Mp3tagの使い方 徹底解説 | 基本からRoon連携・高度な自動化まで、音楽ライブラリを極める全知識

How to mp3tag
目次

なぜ今、改めてMp3tagなのか?

あなたの音楽ライブラリは、本当にその価値を発揮できていますか?

丹精込めて収集したはずのデジタル音楽が、「Unknown Artist」で埋め尽くされていたり、日本語の曲名が文字化けしていたり、アルバムアートが欠けていたりするだけで、せっかくのコレクションは宝の持ち腐れです。

本稿で紹介する「Mp3tag」は、単なる「タグ編集ソフト」ではありません。それは、デジタル音楽の混沌に秩序をもたらし、あなたの資産の価値を取り戻すための、最も強力で信頼性の高い専門ツールです。

この記事は、Mp3tagに関する現存する情報の中で、最も包括的かつ実践的なガイドとなることを目指しています。

基本的なインストールから、日々の作業を劇的に効率化する自動化テクニックまで、この記事一本で、あなたの音楽ライブラリ管理は新たなステージへと進化します。整理されたライブラリがもたらす、真の音楽体験への扉を一緒に開いていきましょう。

Part 1 Mp3tagの基礎知識 ー 導入から盤石な基本操作まで

Mp3tagの真価を理解するためには、まずその基本思想と操作の「型」を身につけることが不可欠です。このセクションでは、インストールから基本的なタグ編集まで、後々の応用を支える盤石な土台を構築します。

Mp3tagとは?- あなたの音楽ライブラリを統べる「万能タグエディター」

Mp3tagは、音楽ファイルのメタデータ編集に特化した、非常にパワフルかつ多機能なソフトウェアです。その名を冠するMP3はもちろんのこと、FLAC、M4A/MP4(AAC)、WAV、AIFF、DSF、OGGなど、現代のデジタルオーディオで利用されるほぼ全てのファイル形式に対応しています。

その最大の特徴は、音楽再生機能を持たない「タグ編集専門ツール」である点にあります。これにより、余計な機能にリソースを割くことなく、タグ編集という一点において他の追随を許さない高機能と安定性を実現しています。

プラットフォームについては、Windows版は無料で利用できるドネーションウェアとして提供されており、macOS版はMac App Storeにて有料で販売されています。どちらのバージョンも開発者によって継続的にメンテナンスされており、安心して利用できる点も大きな魅力です。

Mp3tagは多くのマルチメディアファイルフォーマットに対応したタグ(メタデータ)編集ソフトウェア。ドイツ人の Florian Heidenreich によって開発されている。日本語を含むマルチ言語に対応しておりWindowsで動作する。

現在、無料で提供・公開されているが、維持管理目的の寄付やウィッシュリストからの音楽CDの提供を歓迎している。ドネーションウェア。

参考: Mp3tag – Wikipedia

CDのリッピングソフトは、dBpowerampが人気です。
細かい設定方法を過去に紹介しています。

あわせて読みたい
dBpowerampの使い方【定番リッピングソフト】完全ガイド 音質重視のリッピング、HDCDの24bit取り込み、ハイレゾ化、2枚組アルバムの一元化などdBpowerampで最初にするべき設定を詳しく紹介。

dBpowerampにもタグ編集機能はありますが、Mp3tagの方が使いやすく多機能です。しかも無料!

インストールと、後悔しないための初期設定

Mp3tagの導入は簡単ですが、最初の設定が後の作業効率とトラブル回避の鍵を握ります。

インストール手順

公式サイトからインストーラーをダウンロードし、指示に従ってインストールを進めます。途中、標準インストール(Standard)かポータブルインストール(Portable)かを選択できます。USBメモリなどで持ち運んで使用したい場合はポータブル版が便利ですが、通常は標準インストールで問題ありません。

公式: Mp3tag - Download

重要・後悔しないための初期設定

インストール後、Mp3tagを起動したら、まず、以下の設定を行ってください。これは、日本語環境における文字化けを防ぎ、多くの再生ソフトで互換性を確保するための重要なステップです。

Mp3tag オプション
  1. メニューバーから「ツール」→「オプション」を選択します。
  2. 左側のツリーから「タグ」→「Mpeg」を選択します。
  3. 右側の「書き込み」セクションにあるラジオボタンで、「ID3v2.3 UTF-16」を選択します。
  4. 「OK」をクリックして設定を保存します。

ID3v2.3は最も広く普及しているタグバージョンであり、UTF-16は日本語のような2バイト文字を正しくエンコードするための世界標準の文字コードです。この組み合わせにすることで、PC、スマートフォン、ネットワークプレーヤーなど、ほとんどの環境で文字化けすることなくタグ情報が表示されるようになります。

また、同画面の「APE」セクションにあるチェックボックスは、通常は全て外しておくことを推奨します。APEタグはMonkey's Audioなどの特定のフォーマットで使われるもので、MP3ファイルなどに書き込むと一部のプレーヤーで不具合を起こす可能性があります。

dBpowerampでは、DSFファイルのID3タグ設定ができず、再生環境によっては文字化けする可能性があります。
その点でも、Mp3tagは優秀です。

DSDIFFのタグ編集はできませんので、DSFに変換する必要があります。
変換ソフトはTEAC Hi-Res Editorがお勧めです。
参考: TEAC Hi-Res Editor

インターフェース完全ガイド ー 画面の見方と基本の「型」

Mp3tagの画面は機能的に整理されており、各部の役割を理解すれば直感的に操作できます。

インターフェース
  • ファイルビュー (File View)
    画面中央の最も広い領域で、読み込んだ音楽ファイルがリスト表示されます。ここでファイルを選択し、編集対象を決定します。
  • タグパネル (Tag Panel)
    画面左側に位置する、主要なタグを編集するためのパネルです。表示されていない場合は、メニューの「表示」から「タグパネル」を選択するか、ショートカットキーCtrl+Qで表示/非表示を切り替えられます。
  • フィルタ (Filter)
    画面下部にある入力ボックスです。特定の条件に合うファイルだけをリストに表示させたい場合に使用します。

タグ編集の三つの基本作法

Mp3tagには、状況に応じて使い分けるべき3つの基本的な編集方法があります。
まず、編集したい音楽ファイルを選択します。
メニューバーから「ファイル」→「ディレクトリの追加」を選択します。

  • 作法1 ファイルビューでの直接編集
    ファイルビューのリスト上で、編集したいセルの部分を直接クリックして文字を入力する方法です。1曲だけ、あるいは特定のフィールドだけを素早く修正したい場合に適しています。この方法では、入力を確定した時点で即座にファイルに保存されます。
  • 作法2: タグパネルでの一括編集
    最も頻繁に使う方法です。アルバム名やアーティスト名、ジャンルなど、複数の曲で共通の情報を一括で編集する際に使用します。
    1. ファイルビューで編集したいファイルをすべて選択します(Ctrl+Aで全選択)。
    2. 左側のタグパネルで、共通の情報を入力します(例: アルバム名に「Greatest Hits」と入力)。
    3. 選択したファイル間で情報が異なるフィールド(例: 曲名)は、「<維持>」と表示され、このまま保存すれば元の値が維持されます。
    4. 重要: タグパネルでの編集内容は、メニューバーのフロッピーディスクアイコンをクリックするか、Ctrl+Sを押さないとファイルに保存されません。この「保存」操作を忘れるのが初心者が最も陥りやすいミスです。
  • 作法3: 拡張タグダイアログ (Alt+T) での高度な編集
    編集したいファイルを選択した状態でAlt+Tキーを押すと、「拡張タグ」ダイアログが開きます。
    ここでは、タグパネルには表示されていないマイナーなタグや、ファイルに存在するすべてのタグ情報を一覧し、追加・編集・削除が可能です。
    後述するRoon連携用のカスタムタグなどを扱う際に使用する、パワーユーザー向けの機能です。

アートワークと歌詞の管理

Mp3tagでアルバムアートを追加・一括設定する方法

音楽体験を豊かにするアートワークの管理も、Mp3tagなら簡単です。

  1. アルバムの曲をすべて選択します。
  2. ジャケット画像ファイル(JPEGやPNG)を、エクスプローラーなどからタグパネル左下の四角いアートワーク欄にドラッグ&ドロップします。
  3. Ctrl+Sで保存します。これで選択したすべての曲に同じアートワークが一括で埋め込まれます。

また、MPD(Music Player Daemon)のようなLinuxベースの再生ソフトや一部のネットワークプレーヤーでは、ファイルに埋め込まれたアートワークを認識しない場合があります。これらの環境では、アルバムのフォルダ内にFolder.jpgという名前の画像ファイルが存在すると、それをアルバムアートとして自動的に認識する仕様になっていることが多くあります。

そのため、互換性を最大限に高めるためには、アートワークをファイルに埋め込むだけでなく、同じ画像ファイルをFolder.jpgとしてアルバムフォルダ内に保存しておくことを習慣にすると、さまざまな再生環境で意図した通りにアートワークが表示されるようになり、より便利です。

歌詞情報の管理と活用法

Roonユーザーの多くは、Roonが自動で高品質な歌詞データを取得・表示してくれるため、手動で歌詞を埋め込む必要性を感じることは少ないでしょう。しかし、Mp3tagを使ってUNSYNCEDLYRICSタグに手動で歌詞を埋め込むことは、特定の状況下で依然として有効な手段です。

手動での歌詞管理が有効なケース

  • Roon以外のプレイヤーでの活用
    foobar2000やMusicBeeといったカスタマイズ性の高いプレイヤーでは、プラグインを導入することで埋め込まれた歌詞を表示できます。これにより、オフライン環境でも歌詞を楽しむことが可能になります。
  • 自動取得が機能しない楽曲の補完
    Roonのデータベースに存在しないマイナーな楽曲や同人音楽など、自動取得が失敗する場合に、自分で探し出した歌詞を埋め込んでおくことで、ライブラリの情報を完璧に保つことができます。
  • 歌詞の正確性の担保
    自動取得された歌詞に誤りがあったり、特定バージョンの歌詞(ライブ版など)を登録したい場合に、自分で編集したテキストを確実に表示させることができます。

歌詞の埋め込み手順

  1. 歌詞を追加したい曲を選択し、Alt+Tで拡張タグダイアログを開きます。
  2. 左上の星印のアイコン(フィールドを追加)をクリックします。
  3. フィールド名に「UNSYNCEDLYRICS」と入力し、値の欄に歌詞のテキストを貼り付け、「OK」をクリックします。
  4. 最後にメインウィンドウでCtrl+Sを押して保存します。

Part 2 タグ情報とアルバムアートの自動取得

手作業でのタグ入力は時間がかかり、入力ミスの原因にもなります。Mp3tagの真骨頂は、オンラインデータベースと連携し、アルバムアートを含む膨大なタグ情報を自動で取得する機能にあります。

Mp3tagとDiscogsを連携させる方法

Mp3tagは、世界中の音楽ファンが構築した巨大なデータベースにアクセスし、正確なタグ情報を自動で取得できます。

Discogs連携でタグを自動取得 (mp3tag discogs)

Discogsは世界最大の音楽データベース兼マーケットプレイスであり、特にリリースごとの詳細な情報(レコード番号、バーコード、国別の盤など)が充実しています。

STEP
事前にDiscogsのウェブサイトで無料アカウントを作成する

アカウントは無料で作成できます。

Discogsにアクセス
https://www.discogs.com/ja/
STEP
ブラウザでDiscogsを開き、目的のアルバムを探す
STEP
そのページの右側にある「Release ID」または「r」から始まる番号をコピーする
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STEP
Mp3tagに戻り、タグを取得したいファイルを選択し、メニューの「タグを取得」→「Discogs Release ID」を選択
STEP
表示されたウィンドウにコピーしたIDを貼り付けて「次へ」をクリック
初回のみDiscogsアカウントとの連携許可が求められます
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STEP
取得した情報がプレビュー表示されるので、内容を確認して「OK」をクリックすればタグが適用されます
タグを適用

【応用編】クラシック音楽に最適!MusicBrainzの参照とタグ付け

Discogs連携は非常に強力ですが、ことクラシック音楽の整理においては、もう一つのデータベース「MusicBrainz」を参照することで、ライブラリをさらに完璧な状態に近づけることができます。

ここでは、なぜクラシックにMusicBrainzが有効なのか、そしてその情報を活用する最も確実なワークフローを解説します。

なぜクラシック音楽にはMusicBrainzが有効なのか?

クラシック音楽には、交響曲や協奏曲における「作品 (Work)」と「楽章 (Part)」のような、他のジャンルにはない複雑な階層構造が存在します。この構造をプレーヤーに正しく認識させる鍵となるのが、WORKタグとPARTタグです。

WORKタグは、複数の楽章を「これは同じ一つの作品ですよ」と紐付ける役割を持ちます。

これにより、アルバム内の特定作品だけを一括で選択できるだけでなく、Roonのような高機能プレーヤーでは、クライバー盤とカラヤン盤の「運命」を瞬時に聴き比べる、といったライブラリ全体での異演グルーピングも可能になります。

しかし、Discogsのデータはリリース(アルバム商品)ごとに最適化されているため、同じ作品でもアルバムによって表記が異なる「表記揺れ」が発生しがちです。Roonでは、この表記揺れもある程度吸収して、同じタイトルと認識はしてくれますが、完璧とはいえません。

一方、MusicBrainzは「音楽の百科事典」として、世界中の音楽を体系的に整理し、それぞれに基準となる名前(Canonical Name)を定めることを目的としています。このデータベースを参照することで、表記揺れのない、正確で構造化されたタグ情報を取得できます。

このWORK/PARTタグについては、こちらで深堀りしてます。

あわせて読みたい
Roonライブラリの決定版 ー WORK/PARTタグでクラシックを整理する Roonのジャンル表示が思い通りにならない?この記事では、Roonの初期設定から、Mp3tagで管理すべきタグ一覧、そしてDiscogs連携による自動取得と手動入力の使い分けまで、あなたのライブラリを理想通りに管理・表示させる具体的な方法を徹底ガイドします。

【重要】Mp3tagの自動連携ではなく「手動参照」を推奨する理由

Mp3tagには、メニューの「タグソース」から直接MusicBrainzの情報を取得する機能が備わっています。しかし、これを試したことがある方は、こう感じたかもしれません。

「アルバム情報は出てくるのに、肝心のWORKPARTタグが空欄のまま、ということが多い」と。

多くの場合、Mp3tagの自動連携機能では、私たちの目的であるWORK/PARTタグを正確に取得できません。

これは、Mp3tagの連携スクリプトが参照する「リリース」情報に、WORK情報が紐付けられていないケースが多いためです。

そのため、この記事では、不確実な自動連携に頼るのではなく、以下の最も確実なワークフローを推奨します。

それは、MusicBrainzのサイトを「正解を知るための辞書」としてWebブラウザで開き、そこから正しい情報をコピーして、Mp3tagで手動で貼り付ける、という考え方です。

【前準備】タグパネルに「WORK」と「PART」を追加する

今後の作業を効率化するため、まずMp3tagにWORKPARTの入力欄を用意しましょう。

WORKを追加
  1. Mp3tagのメイン画面左側にある「タグパネル」の上で右クリックし、「カスタマイズ」を選択します。
  2. 「タグパネル」の設定ウィンドウが開いたら、右側の「新規」ボタンをクリックします。
  3. 「フィールドの追加」ダイアログが表示されたら、「フィールド」にWORK、「名前」にWorkと入力します。「Type」は「テキスト」のままで問題ありません。
  4. 「OK」を押すと、リストに「Work」が追加されます。同様の手順で「PART」も追加しておきましょう。

【実践】「手動参照」によるハイブリッド・ワークフロー

ここでは、Discogsの「手軽さ」とMusicBrainzの「正確さ」を両立させる、具体的な手順を解説します。題材は「ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調」(ミケランジェリ盤)です。

  1. Discogsで基本情報を取得
    まず、これまで通り「タグソース > Discogs」を使い、ARTISTALBUMYEARといった基本的なタグを素早く取得します。
  2. MusicBrainzで「正解のWork」を検索・コピー
    次に、WebブラウザでMusicBrainzのサイトを開き、「Ravel Piano Concerto G major」で検索します。検索結果の中から、種別が「Work」となっている項目を探し、そのページに記載されている正式名称 Piano Concerto in G major をコピーします。
  3. Mp3tagでWORKタグを統一
    Mp3tagに戻り、協奏曲の全楽章トラックを選択し、タグパネルのWORKフィールドに、コピーした正式名称を手動でペーストします。これが、異演グルーピングの要となります。

【効率化の小技】多数のPARTタグを一括入力する

WORKタグは一括入力できても、ゴルトベルク変奏曲のように32曲もあるPARTタグを一つずつ入力するのは大変です。ここでは、その作業を高速化するテクニックを解説します。

  1. まず、必要な情報はDiscogsから取得しておきます。
  2. 次に、MusicBrainzの公式サイトへアクセセスします。
  1. ソートをWorkにして、任意の作品を検索します。
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WORKで検索しても、楽章(PART)が表示されることも多いですが、その楽章(PART)をクリックしても全体のをWORKに辿り着けます。

  1. Partsの項目をコピーしてメモ帳に貼り付けます。
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名前は任意で構いません。

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全曲コピーしました。
  1. 全32曲が正しい順番で並んでいるかを確認し、すべてのトラックを選択します。
    変換」→「テキストファイル - タグ」を選択します。 ダイアログが開いたら、ファイル名に先ほど作成したparts.txtを指定し、フォーマット文字列に %part% と入力して「OK」をクリックします。
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全曲を選択し、「変換」→「テキストファイル - タグ」を選択
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これで一括入力ができます。

Work/Partタグなしの時

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Work/Partタグなし
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Work/Partタグが無い場合は、トラックタグが表示される

Partタグありの時

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Work/Partタグあり
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Work/Partタグが反映されています!

Apple Musicからタグ情報を取得する

Apple Musicの膨大なライブラリ情報をMp3tagで活用するための設定は、多くのユーザーにとって非常に価値が高い機能です。これは標準機能ではなく、有志が作成したスクリプトを導入することで実現します。
参考: [WS] Apple Music

STEP
連携スクリプトのインストール

まず、下記ファイルをダウンロードします。
ダウンロード: Apple Music for MP3Tag v3.0a.zip

STEP
ダウンロードした.zipファイルを解凍します。中には「.src」という拡張子のファイルが含まれています
解凍したファイル

Apple Music Web.incと&Apple Music#&Japan Japanese.srcをコピーします。
日本語のデータベース以外を利用することも可能です。

STEP
Mp3tagに先ほどのファイルを貼り付ける

ファイル名を指定して実行に以下入力
%appdata%\Mp3tag\data\sources

Mp3tagの「sources」フォルダ内に先程のファイルを貼り付ける。

STEP
Mp3tagを再起動する

これで事前準備は完了です。

Apple Musicでタグ取得のワークフロー

STEP
Mp3tagでタグを取得したいファイルを選択
STEP
メニューの「タグを取得」を開くと、リストに「Apple Music」という項目が追加されています。これを選択
STEP
検索ウィンドウが表示されるので、アルバム名やアーティスト名で検索します
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任意の名前で検索する
STEP
DiscogsやMusicBrainzと同様に、検索結果から正しいアルバムを選択し、プレビューを確認して「OK」でタグを適用
apple musicからタグを取得

【重要】ファイル形式の選択とタグ問題 ー iTunes/Apple Music vs Roon

音楽ライブラリを構築する上で、ファイル形式の選択は将来の拡張性や互換性を左右する重要な決断です。

特に、iTunes/Apple MusicRoonでは、WAVファイルのタグ情報の扱いに決定的な違いがあり、ユーザーの環境によって最適な選択肢は異なります。

iTunes / Apple Music ユーザー向けの推奨事項

結論 ー リッピング時にはWAVを避け、AIFFまたはApple Lossless (ALAC)を選択してください。

  • なぜiTunes/Apple MusicでWAVのタグは無視されるのか?
    根本的な原因は、WAVファイル形式には、タグ情報を格納するための統一された標準規格が存在しない点にあります。Mp3tagはWAVファイルにID3タグを書き込むことができますが、これは非公式な拡張機能のようなもので、Apple MusicやiTunesはこの非標準のタグを基本的に読み取りません
    Appleのソフトウェアは、WAVのタグ情報をファイル自体から読み取るのではなく、独自のライブラリデータベース内に別途情報を保存します。そのため、Mp3tagでいくらファイル自体を編集しても、Apple Musicはその変更を認識しないのです。
  • 最初から互換性の高いフォーマットでリッピングする
    この問題を根本的に回避し、将来にわたって安定したライブラリを維持するため、CDリッピングの段階で以下のいずれかのフォーマットを選択することを強く推奨します。
    • 推奨フォーマット1
      AIFF (Audio Interchange File Format) Appleが開発した、WAVと同等の非圧縮・可逆フォーマットです。音質の劣化は一切なく、標準で完全なタグサポートを備えています。iTunes/Apple Musicとの互換性は完璧であり、音質を最優先しつつ、確実なタグ管理を行いたいユーザーにとってのベストな選択肢です。
    • 推奨フォーマット2
      Apple Lossless (ALAC) Appleが開発した可逆圧縮フォーマットです。WAVやAIFFと同等の音質を保ちながら、ファイルサイズを約40〜60%削減できます。もちろん、タグサポートも万全です。ストレージ容量を節約しつつ、高音質とタグの利便性を両立させたい場合に最適です。
    • FLACはどうか?
      FLACも優れた可逆圧縮フォーマットですが、iTunes/Apple Musicはネイティブでライブラリへの取り込みをサポートしていません。macOS自体はFLACの再生に対応していますが、ライブラリ管理の一元性を考えると、Appleのエコシステム内ではAIFFかALACを選択するのが最もスムーズです。
  • すでにWAVでリッピングしてしまった場合の対処法
    foobar2000(Windows)やXLD(Mac)などの高機能な変換ツールを使い、タグ情報を維持したままAIFFまたはALACに変換し、その後iTunes/Apple Musicにインポートし直すのが確実な方法です。

Roon ユーザー向けの推奨事項

結論 ー 音質を最優先するならWAVも有力な選択肢です。

  • RoonにおけるWAVの優位性
    Roonは、iTunes/Apple Musicとは異なり、WAVファイルにMp3tagで書き込まれたID3タグを問題なく認識し、読み込むことができます。これにより、Roonユーザーはファイル形式の選択においてより高い自由度を持ちます。 音質面で理論上最もピュアな状態を保ちたいと考える場合、非圧縮であるWAV形式を積極的に選択することが可能です。Roon環境下では、WAVの「タグが扱いにくい」という一般的なデメリットは解消されるため、「音質」というメリットを純粋に享受できます。
  • 注意点
    RoonでWAVを使用する場合でも、Mp3tagでのタグ付け作業は不可欠です。特に、文字化けを防ぎ、安定した運用を行うために、タグの書き込み形式を「ID3v2.3 UTF-16」に設定することは必ず守ってください。

クロスプラットフォームユーザー向けの推奨事項

結論 ー FLACが最もバランスの取れた選択肢です。

Roon、foobar2000、その他多くのサードパーティ製高音質プレイヤーを併用するなど、特定のプラットフォームに縛られずにライブラリを運用したい場合、FLAC (Free Lossless Audio Codec)が最も優れた選択肢となります。

  • オープンスタンダード
    特定の企業に依存しないオープンな規格です。
  • 優れた互換性
    Roonを含む、非常に多くのソフトウェアやハードウェアでネイティブサポートされています。
  • 可逆圧縮
    音質を損なうことなくファイルサイズを削減できます。
  • 堅牢なタグサポート
    タグ付けに関しても業界標準として確立されており、トラブルが少ないです。

まとめ ー あなたの環境に最適なフォーマットは?

  • Apple製品中心のユーザーAIFF (音質最優先) or ALAC (容量効率優先)
  • Roon中心のユーザーWAV (音質最優先) or FLAC (汎用性・効率優先)
  • 様々な環境で使いたいユーザーFLAC (最もバランスが良い)

Part 3 「アクション」機能で作業を究める

Mp3tagを単なる手動エディタから、強力な自動化ツールへと昇華させるのが「アクション」機能です。一度設定すれば、複雑な定型作業をワンクリックで完了できるようになり、作業時間を劇的に短縮できます。

Mp3tag「アクション」入門 ー 定型作業からの解放

「アクション」とは、一連のタグ編集操作を記録し、再利用可能にする機能です。

例えば、「全角英数字を半角に変換し、曲名の先頭を大文字にする」といった複数のステップを1つの「アクション・グループ」として保存できます。これにより、ライブラリ全体で一貫したルールを適用することが容易になります。アクションは、メニューの「アクション」→「アクション」から作成・管理できます。

実践的アクション・クックブック

ここでは、すぐに使えて効果の高い、実践的なアクションをいくつか紹介します。これらは多くのユーザーが共通して抱える課題を解決するものです。

応用例1 文字種・大文字/小文字の整形 (Case Conversion)

ファイル名やタグの見た目を美しく統一するためのアクションです。
「アクション」ウィンドウで新規アクションを作成し、アクションの種類として「文字種変換」を選択します。フィールドにTITLE_FILENAMEなどを指定し、変換の種類を以下から選びます。

  • Sentence case: 文の先頭のみ大文字
  • lower case: すべて小文字
  • UPPER CASE: すべて大文字
  • Mixed Case: 各単語の先頭を大文字

応用例2 不要なタグフィールドの一括削除

ダウンロードした音源などには、COMMENTENCODEDBYといった不要な情報が含まれていることがあります。これらを一括でクリーンアップします。

  • アクションの種類: フィールドを削除
  • 削除するフィールド(セミコロン区切り): COMMENT;ENCODEDBY;WWW; このアクションを実行すれば、指定したフィールドがすべての選択ファイルから一括で削除され、ライブラリが整理されます。

応用例3【実践編】特定の文字列を一括で削除する

交響曲のアルバムなどで、2曲目以降のトラック名から共通の作品名部分だけを削除したい、というケースは頻繁に発生します。

このような場合、削除したい文字列はアルバムごとに異なるため、その都度スクリプトを書き換えるのは非効率です。そこで、ファイルを手動で選択し、シンプルな「置換」アクションを使う方法が、最も柔軟かつ迅速な解決策です。

シナリオ
以下のようなトラックリストがあるとします。

  1. Symphony No. 1 - I. Adagio Molto
  2. Symphony No. 1 - II. Andante cantabile
  3. Symphony No. 1 - III. Menuetto: Allegro molto e vivace

これを、以下のように整形します。

  1. Symphony No. 1 - I. Adagio Molto (変更なし)
  2. II. Andante cantabile
  3. III. Menuetto: Allegro molto e vivace

最も効率的な手順

  1. ファイルの手動選択
    ファイルビュー(ファイル一覧画面)で、2曲目をクリックし、Shiftキーを押しながら最終曲をクリックします。 これで、2曲目から最後までのすべてのファイルが選択状態になります。
  2. シンプルな「置換」アクションの実行:
    • メニューバーの「アクション」から、再度「アクション」を選択します。
    • 新しいアクション・グループを作成し(例:「任意文字列削除」)、新規アクションを作成します。
    • アクションの種類として「置換 (Replace)」を選択します。
    • 以下の通り設定します。
      • フィールド: TITLE
      • 元の文字列: Symphony No. 1 - (今回削除したい文字列を正確に入力します)
      • 以下の文字列に置換する: (この欄は空欄のままにします)
    • 「OK」を押してアクションを保存し、実行します。

この方法であれば、アルバムが変わっても、手順1で対象ファイルを選び、手順2でその都度「元の文字列」に任意のテキストを入力して実行するだけで、あらゆるケースに柔軟に対応できます。

自動ナンバリングウィザードでトラック番号を連番にする (mp3tag トラック番号 連番)

複数枚組のCDを扱ったり、逆に1枚のCDに複数のアルバムが収録されている場合に絶大な効果を発揮するのが「自動ナンバリングウィザード」です。

複数枚組アルバムのトラック番号を連番にする

2枚組のCDをリッピングすると、それぞれがディスク1(トラック1〜10)、ディスク2(トラック1〜10)のように分かれてしまいます。これを1つのアルバムとして通し番号(連番)にしたい場合に利用します。

  1. 統合したい全トラックを、正しい曲順でリストに表示させます。
  2. 全トラックを選択します (Ctrl+A)。
  3. メニューの「ツール」→「自動ナンバリングウィザード」を選択(またはCtrl+K)。
  4. 「トラックナンバーを0で始める」のチェックを外し、「OK」をクリックします。
  5. これにより、トラック番号が選択順に1から振り直されます。必要であれば、タグパネルでアルバム名を統一し、ディスク番号のタグを削除してCtrl+Sで保存します。

アルバムの分割

「2 in 1」のように、1枚のCDに2つのアルバムが収録されている場合に、それぞれを独立したアルバムとして分割します。

最後に、それぞれのトラック群を選択し、タグパネルで正しいアルバム名を入力して保存します。て便利です。
ファイル名の変換は、リアルタイムで書き換えされます。保存する必要はありません。

まず、1つ目のアルバムに該当するトラックを選択し、自動ナンバリングウィザードでトラック番号を1から振り直します。

次に、2つ目のアルバムに該当するトラックを選択し、同様にトラック番号を1から振り直します。

Part 4【応用】高度な音楽ライブラリソフトとの連携

Mp3tagの真価は、そのままでも十分に発揮されますが、Roonのような高度な音楽ライブラリソフトと組み合わせることで、その価値は最大化されます。

Roonは、ファイルに埋め込まれた正確なメタデータを元に、アーティストの経歴やアルバムレビュー、クレジット情報などを自動で表示し、豊かな音楽体験を提供します。そのため、Mp3tagでタグを完璧に整備しておくことが、Roonを100%活用するための最も重要な第一歩となります。

例えば、Mp3tagを使えば、

  • クラシック音楽の「作品」と「楽章」をRoonが認識できるように整理する
  • デュオや複数のアーティストが参加したアルバムで、各アーティストを個別に認識させる
  • CDのバージョン違い(日本盤、US盤、リマスター盤など)をRoon上で明確に区別する

といった、高度なライブラリ管理が可能です。

これらの、Roonを最大限に活用するための具体的なタグ知識や設定方法については、別記事で詳しく解説しています。 Mp3tagでタグ編集の基礎をマスターしたら、ぜひ次のステップとしてご覧ください。

あわせて読みたい
Roonのジャンル・タグ表示を極める|Mp3tagとDiscogs連携で実現するライブラリ管理術 Roonのジャンル表示が思い通りにならない?この記事では、Roonの初期設定から、Mp3tagで管理すべきタグ一覧、そしてDiscogs連携による自動取得と手動入力の使い分けまで、あなたのライブラリを理想通りに管理・表示させる具体的な方法を徹底ガイドします。

Mp3tagで取得できないクラシック音楽のタグ付け ー 専門データベースの活用

Apple MusicとDiscogsのデーターベースで世の中の95%くらいの音源は網羅できると思いますが、クラシックの国内版で、曲名を英語表記に変更したいなど、特にクラシックでこだわりを持つ方は、ある程度手打ちを覚悟しなければなりません。

クラシックのデータベースとして便利なサイトを2つ紹介します。

IMSLP

国際楽譜ライブラリープロジェクト、IMSLP(International Music Score Library Project)は、無料で使用できる楽譜などのバーチャルな図書館を作成しようとする、インターネット上のプロジェクト。

曲名を手打ち入力するときはこのサイトを参考にしています。
参考: IMSLP

NAXOS Music Library

ナクソス・ミュージック・ライブラリー (NML) は、クラシックに特化した定額制のインターネット音楽配信サービス。
月額1,850円(+税)で全曲が聴き放題、各トラックの冒頭30秒は試聴可能です。楽曲データに加えて、アートワークも充実しています。AmazonやDiscogsに無くてもNAXOSにある場合も。
参考: NAXOS Music Library

Part 5 Mp3tag よくある質問と解決策

Mp3tagを使用する上でよくある質問とその解決策をまとめました。

タグを編集すると文字化けする

最も一般的な原因は文字コードの設定です。メニューの「ツール」→「オプション」→「タグ」→「Mpeg」を開き、「書き込み」の項目が「ID3v2.3 UTF-16」に設定されているかを確認してください。これが日本語環境における事実上の標準設定であり、ほとんどの文字化け問題はこれで解決します。

Mp3tagで編集したのに、iTunes/Apple Musicでタグが反映されません。

主に2つの原因が考えられます。

  1. ファイル形式の問題
    編集対象のファイルがWAV形式の場合、Appleのソフトウェアは埋め込まれたタグを正しく読み込みません。ALACやAIFF形式に変換することが根本的な解決策です。
  2. データベースの同期問題
    Apple Music/iTunesの内部データベースが古い情報のままになっている可能性があります。ライブラリから該当トラックを一度削除し(ファイルは削除しない)、再度ライブラリにインポートし直すことで、強制的に最新のタグ情報が読み込まれます。

Mac版とWindows版の違いは何ですか?

中核となるタグ編集機能やアクションの概念は両プラットフォームでほぼ同じです。主な違いは以下の通りです。

  • 価格
    Windows版は無料(ドネーションウェア)、Mac版はMac App Storeで販売されている有料ソフトウェアです。
  • UI
    それぞれのOSのネイティブなデザインガイドラインに沿ったインターフェースになっています。

クラシック音楽の作曲家や演奏家はどのタグに入れれば良いですか?

Roonなどのモダンな再生環境で最適に表示させるためのベストプラクティスは以下の通りです。これらのタグは拡張タグダイアログ(Alt+T)から追加できます。

  • COMPOSER: 作曲家(例: Ludwig van Beethoven
  • ARTIST: 主たる演奏者(例: Berliner Philharmoniker)。複数の演奏者がいる場合は、A; B のようにセミコロンで区切ります。
  • ALBUM ARTIST: アルバム全体を代表するアーティスト。コンピレーションでなければARTISTと同じで良い場合が多いですが、協奏曲ならソリスト、オペラなら指揮者を指定するなど、柔軟に運用します。
  • CONDUCTOR: 指揮者
  • ENSEMBLE: オーケストラや楽団名
  • SOLOIST: ソリスト(独奏者)

Mp3tagでライブラリを整理し、新たな音楽体験を

本稿では、Mp3tagという一つのツールを軸に、基本的なタグ編集から、オンラインデータベースとの連携による自動化、そして高度なライブラリソフトとの連携の考え方まで、デジタル音楽ライブラリを極めるための道のりを包括的に解説しました。

文字化けの修正やファイル名の統一といった地道な作業から、複数ファイルにまたがる複雑な一括処理まで、Mp3tagが提供する機能の深さと広さを理解いただけたことでしょう。

タグを編集する行為は、単なる作業ではありません。それは、あなたの音楽コレクションという名の資産価値を高め、未来の自分への最高のプレゼントを準備する、創造的なプロセスです。

ぜひ、この記事で得た知識を元に、あなた自身のライブラリ管理術を構築してみてください。混沌に秩序をもたらすことで、あなたの音楽ライブラリは真の価値を放ち始めるはずです。完璧に整理されたライブラリで、新たな音楽体験をお楽しみください。

Mp3tagの可能性は無限大です。もし、あなたが実践している、さらに便利な使い方やユニークな活用法があれば、ぜひコメント欄で教えていただけると嬉しいです。

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コメント

コメント一覧 (3件)

  • コメントありがとうございます。

    以前からApple Musicでタグ情報取得されていましたか?
    一回Apple側の仕様変更でタグが取得できない期間がありましたが、有志の方が新しいスクリプトを開発し、現在は普通に使えるようになっています。
    他の紹介サイトだと旧スクリプトの情報で止まっている可能性があります。

    その際の経緯は記事上では省略していますが、リンクに載せているApple Music for MP3Tag v3.0a.zipが、対応済みのスクリプトなので、これをダウンロードすれば普通に使えると思います。

    ある時期から取得できなくなっている場合は、旧いスクリプトですので、リンク先のV3.0a.zipに上書きしてください。

    私の環境では問題なく使用できています。

  • こんにちわ、はじめまして。
    MP3Tagは普段から使っていますが、CDデータベースの登録がうまくできず、毎回手入力をしていたので、このサイトにたどりつき、分からないながらも、張り切って設定している所です。
    しかし、アップデート事が気になりました。
    今回取得したZipファイル( ❝ダウンロード: Apple Music for MP3Tag v3.0a.zip❞ )のアップデートに備え、 ❝AppleMusic❞ 内を探してみましたが、ファイルの入手先が見つけられませんでした。
    もし可能でしたら、検索の際のカテゴリやキーワード等をお教えいただけると、とても助かります。
    それとも、更新作業等は必要ないのでしょうか?
    無知で申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。

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