
オーディオの基本であるアース接続。しかし、「正しくアースを接続したはずなのに、高周波ノイズが消えない」「深夜になると、かえってS/Nが悪化する」そんな経験はありませんか?
その原因は、あなたが接続した「アースライン」そのものが、ノイズの侵入経路になっているからかもしれません。
この記事では、そのアースラインノイズという根深い問題に対し、私自身が分電盤の配線から見直し、アースライン専用フィルター「グランドナイト」を導入するまでの一部始終と、その効果、そして残された課題への現実的な最終手段までを、詳しく解説します。
正しいアースの落とし方については、以下の記事で解説しています。

この記事で分かること
- アースラインノイズの主な原因
- 対策の土台となる、正しいアース配線の考え方
- グランドナイトの具体的な使い方と、驚くべき効果
- 最強のノイズ源「エコキュート」への最終手段
アースラインノイズとは?その主な発生源
アースを接続したのに音が悪くなる、その最大の原因は、アースラインに家庭内の他の家電製品のノイズが混入することです。
日本の家庭に潜む「共通アース」の問題
私の環境では、オーディオ用に分電盤を独立させていますが、アースは家全体で共通になっています。これは、多くの日本の家庭で同様の状況だと考えられます。つまり、オーディオ機器のアースは、キッチンや洗面所の家電のアースと、大地に落ちる前のどこかでつながっています。
強力なノイズ源となる「インバーター機器」
特に、インバーターを搭載した200Vの機器(エコキュート、エアコンなど)は、強力な高周波ノイズの発生源です。これらの機器が稼働すると、そのノイズが共通のアースラインを通じてオーディオシステムに侵入し、音質を著しく劣化させます。アースラインは、本来ノイズを逃がす役割ですが、逆にノイズの侵入経路(裏口)にもなってしまうのです。
なぜ「グランドナイト」なのか?データが示す唯一無二の信頼性
数あるノイズ対策製品の中で、なぜグランドナイトが有効な選択肢と言えるのでしょうか。
唯一、ノイズ減衰率をデータで公表している誠実さ
グランドナイトの最大の強みは、アースラインのノイズをどの周波数でどれだけ減衰させるか、その性能を具体的なグラフデータで公表している、極めて稀な製品であることです。多くの製品が曖昧な表現に終始する中、この技術的な誠実さが、信頼性の高さを物語っています。
アース本来の安全性を損なわない仕組み
グランドナイトは、高周波ノイズだけを熱に変換して除去し、万が一の漏電時に大電流を大地へ逃がす、アース本来の安全機能は一切損なわないように設計されています。
【実践】グランドナイト導入と、その効果
私の環境で、グランドナイトをどのように設置し、どのような効果があったかを解説します。
事前準備 ー ノイズ発生源(100V家電)への対策
まず、比較的対策しやすい100Vの家電製品(冷蔵庫、PCなど)のコンセントに、ノイズフィルターを設置します。これにより、ノイズが電源ライン、ひいてはアースラインに流れ出すのを、元から抑制します。
100Vでアースを落としている機器(冷蔵庫、洗濯機、トイレのウォシュレットx2 100Vのエアコンx2、電子レンジ)については、コトヴェールとGreenwave Dirty Electricity Filtersを経由させています。

【補足】コトヴェールはアースラインのノイズ除去効果あり
アースラインのノイズ対策には、「コトヴェール SFU-005-3P」が有効です。この製品は、電源ラインのノイズだけでなく、アースラインに影響するコモンモードノイズの除去効果も高いためです。
ただし、容量が5Aまでと限られているため、消費電力が少ない機器に使うのがポイントです。トイレのウォシュレットと冷蔵庫に使用することで、効果が確認できました。
オーディオ用の経路の中でも、無線LAN子機、スイッチなどで使用しているGaN電源の大元のコンセントには、コトヴェールをつないでいます。

消費電力が大きい、エアコンや電子レンジ (いずれも100Vが前提)には、Greenwave Dirty Electricity Filtersを使用しています。Greenwave Dirty Electricity Filtersは、技術的な明記がないので不明ですが、私の感覚上、アースラインのノイズに対しては効果は期待できません。
ステップ1 ー 大前提の見直し「全ての壁コンセントのアースを接続」
私の環境は、オーディオ用分電盤に4つの子ブレーカーがあり、1つのブレーカーに対して、1つの壁コンセントがそれぞれつながっています。
まず、これまで一点アースを意識するあまり、アースを落とす機器以外の3系統の壁コンセントは、分電盤からのアース線を接続しない「浮かせた」状態にしていました。
しかし、再検討した結果、アース線を浮かせると、それ自体がアンテナになってノイズを拾うリスクがあること、壁のアース線をつないだ場合は電源ラインをノイズから守る「シールド」の役割も担っていると判断。対策の第一歩として、オーディオ用の4系統すべての壁コンセントで、分電盤からのアース線をしっかりと接続しました。
ステップ2 ー 一点アースの経路上に「グランドナイト」を設置
次に、アースラインから侵入するノイズを迎え撃つため、アースライン専用ノイズフィルター「グランドナイト」を導入しました。
オーディオ用分電盤から出ている4系統のアースラインのうち、最もシャーシ電位が低かったパワーアンプを接続する1系統のみを「一点アース」の経路とし、その子ブレーカーとアース線の間にグランドナイトを接続しました。

グランドナイトの効果と、残された最後の課題
効果 ー エアコンのノイズが消え、静寂感が向上
上記の対策を行った結果は、かなり良好でした。 これまで悩まされていた200Vのエアコンが稼働していても、スピーカーからのノイズは皆無に。そして、音質面でも、まるでベールを一枚剥いだような静寂感が高まり、S/Nが大きく向上したことを実感できました。
この音を聴いて、アースを落とすことに決めました。
残された課題 ー 最強の敵「エコキュート」
しかし、最強のノイズ源であるエコキュートがお湯を沸かす深夜の時間帯においては、グランドナイトをもってしても、その強力なノイズを完全に消し去ることはできませんでした。
これはグランドナイトの性能が低いということではなく、エコキュートのノイズがいかに強力か、という証明です。私の家は、給湯器のお湯の他に、床暖房で使う温水も深夜帯に温めるので、一般の環境よりも深夜帯のノイズが多いと思います。
家庭のノイズレベルによっては、グランドナイトだけで200V機器のノイズも十分に対処できる可能性は十分に考えられます。
私がたどり着いた、現実的な最終手段
このため、最終的な運用は、「通常はグランドナイト経由でアースを接続し、エコキュートが稼働する深夜に音楽を聴く場合のみ、パワーアンプの電源プラグを3P-2P変換アダプターで一時的に浮かせる」方法に落ち着きました。

グランドナイトはアースを接地している方にはおすすめの製品です。
アース接続の基本と、電源ノイズの全体像
そもそも、ご自身のアース接続が正しく行われているか、あるいは電源ライン自体のノイズはどの程度なのか、見直してみることも重要です。
アース接続の基本に立ち返る
以下の記事で、シャーシ電位の測定から、正しいアースの考え方までを網羅的に解説しています。

電源ラインのノイズを測定する
ご家庭の電源に、どれくらいのノイズが乗っているか、専用の測定器で可視化することもできます。
これは、アースを浮かせている場合でも有効です。

まとめ
オーディオのアースは非常に奥深く、セオリー通りの対策だけでは解決できない問題に直面することがあります。
グランドナイトは、アースラインノイズに対して非常に高い効果を発揮する、信頼できる製品です。しかし、それでも解決しない強力なノイズ源が存在する場合は、**「あえてアースをしない」**という選択肢も、現実的な最適解になり得ます。
この記事が、あなただけの「最適解」を見つけるための、試行錯誤の一助となれば幸いです。
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