
Roonを導入し、その素晴らしい音楽体験に満足しているあなた。次の悩みは「Roon Serverを何で動かすか?」ではないでしょうか。
公式のNucleusや専用PC(NUC)は確かに魅力的ですが、多くはSSDスロットが一つしかなく、増え続ける音楽ライブラリの容量に不安が残ります。
そこで有力な選択肢となるのが、大容量ストレージとサーバー機能を両立できる「NAS」、特にSynology製品です。
この記事では、実際に私が8TBx2の16TB構成で7000枚弱のライブラリを運用するSynology NAS「DS720+」をベースに、そのメリットと現実的な性能、そして2025年現在のおすすめモデルまで、掘り下げていきます。
【そもそもRoonって何?】
Roonがもたらす「音楽の横の繋がり」を発見する体験や、基本的な仕組みについては、まずはこちらの記事をご覧ください。

結論 NASはRoon Serverの「ベスト」か?
先に結論を述べます。NASが万人にとって「絶対的なベスト」とは言えません。レスポンスの速さだけを追求するなら、専用PCに軍配が上がる場面もあるでしょう。
しかし、数千枚を超える音楽ライブラリを持ち、データの安全性も確保し、さらにRoon以外の機能も使いたい、という現実的な要求を持つユーザーにとって、Synology NASは有効な選択肢の1つと考えられます。
これからその理由を解説します。
私がRoon ServerにSynology NASを選んだ3つの理由

理由1 ー Roon専用機にせず「柔軟なオーディオハブ」として使える
Roonは素晴らしいですが、時にはLuminなどのUPnP環境で再生して比較したいと思うこともあります。
専用PCのRoon OSでは難しいこの「共存」が、NASなら簡単です。
私はRoon Serverと同時に、UPnPサーバー「MinimServer」もインストールしています。これにより、LinnやLuminといったRoonとUPnP両対応のプレーヤーで、気分や用途に応じて再生方法を使い分ける、という柔軟な運用が可能になっています。
さらにRoonであれば、自宅のライブラリを丸ごと外出先に持ち出せる「Roon ARC」という強力な機能も使えるようになります。
【家の外でもRoonを】
Roon ARCの設定方法や、「つながらない」時のトラブル解決法については、こちらの記事で詳しく解説しています。

理由2 ー ネットワーク負荷を最小限に抑える、理想的な構成
Roon Serverを動かす機器と、音楽ファイルを保存するストレージが別々の場合、再生のたびにネットワーク上に巨大なデータが流れます。NASをRoon Serverとして使えば、サーバーが音楽ファイルに「ローカル」で直接アクセスするため、ネットワーク帯域を消費しません。
これは、余計なネットワーク帯域幅を節約することができます。地味ながら非常に大きなメリットです。
理由3 ー NVMeキャッシュによる「体感速度の向上」
Synologyの上位モデルは、NVMe SSDをキャッシュとして搭載できます。
DS720+でも2基搭載していますが、これによりRoonのデータベースやアートワークなど、頻繁にアクセスするデータが高速化されます。特にストレージ本体がHDDの場合、このキャッシュの恩恵は絶大で、ライブラリのブラウジング体験が大きく向上します。
私はSSD8TB x2枚で運用していますが、SSDだと、NVMeキャッシュの恩恵はあまりないと考えて良いと思います。
【ブラウジング体験を極める】
このブラウジング体験を完璧なものにするには、自分好みのジャンルやタグの管理が欠かせません。こだわりのライブラリを構築したい方は、こちらの記事が参考になります。

Synologyだけの強み ー ファイルシステム「Btrfs」の絶大な安心感
SynologyのNASを選ぶもう一つの大きな理由が、先進的なファイルシステム「Btrfs(バターエフエス)」です。オーディオファンにとってのメリットは2つです。
- データの自己修復機能
長期間の保存で発生する、気づきにくいデータ破損(ビット腐敗)を自動で検知・修復してくれます。大切な音楽ファイルが、いつの間にか壊れていた、という悲劇を防ぎます。 - スナップショット機能
ライブラリの状態を「写真」のように保存しておけます。万が一、設定ミスやランサムウェアの被害にあっても、健全だった瞬間の状態にシステムを丸ごと復元できます。これは、他のファイルシステムにはない強力なデータ保護機能です。
【2025年版】Roon ServerにおすすめのNAS 比較
Roon Serverを快適に動かすには、一定のCPUパワーとメモリが必要です。ここでは、実績のあるモデルを比較します。
モデル名 | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() |
メーカー | Synology | Synology | Synology | QNAP | ASUSTOR |
CPU | AMD Ryzen R1600 (2コア) | Intel Celeron J4125 (4コア) | AMD Ryzen R1600 (2コア) | Intel Celeron N5095 (4コア) | Intel Celeron N5105 (4コア) |
GPU | なし | Intel UHD 600 | なし | Intel UHD Graphics | Intel UHD Graphics |
メモリ(標準) | 2GB DDR4 ECC | 2GB DDR4 | 4GB DDR4 ECC | 8GB DDR4 | 4GB DDR4 |
ベイ数 | 2 | 2 | 4 | 4 | 4 |
M.2スロット | 2 | 2 | 2 | 2 | 4 |
Amazon | 完了 | Amazon | Amazon | Amazon |
使用中の「DS720+」とその後継機「DS723+」について
私が現在、16TBのストレージで安定して運用しているのは、前世代の「DS720+」(Intel Celeron J4125搭載)です。その後継機が、現行モデルの「DS723+」です。
この2台には、Roon Serverとして使用する上で、単純な性能比較だけでは語れない、興味深い違いが存在します。
まず、純粋なCPU処理能力では、DS723+に搭載されたAMD Ryzen R1600が、DS720+のCeleron J4125を約40%以上、上回ります。 Roonのデータベース検索やアートワーク表示といった、操作の応答性において、この差は確実にプラスに働きます。
感覚的に、アルバム枚数が3000枚を超えてくると、DS720+では動きが鈍くなると感じます。
現状はアルバム枚数7000枚、曲数で10万ほどですが、動きがもっさりと感じることはありますが、特に音が途切れるなどのトラブルはなく普通に運用できています。
しかし、オーディオ的な視点で見ると、話は少し複雑になります。比較表の通り、DS723+のAMD Ryzen CPUは、DS720+のIntel Celeronと違い、内蔵GPU(iGPU)を持っていません。
理由は必ずしも明確ではないものの、「強力なGPUを搭載したPCの方が音が良い」というのが、Roon Serverの定説となっています。これを考慮すると、DS723+は「CPU性能は高いが、GPUを持たない」という、オーディオ的に悩ましい特性を持つモデルと言えます。
これらの点を踏まえると、私のDS720+もまだまだ現役で安定して使えていますが、新規で導入を検討されるのであれば、CPU処理能力の向上による快適さを重視し、後継機であるDS723+をおすすめします。 ただし、GPUが音質に与える影響を考慮し、ご自身のオーディオ哲学と照らし合わせて、最終的な判断をされるのが良いでしょう。

参考 ー 私のDS720+運用構成(パーツと周辺機器)

「具体的にどんなパーツで安定運用しているのか?」という質問もいただきますので、参考までに私の現在の構成をご紹介します。これからDS723+で組む方も、パーツ選びの参考にしていただければ幸いです。
NAS本体 ー Synology DS723+
私が使用しているのはDS720+ですが、今から購入されるなら後継機のこちらがおすすめです。

ストレージ ー SSD 870 QVO 8TB × 2台
当時、SSD 8TBの選択肢はあまりなかったので、これを選んだ理由は特にありません。
SSDの大容量化、低価格化もここ数年頭打ちになっているように感じます。

増設メモリ ー PC4-21300 DDR4-2666 8G
追加メモリは同社の指定されている4GBを使えということになっていますが、無視して8GBを積んでいます。
純正メモリがDDR4-2666だったので同じタイプを選びました。特にこだわりは無いです。

DS723+の場合は、純正の16GBが良いと思います。

NVMeキャッシュ ー NVMe WDS500G3B0C-EC
2枚装着できます。
1枚だと読み込みキャッシュのみ、2枚使うと読み込みのみ、読み込み&書込みキャッシュの設定ができます。
とりあえず500GBx2で読み書きキャッシュの設定としています。
特に何も考えず手頃なものを選びました。
ストレージをSSDにしている場合は恩恵があるのか正直わかりません。

純正品も紹介しておきます。

ノイズ対策
あとはメモリとかノイズ対策にTDKのフレキシールド
PC系のノイズ対策にはよく効きます。導通ありのタイプもあるので注意してください。
参考: ノイズ抑制シート “フレキシールド” IFLシリーズ
振動対策
筐体およびHDDの振動対策として、オトナシート、セルダンパー、レアルシルトを適材適所にて使用。


電源の換装
電源は12Vの4PINタイプです。
私はFSPのスイッチング電源、FSP150-AHAN1を改造して使っています。

まとめ ー 大容量ライブラリを持つあなたのための現実的な選択
Roon Serverの選択肢は多様ですが、もしあなたが「数千枚規模のライブラリを持っている」「データの安全性も重視したい」「オーディオ以外の用途にもNASを活用したい」と考えているなら、Synology NASは検討の余地があります。
レスポンス速度だけを求めるなら専用PCかもしれませんが、柔軟性、拡張性、そして何より大切な音楽データを守る安心感。この総合力において、Synology NASは有力な選択肢の1つです。
あなたのRoon環境構築の参考になれば幸いです。
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