
大切なSACDコレクション。「プレーヤーが少なくなってきて、将来聴けなくなったらどうしよう」と不安に思ったことはありませんか?
実は、生産終了した一部のブルーレイプレーヤーを使うことで、SACDの貴重な音源をDSDファイルとしてPCに保存する方法があります。
この記事では、SACDリッピングに対応するブルーレイプレーヤーの全機種をリストアップし、その具体的な手順を詳しく解説します。
この記事で分かること
- SACDリッピングに対応したブルーレイプレーヤーの全機種リスト
- そもそもSACDリッピングは違法なのか
- リッピングの具体的な手順と必要なもの
- 中古で対応機種を探す際の注意点
SACDをリッピングする2つの大きなメリット
そもそも、なぜ手間をかけてまでSACDをリッピングする必要があるのでしょうか。それには、大切な音楽資産を守り、より便利に楽しむための、明確なメリットが存在します。
1. プレーヤーの生産終了に備え、資産を守れる
SACDプレーヤーは年々選択肢が少なくなっており、将来的に再生環境がなくなるリスクがあります。リッピングしてファイル化することで、特定のハードウェアに依存することなく、PCやネットワークプレーヤーで半永久的に音楽を楽しむことが可能になります。これは、貴重なディスクコレクションを守る上で最大のメリットです。
2. 圧縮されたDSDデータを、高音質な非圧縮DSFファイルとして扱える
SACDのディスク内では、シングルレイヤー盤などの一部を除き、DSDデータはDST(Direct Stream Transfer)という可逆圧縮方式で記録されています。
リッピングによって非圧縮のDSFファイルに変換することで、再生時に解凍プロセスを省略できるメリットがあります。また、DSFファイルはタグ編集もでき、より多くの再生ソフトで扱えたりと、PCオーディオとしての利便性が大きく向上します。
SACDリッピング対応BDプレーヤー 機種一覧【比較表】
これらのモデルはすべて生産が終了しており、中古市場での入手が基本です。以下の比較表を参考に、ご自身の予算や探しやすさに合わせて最適な一台を見つけてください。
モデル | 発売年 | 国内流通 | 定価 | AutoRip スクリプト | 中古で探す |
![]() CDS27 | 2015 | 未発売 | - | A5 | |
![]() UDP411 | 2015 | 未発売 | - | A5 | |
![]() Azur 752BD | 2013 | OPEN | A5 | ||
![]() CXU | 2015 | OPEN | A5 | ||
![]() DBT-3313UD | 2012 | 120,000円 | A3 | Amazon | |
![]() EMP 3 | 2013 | 未発売 | - | A5 | |
![]() UD7007 | 2012 | 150,000円 | A3 | Amazon | |
![]() Universal Media Transport V | 2015 | 950,000円 | A5 | ||
![]() Signature UMT V | 2015 | 1,650,000円 | A5 | ||
![]() BDP-103 | 2012 | OPEN | A5 | Amazon | |
![]() BDP-103D | 2013 | OPEN | A5 | Amazon | |
![]() BDP-105 | 2012 | OPEN | A5 | Amazon | |
![]() BDP-105D | 2013 | OPEN | A5 | Amazon | |
![]() BDP-80FD | 2014 | 未発売 | - | A4 | |
![]() BDP-160 | 2013 | OPEN | A4 | Amazon | |
![]() BDP-170 | 2014 | OPEN | A4 | Amazon | |
![]() Pioneer MCS-FS232 | 2014 | 未発売 | - | A3 | |
![]() BD32 MKII | 2014 | 700,000円 | A5 | ||
![]() BDP-S390 / BDP-BX39 | 2012 | 未発売 | - | A1-neo | |
![]() BDP-S490 | 2012 | 未発売 | - | A1-neo | |
![]() Sony BDP-S590 / BDP-BX59 | 2012 | OPEN | A1-neo | Amazon | |
![]() BDV-E190 | 2012 | 未発売 | - | A1-archaic | |
![]() BDP-S4100 | 2013 | 未発売 | - | A1-neo | |
![]() BDP-S5100 / BDP-BX510 | 2013 | OPEN | A1-neo | Amazon | |
![]() Sony BDP-S790 | 2012 | 未発売 | - | A2-neo | |
![]() BDV-NF720 | 2013 | 未発売 | - | A2-archaic | |
![]() BDP-A6000 | 2013 | 未発売 | - | A2-neo | |
![]() BDP-S6200 / BDP-BX620 | 2014 | OPEN | A3 | Amazon | |
![]() BDP-S7200 | 2014 | 未発売 | - | A3 | |
![]() BDP-S6500 / BDP-BX650 | 2015 | OPEN | A6 | Amazon | |
![]() BDP-6700 * | 2016 | OPEN | A6 / A6-archaic | Amazon | |
![]() UHP-H1 | 2016 | 未発売 | - | A6 / A6-archaic | |
![]() BD-S677 | 2014 | 未発売 | - | A4 |
迷ったらコレ!おすすめの3台
もし、どの機種を選べば良いか迷ったら、私が今おすすめするこの3台から検討してみてください。
Pioneer - BDP-160
最初にリッピングできる機種として話題になった製品です。情報が多く、トラブル時の対応がしやすい。後継機のBDP-170とくらべて市場売価も落ち着いている。
Sony - BDP-S6200
パイオニアと比べて、価格がこなれており流通量も多い。
DENON - DBT-3313UD
オーディオメーカーらしい物量が投入された1台。価格も比較的こなれており、リッピングの音質にまでこだわりたい方に。
SACDリッピングの具体的な手順と必要なもの
対応するプレーヤーを入手したら、次はいよいよリッピングの手順です。
準備するもの
- SACDリッピングに対応したBDプレーヤー
- PC(Windows, Mac, Linux)
- USBメモリ
- プレーヤーとPCを接続するためのLANケーブル (Wi-Fiでもできます)
PC側の事前準備
FAT32でフォーマットし、短いラベル名にする
ブルーレイプレーヤーの設定
プレーヤー側の事前準備
有線/無線は問いません。IPアドレスを確認してメモします。
固定IPにした方が便利だと思います。
プレーヤーにはUSBデバイスをつながないこと
クイックスタートをON
自動再生はオフに
以下はモデルによって操作方法が異なります。
A1neo & A2neo
- プレーヤーの電源を入れ、USBフラッシュドライブを挿入。
- トレイが自動的に開きます。
- 10秒以内にディスクをトレイに置く。
- プレーヤーは特別なモードになり、フロントパネルに「OFF」または「LOAD」と表示されます。
- ISOリッピングが開始され、ディスクの回転音とUSBフラッシュドライブのLEDが点灯します。
- リッピングが終了すると、ディスクは排出されます。
- 電源を切ります。
A3 & A6
- SONYプレーヤーはSLEEP MODE(=電源を切る)で、
DENON、MARANTZ、PIONEERプレーヤーはONのままにし(=AWAKE MODE)、USBメモリーを挿入する - トレイが自動的に開きます。
- 10秒以内にディスクをトレイに置くと、トレイは自動で閉じます。
- ISOリッピングが開始されます。ディスクの回転音とUSBフラッシュドライブのLEDの動作を確認してください。
- リッピングが終わり次第、ディスクが取り出されます。
A4 & A5
- プレーヤーの電源を入れ、USBフラッシュドライブを挿入します。
- トレイが自動的に開きます。
- 10秒以内にディスクをトレイに置く。
- ISOリッピングが開始されます。ディスクの回転音とUSBフラッシュドライブのLEDの動作を確認してください。
- リッピングが終わり次第、ディスクが取り出されます。
A1-archaic、A2-archaic、A6-archaic
「クイック起動」オプション[=スリープモード]がない、またはIRコマンドを無視するモデル
- トレイが自動で開きます(スロットインドライブはガラガラというノイズを出すだけです)。
- ディスクを10秒以内にトレイの上に置くと、トレイは自動で閉じる(スロットドライブメカニズムの場合は、空のイジェクトを試みるガラガラ音が聞こえたらすぐにディスクをスライドさせてください)。
- ディスクが認識されるまで待ち、STOPボタンの直後にPLAYボタンを押す。
- プレーヤーの電源を入れ、USBフラッシュドライブを挿入します。
- プレーヤーのオンスクリーンディスプレイメニューからSACDチャンネル出力設定(2CH <-> MultiCH)を変更します(30秒以内)。
- ディスクの回転音とUSBメモリーのLEDの点灯を確認してください。
- リッピングが終わり次第、ディスクが取り出されます。
リッピングを開始する
CドライブにSACDというフォルダーを作ると仮定します。
先ほどのフォルダーにsacd_extractをダウンロードし、解凍します。
解凍したsacd_extract.exeファイルを保存。
参考: https://www.videohelp.com/software/sacd-extract
事前準備で作成したフォルダーに移動。
今回はCドライブにsacdというフォルダーを作成しましたので、コマンドプロンプトに下記のように入力。
cd C:\sacd
次に、フォルダー内のsacd_extract.exeを起動します。
.\sacd_extract -i 192.168.x.xx:2002 -P -I
192.168.x.xxはブルーレイプレーヤーのIPアドレスです
デフォルトではISOファイルで保管されますが、下記コマンドを追加することでDSFのステレオで保存するなど、設定を変更できます。
Usage: sacd_extract [options] [outfile]
-2, --2ch-tracks : Export two channel tracks (default)
-m, --mch-tracks : Export multi-channel tracks
-e, --output-dsdiff-em : output as Philips DSDIFF (Edit Master) file
-p, --output-dsdiff : output as Philips DSDIFF file
-s, --output-dsf : output as Sony DSF file
-I, --output-iso : output as RAW ISO
-c, --convert-dst : convert DST to DSD
-C, --export-cue : Export a CUE Sheet
-i, --input[=FILE] : set source and determine if "iso" image,
device or server (ex. -i192.168.1.10:2002)
-P, --print : display disc and track information
作成したフォルダー内(Cドライブのsacd)にISOファイルが保存されます。
SACD ISOをDSFファイルに変換する
lightMPDやfoobar2000(要プラグイン)などSACDISOファイルをそのまま再生できるソフトも存在しますが、通常はDSFやDSDIFFに変換する必要があります。
SACD ISOファイルの処理の仕方は別ページで説明しています。

DSFファイルのタグ編集
SACD ISOファイルをDSFに変換した後は、Mp3tagでタグ情報の編集ができます。こちらに詳しく紹介しています。

まとめ
この記事で紹介した対応機種と手順は、あなたの大切なSACDコレクションを、ハードウェアの制約から解放するための具体的な方法です。
プレーヤーが入手困難になる未来を心配する前に、まずは中古市場で最適な一台を探すところから、新しいPCオーディオの世界を始めてみてはいかがでしょうか。
SACDの世界はまだまだ奥深く、他のレーベルにも素晴らしいディスクが数多く存在します。 以下の完全ガイドで、その世界のさらなる魅力に触れてみてください。
