

前回の続きです。
実際に予算別にお勧めの製品を紹介します。50万以下の製品に絞りました。
10Mマスタークロックジェネレーターの選び方【予算別】
正弦派と矩形派で選ぶ
コスト重視であれば、正弦派のクロックを使い、10MHz帯域外をフィルターで取り除きます。
矩形波の場合は、入力側の矩形波-正弦派コンバーターの性能にも左右されます。つまり、入力側の性能も求められます。
ケーブルもしっかりとした性能のモノを選びます。また、50Ω/75Ωのインピーダンスマッチングを正しく行います。
水晶とルビジウム
ルビジウムが高級クロックの代名詞だった時代もありますが、ルビジウムは時間経過とともに性能が劣化してしまう欠点があり、民生機器では使用されるケースが少なくなりつつあります。
現在は位相ノイズの少ないもの重要視するので、時間軸精度の高いルビジウムの需要が減りました。
ただ、性能の良いルビジウムでしか出ない音があるのも事実だと思います。
今回紹介するものは全て水晶を採用しています。
予算別お勧めモデル
私は、手頃な正弦派のクロックを入手し、フィルターを通す方式を採用しています。
フィルターは推奨されているMini-Circuits BLP-10.7+を購入しました。海外の方が安いですが送料を考えて日本の代理店から購入しました。
参考: ミニサーキットヨコハマ
購入した10MHzマスタークロックは、中古のWOCXOのMorion MV89Aを載せた製品です。
ヤフオク!で購入しました。出力は50Ω x2系統でオーダーしました。
電源は12VのACアダプターです。窒化ガリウムのアダプターに、JSPCオーディオ製のノイズフィルターを挟んでいます。
マスタークロックはクロックの精度も大切ですが、位相ノイズを少なくすることがとても重要で、それは電源と振動の影響も受けやすいです。電源はできるだけ良質なものが好ましいです。

参考: JSPC AUDIO - DCラインコンディショナー DLC10
ガレージメーカーは無責任にお勧めしにくいのでメーカー製品を紹介します。
Aune Audio - XC1 [43,910円]

アウネオーディオは中国のブランドで、ヘッドフォンアンプやD/Aコンバーターなどをリリースしています。
中古のOCXOを搭載したガレージ製品と同等以下の価格設定ですが、仕様は本格的です。
以前より価格が上がりましたが、実売5万円以下で購入できます。
正弦波と矩形波出力を各2系統用意しています。
正弦波 矩形波
SFORZATO - PMC-Libra [90,000円]

スフォルツアートは日本が誇るネットワークプレーヤーの雄です。最近はDirettaやZero Linkも話題に上がりますね。上位モデルのクロックしか聴いたことがありませんが、戦略的なモデルだと思います。
出力は50Ω1系統。BMCではなくSMA端子というマニアックな仕様。
矩形波
TEAC - CG-10M [148,000円]

Esotericの弟ブランドのような立ち位置の製品です。
TEACブランドとしてもRoon ReadyおよびUPnPに対応したネットワークプレーヤーを出すなど、この分野でも意欲的な製品をリリースしています。
国産大手でまともなネットワークプレーヤーを出しているのは、ティアック位だと思います。
出力は50ΩBNCx4系統
正弦波
NMODE - X-CL3MKII [160,000円]

NMODEはかつてシャープで1bitアンプの技術開発をされていた方が起業したメーカーです。現在も1bitデジタルアンプの製造販売も行っています。
このクロックは10MHzの他、DDSで分周した44.1Khz-768kHzまで出力できる多機能なモデルです。別の高性能な10MHzマスタークロックを入力するための10MHz入力も備えています。
矩形波
SOULNOTE - X3 [350,000円]

SOULNOTEは日本のブランドで、外部マスタークロックで、DACとプレーヤーまで完全同期させる"ZERO LINK"提唱メーカーです。
この理想的な伝送方式は、大元になるマスタークロックの性能に大きく左右されるのは言うまでもありません。SOULNOTEのゼロリンクの評価は、このクロックがあってこそです。
出力が一系統しかなく、しかもSMA端子、サイズが大きいなど、運用のしにくさはありますが、音質は相当良いと思いました。
音質だけでいえばREF10より有利だと思います。
我が家には向かい入れるスペースが無いので導入の候補外ですが…。
矩形波
MUTEC - REF10 [オープンプライス 実勢価格415,000円前後]

MUTECはドイツのメーカーです。USBのリクロック&DDC機能も備えたMC3+USBという製品が一部で人気になりました。本製品はMC3+USBへも接続が可能な10M出力固定モデルです。
インピーダンスは75Ωと50Ω専用出力をどちらも備えています。
矩形波なので、両方のインピーダンス出力を持っているのは合理的ともいえます。
また、通常接続しない端子はリターンロスがあるのでターミネーターで終端が理想ですが、本製品は設定で使わない端子をON/OFFまでできます。
このクラスになると、ある程度のハイエンド製品につないでも外部クロックの恩恵がはっきりとわかります。さらに上位モデルのREF10 120SEは背景が静かです。比べると両者でも結構違います。
矩形波
比較表
![]() Aune Audio XC1 | ![]() PMC-Libra | ![]() CG-10M | ![]() X-CL3MKII | ![]() X3 | ![]() REF10 | |
---|---|---|---|---|---|---|
定価 | 43,910円 | 90,000円 | 148,000円 | 160,000円 | 350,000円 | OPEN 実勢41.5万前後 |
クロック | OCXO | OCXO | OCXO | OCXO | OCXO | OCXO |
精度 | 周波数精度<1ppm | 非公表 | 周波数精度 +/-0.1ppm | 非公表 | 非公表 | 周波数精度 < ± 0.01 ppm |
波形 | 正弦波/矩形波 | 矩形波 | 正弦派 | 矩形波 | 矩形波 | 矩形波 |
出力 | 50Ω BNC x4 | 50Ω SMA x1 | 50Ω BNC x4 | 50Ω BNC x4 | 50Ω SMA x1 | 75Ω BNC x6 | 50Ω BNC x2
出力レベル | >7dBm | 1.0Vpp | 0.5Vrms | 5.0Vpp | 1.0Vpp | 2 Vpp |
サイズ mm | W145 x H45 x D171 | W108 x H80 x D80 | W290×H84.5×D248.7 | W420 × H73 × D260 | W430 × H111 × D376 | W198 × H88 × D300 |
電源 | アダプター | アダプター | 内蔵 | アダプター | 内蔵 | 内蔵 |
備考 | 正弦派と矩形波の出力を搭載 | 超低位相ノイズ OCXOを採用 | アナログメーターで 発振安定状態を表示 | 44.1~768KHzの 周波数出力も可能 | SCカット超低位相雑音 OCXOを採用 | -166dB 以下という ノイズフロアを実現 |
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ケーブルについて
矩形波の場合はマスタークロックと入力側のインピーダンスをそろえる必要があります。
また、高い周波数帯で減衰の少ないケーブルを選択します。一部のメーカーでSMA端子を採用しているのは、従来のBNC端子よりも高周波特性が良いので理にかなっています。
多くのオーディオメーカー製ケーブルは75Ωです。
50Ωの製品は多くはありませんが、有名どころを紹介しておきます。
Abendrotの10Mクロックは高過ぎて紹介しませんが、デジタルで最も衝撃を受けた製品の1つです。
正弦波の場合はインピーダンスのマッチングはそれほど重要ではありません。もちろん、そろえられる方が良いです。
通常は高周波特性よりもシールド特性を重視しますが、Mini-Circuitsのようなフィルターを使う場合はケーブルもこだわらなくて良いそうです。
まとめ
なるべく低予算で押さえたい場合や、受信側の矩形波-正弦派コンバーターの性能が未知数な場合は、正弦波クロックにMini-Circuitsのフィルターを付けるのがお勧めです。
この場合はケーブルのインピーダンスやグレードも大きな問題になりません。
つなぐ機器がある程度高級機であれば、内蔵の矩形波-正弦波コンバーターの性能も良いと考えらます。その場合は矩形波のクロックに良質なケーブルを選択することでさらに良い音が狙えます。
矩形波の場合はインピーダンスをそろえること、高周波帯の減衰が少ない良質なクロックケーブルも用意する必要があります。
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