
オーディオシステムの調整や追い込みに特化した、テスト・セットアップ用CDを10枚紹介します。音楽を楽しむための作品ではなく、システムの実力を測り、問題点を発見するための実用盤です。
メーカーのデモ音源とは異なり、テスト信号・測定トラック・ブラインド比較など、システムを診断するための内容が中心です。入手困難なものも含みます。
オーディオシステムをチェックする専用CD10枚
Nordost - System Solution Set-Up & Tuning Guide

ハイエンドケーブルメーカーNordostによる2枚組のセットアップ&チューニングディスクです。
ディスク1は、チャンネルチェック・位相テスト・ホワイト/ピンクノイズによる左右バランス比較といった基本診断から、LEDRテスト、システムデガウス(消磁)、そしてリスニングノート付きの音楽トラックまでを収録しています。楽器別のサウンドチェック(キックドラム、スネア、ハイハット、ティンパニ、ベースギター、ピアノ)も含まれており、低域の部屋との相互作用や中域の明瞭さを個別に確認できます。
LEDRテストは、コンピュータ生成トーンが「上」「越え」「横」の3パターンで移動するもので、スピーカーのトウインと部屋の音響処理がステレオ音場にどう影響するかを客観的に評価できます。
ナレーションの位相チェックも有用です。正相のナレーションはスピーカー間の中央に固く定位し、逆相では拡散して広がります。例えば逆相の声がセンターより左に寄る場合、右スピーカーをわずかに内側に向ける、といった調整の指標になります。
ディスク2は低周波に特化しています。タイムド低周波スイープでは再生時間と周波数が1対1で対応しており(例:00:45=45Hz)、部屋の共振周波数をプレーヤーの時間表示だけで特定できます。さらに18Hzから120Hzまで1Hz刻みの個別トーンが収録されており、問題の周波数をリピート再生しながらスピーカー位置やサブウーファーの調整を追い込めます。
今回紹介したディスクで1枚だけ買うならまずはこれを推奨します。
IsoTek - Ultimate System Set-Up Disc

電源クリーニング機器で知られるIsoTekによるセットアップ用ディスクです。チャンネル確認・位相テスト・スピーカー位置調整・周波数レンジテストといった基本項目を、ナレーション付きで順番に進められる構成になっています。
ユニークなのは、カスタネットのクリック音を使ったテストが充実している点です。360度スイープでは音が部屋を周回するように聴こえるか、ステレオイメージテストではスピーカーの後方に音像が投影されるかをチェックできます。背後に音が回り込まない場合はリスニングポジションを壁から離す、といった具体的な調整指針もナレーションで示されます。
周波数テストは上昇スイープと下降スイープの2トラック構成で、片方向だけでは気づきにくいピークやディップを把握しやすくなっています。
Richard Black - Ultimate Stereo Hearing & Equipment Refresher

オーディオ評論家でありピアニスト兼録音エンジニアでもあるリチャード・ブラックがプロデュースした1枚です。
最大の特徴は、聴覚学者トマティスの研究に着想を得た「聴覚改善トラック」です。モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第4番などの音楽から低周波を段階的に除去して再生し、高周波の細部を聴き取る能力を鍛えます。通常の音源に戻した後もディテールの聴取が向上する仕組みで、他のテストCDにはないアプローチです。
ステレオイメージングのチェックには、ブルムライン方式を正確にエミュレートした電子生成のカスタネットトラックを採用。録音会場や機材の癖を排除し、再生側の問題だけを評価できます。
スピーカーのサスペンション硬化を緩和する「シェイクダウン」トラックも収録されています。
Stereophile - Test CD 2

米国のオーディオ誌Stereophileが制作した、収録時間74分超のテスト用CD第2弾です。編集長のJohn Atkinsonをはじめとするスタッフが録音・プロデュースしています。
テスト信号と音楽トラックの両方が充実している点が特徴です。テスト信号としては、ピンクノイズ、低域・中域・高域の1/3オクターブワーブルトーン、MATT(音楽アーティキュレーションテストトーン)を収録しており、測定器がなくても耳だけでスピーカーと部屋の相互作用を診断できます。さらに、第2・第3・第7倍音歪みを純音と比較するA/Bデモトラックや、ジッターの影響を聴感で確認できるトラックも含まれており、歪みの次数による可聴性の違いを体感できます。
音楽トラックは、マイクの配置と録音手法にこだわったアコースティック楽器やコーラスの録音が豊富です。ブルムライン方式によるドラムソロやギターソロ、エリー大聖堂でのエルガー「ジェロンティウスの夢」、教会でのピアノ録音など、いずれも空間再現力の評価に適した内容になっています。
Giulio Cesare Ricci - CD Test - Manuale Sonoro - Super Audio CD

Giulio Cesare Ricci自身のナレーション(イタリア語)で進行するユニークな調整用SACDです。
チャンネル確認と位相テストに続き、低域の重厚さ、中域の明瞭さ、高域の透明感、過渡特性の鮮明さを、それぞれ2つの音楽トラックで個別にチェックする構成になっています。テスト信号ではなく実際の音楽で帯域ごとの再現力を確認できる点が他のディスクとの違いです。
イ・ムジチのメンバーが自らの立ち位置と楽器を紹介しながら演奏するトラックは、スピーカー間の定位確認に最適です。ダイナミックコントラストのテストでは、-20dBから0dBまで4段階の音圧で録音された音源を使い、最大レベルでもロッシーニのオーケストラが歪みなく再生できるかを確認します。
Mordaunt-Short - Performance Stereosound and Image Perfection

バランスエンジニアのFritz de Withが設計した、ステレオの音像と空間再現をテストするためのCDです。
基本的なチャンネル確認・位相テストに加え、銃声を使った残響の広がりテスト、修道女のコーラスによるアンティフォン(左右の掛け合い)での分離と調和のチェック、パンフルートによる過渡特性テストなど、実際の音楽や環境音を使った実践的な内容が揃っています。スピーカー間の高さ方向の定位(パーカッションが2本のスピーカーの真上に聞こえるか)を確認するトラックも含まれています。
ユニークなのは、4種類のオーディオケーブル(Crystal Cable、Kharma、Siltech、Van den Hul)で同一音源を再生したブラインドテスト用トラックが収録されている点です。また、クローズマイクのみの乾いた音から環境マイクを加えた音へ途中で切り替わるトラックでは、空間情報の有無による変化を直接比較できます。
Stockfisch Records - Trust Your Ears

高音質レーベルStockfischによる、ハイレゾフォーマットの音質を聴き比べるための音源集です(USBフラッシュドライブで提供)。
16インチ・シリンダーオルゴールとアナログオープンリールテープという2つの同一音源を、16bit/44.1kHz(CD音質)、24bit/96kHz、24bit/192kHz、DSD64、DSD128の5種類のフォーマットで収録しています。同じソースを同じ機材で5回再生・変換しているため、フォーマットの違いだけを純粋に比較できます。
オルゴールは近距離で約50kHzまでの信号を発生するため、通常のスタジオマイクではなく50kHz以上を収録可能なDPA 4041-Sが使われています。A/D変換にはMerging Technologies HAPIを採用し、各フォーマットのMusicScopeによる分析データも付属しています。
日本オーディオ協会 - オーディオチェックCD-1

日本オーディオ協会(JAS)が発行する本格的な測定用テストCDです。全91種類の信号を収録しており、今回紹介する10枚の中で最も測定寄りの内容です。
1kHz正弦波基準信号、20Hzから20kHzまでの31ポイントのスポット正弦波、周波数スイープ(速度2種類)、ホワイト/ピンクノイズ、1/3オクターブバンドノイズ(20Hz〜16kHz、30バンド)、混変調歪み測定用の複合波信号、トーンバースト、インパルス信号などを網羅しています。競技用ピストルの実音も収録されており、過渡応答の聴感チェックにも使えます。
耳でのチェックから計測器を使った機器測定まで対応する、エンジニア向けの実用盤です。
XLO - Reference Recordings Test & Burn-In

ケーブルメーカーXLOとReference Recordingsの共同制作によるHDCD仕様のテストディスクです。XLOのRoger SkoffとHDCD共同開発者のKeith O. Johnson教授が参加しています。
チャンネル確認、位相テスト、スピーカー配置、消磁スイープ、バーンイントーンといった基本的なシステムチェックに加え、後半にはReference Recordingsの優秀録音トラックが収録されており、調整後のシステムでダイナミクスや空間再現を確認できます。
注目すべきは、同じ音楽トラックをモノラル正相(In-Phase)とモノラル逆相(Out-Of-Phase)の2バージョンで収録している点です。正相では音像がスピーカー間の中央にしっかり定位し、逆相では拡散して定位が曖昧になります。この2トラックを比較することで、スピーカーケーブルの接続ミスだけでなく、システム全体の絶対位相(アブソリュート・フェーズ)が正しいかどうかを簡単に判定できます。
さらにステレオの逆絶対位相トラックも含まれており、位相に関する診断が3段階で行える構成です。
DENON - オーディオ・チェックSACD

コロムビア(DENONレーベル)からリリースされた、民生用としては世界初のSACD規格オーディオチェックディスクです(SACD/CDハイブリッド盤)。
2chステレオと5.1chサラウンドの両方に対応したチャンネルチェックや位相チェックを収録しています。サラウンド面では、隣接する2本のスピーカーの組み合わせで位相を確認するトラックや、サブウーファーの位相チェック用2.1chトラックなど、マルチチャンネル環境のセットアップに特化した内容が充実しています。
SACD層には30kHzまでの信号や超高域対応のスイープが収録されており、SACDの帯域再生能力を確認できます。DSD録音によるハイハット音源でSACDとCDの音質差を直接比較するトラックも含まれています。デモ音源はオーケストラ・ピアノ・ギター・ジャズなど多彩で、ステレオ・サラウンド両方の収録があります。
Roon
SACD
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