
英国のクラシック専門レーベル、Hyperion Records(ハイペリオン)。埋もれた名作の発掘と質の高い録音で、クラシック・ファンから厚い支持を集めてきたレーベルです。
全体のカタログ数に対してSACDは多くありません。SACDに絞るとアーティストに偏りが出てしまいますがご了承ください。
2023年にユニバーサル・ミュージック・グループに買収され、同年にストリーミングが解禁。多くの作品が手軽に聴けるようになりました。
Hyperion Records(ハイペリオン)とは
1980年、テッド・ペリーによってロンドンで設立されました。社名はギリシア神話のティーターン族の一人、ヒュペリーオーンに由来しています。
ペリーはドイツ・グラモフォンのロンドン・オフィスやSagaレーベルを経て独立。創業初期はミニキャブの運転手をしながら資金を捻出していたというエピソードが残っています。レーベルの転機となったのは、1982年の「A Feather on the Breath of God」。中世の修道女ヒルデガルト・フォン・ビンゲンの音楽を収録したこのアルバムが大きな成功を収め、レーベルの方向性を決定づけました。
以来、埋もれたロマン派のピアノ協奏曲シリーズ、レスリー・ハワードによるリスト全集(99枚)、シューベルト歌曲全集(40枚)など、大手レーベルでは実現しにくい大型プロジェクトを次々と完遂。グラモフォン賞のRecord of the Yearを4回受賞するなど、高い評価を獲得してきました。
優れたピアノ作品が特に多く、アンジェラ・ヒューイット、スティーヴン・ハフ、マルカンドレ・アムランといったピアニストの録音が充実しています。
2003年に創設者テッド・ペリーが死去した後は息子のサイモン・ペリーが経営を引き継ぎ、2023年にユニバーサル傘下に入りました。デッカ、ドイツ・グラモフォンと並ぶUMGの3大クラシック・レーベルの1つとなっています。
Hyperion おすすめSACD 10選
Angela Hewitt - Bach: The English Suites
Hyperion – SACDA67451/2

アンジェラ・ヒューイットはハイペリオンを代表するピアニストで、同レーベルでは一番多くSACDをリリースしていると思います。多くのレパートリーがありますが、やはりバッハのスペシャリストというイメージが強いです。
デビュー時はDGからレコードもリリースしていましたが、キャリアの多くはハイペリオンから。同郷のグールドとはかなり異なる、穏やかで包み込まれるような演奏です。
Angela Hewitt - Rameau: Keyboard Suites
Hyperion – SACDA67597

同じくアンジェラ・ヒューイットによるラモーのクラヴサン曲集。バッハと同世代のラモーは、和声の理論を熱心に研究していた作曲家です。音楽におけるハーモニーの重要性を体系化した第一人者ともいえます。
同世代のバッハとラモーを同じピアニストで比較するのも面白いと思います。
Florestan Trio - Debussy, Faure & Ravel: Piano Trios
Hyperion – SACDA67114

フロレスタン・トリオは1995年に結成され、わずか5年でロイヤル・フィルハーモニック協会室内楽賞を受賞した実力派のトリオです。
多くのレパートリーがありますが、本作はドビュッシー、フォーレ、ラヴェル。演奏同様、録音も細部まで緻密です。
Stephen Hough - Rachmaninov: Piano Concertos, Paganini Rhapsody
Hyperion – SACDA67501/2

スティーヴン・ハフは大好きなピアニストの1人です。
ラフマニノフのピアノ協奏曲は新旧さまざまな録音が存在しますが、全曲録音となるとそれほど多くありません。人気のある2番、3番でも変にエモーショナルな感じにならず、確かな技術でとても忠実な演奏です。
録音も地味に聴こえるかもしれませんが、全体の調和がとれていてバランスがいい。個人的にラフマニノフのピアノ協奏曲全集としては1番手に推奨します。廃盤ですがSACDで持っていたい1枚。
Marc-Andre Hamelin - Shostakovich: Piano Concertos Nos. 1 & 2, Shchedrin: Piano Concerto No. 2
Hyperion – SACDA67425

マルカンドレ・アムランはフランス系カナダ人のピアニスト。いわゆる超絶技巧系に属すると思います。
同レーベルに無数の録音がありますが、SACDは数えるほどしかありません。ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲2つとシチェドリンの協奏曲2番です。技巧が冴えわたる、まさに名人芸と言える演奏。ピアニストとしてショスタコーヴィチの録音経験を持つリットンが指揮を務めています。
発売された2003年当時、レーベルオフィシャルから強力に推薦されていた作品です。
Marc-Andre Hamelin - Brahms: Piano Concerto No. 2, Four Piano Pieces
Hyperion – SACDA67550

もう1枚アムランを。
ブラームスのピアノ協奏曲2番と4つの小品。協奏曲2番は交響曲と協奏曲の原理を室内楽のように融合させたもので、ブラームスのピアノ作品の集大成ともいわれています。先に紹介したスティーヴン・ハフのラフマニノフ全集と同じ、リットン&ダラス響のコンビです。
この曲を代表する名演奏、名録音だと思います。
Stephen Layton - Arvo Part: Triodion
Hyperion – CDA67375

ピアノ作品が圧倒的に多いハイペリオンですが、宗教音楽や合唱作品にも多くの録音があります。
スティーヴン・レイトンと、レイトンが創設した合唱団「ポリフォニー」によるアルヴォ・ペルトのトリオディオン。発売当時、グラモフォン賞2004の合唱部門賞やBBCミュージック・マガジンの年間TOP20を受賞するなど高い評価を獲得しました。
Ilan Volkov - Janacek: Eternal Gospel, Excursions of Mr Broucek
Hyperion – SACDA67517

ヤナーチェクの管弦楽作品集。有名なシンフォニエッタやイェヌーファではなく、馴染みのない作品ばかりを取り上げています。ほぼ初見のものばかりでした。
イラン・ヴォルコフ指揮、BBCスコティッシュ響。
Mark Elder - Holst: The Planets
Hyperion – SACDA67270

お馴染みのホルスト「惑星」。作曲当時はまだ発見されていなかった冥王星を、コリン・マシューズが書き加えたものも演奏されています。
惑星自体は無数に録音があるので、それらと比べると少し分が悪い感じはありますが、このレーベルでは珍しいオーケストラ作品なので取り上げます。
Andrew Litton - Ives: Symphonies Nos. 2 & 3, General William Booth Enters Into Heaven
Hyperion – SACDA67525

アンドルー・リットン、ダラス交響楽団によるアイヴズの交響曲。同レーベルで交響曲のSACDはほとんどないと思います。
アイヴズはアメリカ人として最初に国際的な名声を得た作曲家の1人です。リットンはアイヴズの全集録音をしており、別作品で1番と4番のSACD(SACDA-67540)もリリースしています。
現代音楽の作曲家のイメージが強いですが、あまり違和感なく聴けると思います。
以上10枚紹介しました。
SACDの世界はまだまだ奥深く、他のレーベルにも素晴らしいディスクが数多く存在します。 以下の完全ガイドで、その世界のさらなる魅力に触れてみてください。
