Elzbieta Adamiak

ポーランドには「Poezja śpiewana(歌われる詩)」という、詩の朗読に音楽を乗せる独自の芸術ジャンルがあります。エルジュビェタ・アダムヤクはその代表的な存在で、本作は1980年にリリースされたソロ初のフルアルバムです。

1975年のクラクフ学生歌謡祭で作詞作曲デビュー賞を受賞するなど、早くからその才能は高く評価されていました。本作でその評価を確固たるものにしています。

目次

Elzbieta Adamiak - Elzbieta Adamiak

Muza - SX 1992

SX1992

1955年ウッチ生まれのアダムヤクは、ピアノとクラシックギターを学んだのち、大学で社会学を専攻しましたが3年次に中退し、音楽の道へ進みました。フォークグループ「Nasza Basia Kochana」や「Wolna Grupa Bukowina」のメンバーとしても活動していましたが、本作ではソロアーティストとしての個性が際立っています。代表曲「Jesienna zaduma」や「Szara piosenka」を含む収録曲は、いずれも内省的で詩情豊かな世界を描いています。

録音された1980年は、ポーランドで社会運動「連帯」が生まれた激動の時代です。しかし、アダムヤクが歌うのは社会的なメッセージではなく、あくまでパーソナルな詩の世界。この静かな知性が、同時代の他の作品とは一線を画す魅力になっています。

音楽的には、フォークを基調としながらジャズやボサノヴァの要素が洗練されたアレンジで加えられています。

バックを務めるのはヤヌシュ・ストロベル率いるアンサンブルで、ピアノにはヴウォジミエシュ・ナホルニーが参加しています。ナホルニーは1967年のウィーン・ジャズフェスティバルでデューク・エリントンから個人賞を授与されたポーランドジャズの巨匠です。ストロベルもまた、名門ギターデュオ「アルベル=ストロベル」で知られるクラシカルギターの名手で、これらの一流奏者による卓越した演奏が、本作の音楽的な深みを支えています。

国営レーベルMuzaのレコードは、音楽性と音質の双方で安定感があることで知られています。本作の録音ディレクターはJ・ズウォトコフスキが担当しており、楽器の生々しい質感と温かみのあるボーカルは、オーディオ的にも聴きごたえがあります。ジャケットが薄い点も含め、東ドイツの「Eterna」に通じる質実剛健な魅力を持つ一枚です。

レコードの入手は比較的容易です。

非英語圏の女性ボーカル作品や、ジャズを背景に持つ上質なシンガーソングライター作品を好む方におすすめできます。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次