オーディオ機器 正しいアースの落とし方

アースの落とし方

オーディオ機器の電源の極性、シャーシ電位の測り方から、正しいアースの取り方までを解説。アースはとらない方が良い場合も多いので、最後は聴感で判断しましょう。

オーディオにとって電源環境はとても重要です。
今回はアースとシャーシ電位についての考察です。

もう15年くらいですが、家を建てたときに、電気屋に指示したのは下記のとおりです。
関東、東電管轄です。

  • 従量電灯C契約
  • 電線は全てVVR(オーディオ部屋以外も全て)
  • 全てのコンセントは挟み金具を使わずボックスに取り付ける(オーディオ部屋以外も全て)
  • オーディオ機器用に別分電盤を用意する。子ブレーカー1つに壁コンセント1とする(渡り接続をしない) 各ブレーカーの相を合わせる。

参考: 分電盤の配線状況による影響について

目次

アースを落とす前に、オーディオのシャーシ電位を確認する

アースを接続する前に、各機器のシャーシ電位を確認することが重要です。これにより、効果的なアース接続が可能になります。

シャーシ電位とは?

オーディオ機器に限らず、電気製品は電気が流れることで、筐体(シャーシ)が帯電します。この帯電した電圧のことをシャーシ電位と呼びます。

原則として電位が低く、安定しているのが理想です。

事前準備

テスターは必須ですので、何か用意しましょう。
私はSANWAのPM10というモデルを使用しています。現行はPM11です。

コンセントの極性について:アース接続の基礎知識

日本の一般家庭用コンセントは、通常、極性が決まっています。正しい極性を理解することが、正しいアース接続の第一歩です。

壁コンセントの極性が正しいか確認します。
差し込み口の左右の長さが異なるのが分かるでしょうか。

outlet

右の短い方がホット、またはL(ライブ)、左の長い方がコールド、またはN(ニュートラル)、と呼ばれています。
ホットには「電流を送り込む」役割があり、コールドには「電流を逃がす」役割があります。

感電するのはホットの方ですね。

コンセントの極性確認:テスターを使用した実践的アプローチ

コンセントの極性が間違っていないか確認します。

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テスターを交流モードに
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2本のリード棒をコンセントのホットとコールドの穴に刺す

この状態で100V前後の数字が出ているか確認。

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リード棒の片方を手で持った状態で、もう片方をコンセントの穴(ホット or コールド)に刺す

同様に反対のコンセント穴に刺して電圧を確認。
ホットの穴の方が電圧が高ければ正しい結線です。

相の確認:複数コンセント使用時の注意点

複数のコンセントを使用する場合、それらが同相であることを確認します。異相のコンセントを使用すると、音質劣化の原因となる可能性があります。


上の図でいうと、上の3つ(リビング、寝室、書斎)が同相、下の3つ(客間、子供部屋、キッチン)が同相です。
子ブレーカーとコンセントを1対1としている場合、各コンセントが同相かチェックを行います。

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テスターを交流モードに
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2つのコンセントのホットにリード棒を刺して電圧を測定

0V付近であれば同相、200V付近なら逆相
複数コンセントがある場合は、全てチェックする。

リード棒の長さが足りないと思いますので、延長コードなどを使って確認します。

経験上、1つのオーディオシステムの中に相の違うコンセントから給電すると音が悪くなります。
コンセントの極性よりも重要です。

各機器の極性確認:個別機器のシャーシ電位測定

次に、各オーディオ機器の極性が正しいか確認します。

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ケーブルを何もつながない状態で、電源を入れる

パワーアンプによっては、プリをつながないで電源を入れると危険な場合があります。

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シャーシ電位を測る

テスターを交流の位置にセットし、リード棒の片側を手で押さえた状態で、機器の金属部分にもう片方を当てる。
電圧をメモしておく。

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一度電源を落とし、電源プラグの向きを変えて、再度測定

3Pプラグの場合は、2P/3Pアダプターを使って向きを変える。
両者を比較して電圧が低い方が、正しい極性。

ケーブル側に極性表示が付いている場合でも、実測で電圧が低い向きにした方が良いと思います。
手持ちのオーディオ機器の極性を全て確認します。

シャーシ電位が低いオーディオ機器へのアース接続:効果的なノイズ対策

シャーシ電位が最も低い機器にアースを接続します。これにより、システム全体のシャーシ電位を効果的に下げることができます。


アース線の接続の仕方

オーディオ機器に、アース端子がある場合は、そこにアース線を接続します。
端子がない場合は、シャーシのネジなどの金属部分にアース線を接続。

アースはとても難しい問題です。
家庭用電源とは独立したオーディオ専用のアースがあるのが理想ですが、現実的には導入のハードルは高いと思います。

エアコンや、洗濯機など、家電製品が同じアースにつながっていると、それがノイズの混入原因となる場合もあります。

中途半端なアースであれば、割り切って全部浮かす方法もありです。
アースは浮かした方が音が良い場合も多いです。

アースを浮かす方法

ブレーカーから壁コンセントの電線はアース線をつながない。
電源ケーブルを2Pタイプにする。

壁コンセントにアースをつながない場合でも、3ピンの電源ケーブルを使うと、電源タップ経由で各機器にアースがつながります。
信号線もアースがつながりますのでいわゆるアースループが発生します。

このアースループは、配線が長いほど大きくなります。
別の子ブレーカーからコンセントに各機器をつないでいるような場合には、より大きなループを発生してノイズを拾いやすくなるケースも有ります。

ループを避けるために、機器のアースは1つだけ落とす方法がおすすめです。
機器間の接続ケーブルのアースがつながっていない場合は個別にアースを落としても問題はありません。

電気は電位の高いところから低いところへ移動します。
つまり一番シャーシ電位が低い機器に落とした方がより効果が高いといえます。

壁コンセントにアースがつながっているか確認するには、テスターの交流モードで、リード棒をライブとアース端子に刺して電圧を確認します。100V前後の数字になればアースがつながっています。

私の環境ではパワーアンプのシャーシ電位が一番低いので、パワーアンプにアースを落としました。
パッシブプリで電圧を測ってみました。

パワーアンプのアースを浮かした状態
21.04V

アース未接続

パワーアンプのアースを落とした状態
1.892V

アースを落とした状態

パワーアンプのアースを落とすことで、RCAケーブルを通じて接続されているパッシブプリの電位が1/10以下に変わることが分かります。

同様にパッシブプリにつないでいるフォノイコライザーやDACの電位も変化します。

以前に紹介したEntech Noise Analyzerでノイズのレベルを測定すると、アースを落とした方が数字は悪くなることが多いです。最終的には聴感上で判断します。

電位は低い方が良いのですが、数字よりも安定している方が大切です。
どうしても他の家電などのアースの影響を受けます。

アースラインのノイズ対策としては、アース専用のノイズフィルターを導入しました。
試行錯誤の上、現在はアースを繋いでいません…。

アースに特化した本はあまりないと思います。

オーディオではなく、もっと大きなレベルでのアースのはなしです。難しい内容ですが、オーディオにも生かせる内容も含まれています。アースをもっと深く勉強したい人向けの本を紹介します。

オーディオ アースの取り方 まとめ

  • オーディオ機器のアース接続前に、各機器のシャーシ電位を確認することが重要
  • シャーシアース:電位が低く、安定していることが理想的
  • コンセントの極性確認:ホット(短い方)とコールド(長い方)の理解が正しいアース接続の基礎
  • テスターを使用したコンセントの極性確認方法:交流モードでホットとコールドの電圧を測定
  • 複数コンセント使用時の注意点:同相であることを確認し、音質劣化を防ぐ
  • オーディオ機器の極性確認:各機器のシャーシ電位を測定し、低い方を正しい極性として設定
  • アンプのアース取り方:シャーシ電位が最も低い機器にアースを接続
  • オーディオアースのノイズ対策:アースループを避けるため、機器のアースは1つだけ落とすことを推奨
  • アース浮かしの方法:ブレーカーから壁コンセントへのアース線を接続しない、2P電源ケーブルの使用
  • アースの効果は環境依存:必ずしもアースを取ることで音質が向上するとは限らない
  • 最終的な判断は聴感で:数値だけでなく、実際の音質改善効果を確認することが重要
  • アースライン専用のノイズフィルター導入も一つの選択肢
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