多くのタグ情報の取り扱いが可能です。メタデータを、Mp3tag完璧に整えることで、さらに快適な音楽体験が実現します。

まとめ
Roonは、単なる再生ソフトではありません。あなたの音楽ライブラリを再発見させ、新しい音楽との出会いを提供してくれる、最高の「ミュージック・コンシェルジュ」です。
導入には少し知識が必要ですが、この記事を参考に一つずつステップを進めれば、必ずその素晴らしい世界を体験できます。ぜひ、あなただけの最高の音楽体験を、Roonで構築してみてください。