作品の内容は別にして、オーディオでは定番として使われる作品がたくさんあります。
いわゆる優秀録音と呼ばれる類のものです。クラシックのレコードはある意味、そのほとんどが優秀録音とも言えますが、それ以外のジャンルに関しては、残念ながらそうはいきません。
その手の作品は人並みに持っていますが、オーディオを忘れて普段聴き出来るものは非常に少ないと思います。
この作品は、内容、録音とも優れている、(私にとっては)数少ない1枚です。
Eva Cassidy - Songbird
S&P - S&P501

エヴァ・キャシディは皮膚癌で33歳の若さで亡くなっています。
本作は彼女の死後にリリースされた編集盤。通常CDの他に、XRCD、LPが有ります。それぞれの良さがあると思います。
本作は、Blix Street Recordsの社長が彼女の音楽に感銘を受け、キャシディの両親に連絡を取り、彼女が生前に残した録音から新しいアルバムを編纂する許可を得て、遺族とのライセンス契約に基づき、制作されました。
収録曲は以下の通り
Track | Title | オリジナル・アーティスト/作者 | 収録元アルバム / 録音タイプ |
---|---|---|---|
1 | Fields of Gold | Sting | Live at Blues Alley / ライブ録音 |
2 | Wade in the Water | Traditional (Spiritual) / Arr. Eva Cassidy | Eva by Heart / スタジオ録音 |
3 | Autumn Leaves | Joseph Kosma / Johnny Mercer / Jacques Prévert | Live at Blues Alley / ライブ録音 |
4 | Wayfaring Stranger | Traditional (Folk) / Arr. Eva Cassidy | Eva by Heart / スタジオ録音 |
5 | Songbird | Christine McVie (Fleetwood Mac) | Eva by Heart / スタジオ録音 |
6 | Time Is a Healer | Diane Scanlon / Greg Smith | Eva by Heart / スタジオ録音 |
7 | I Know You By Heart | Eve Nelson / Diane Scanlon | Eva by Heart / スタジオ録音 |
8 | People Get Ready | Curtis Mayfield (The Impressions) | Live at Blues Alley / ライブ録音 |
9 | Oh, Had I a Golden Thread | Pete Seeger | Live at Blues Alley (アルバム末尾のスタジオ録音トラック) |
10 | Over the Rainbow | Harold Arlen / E.Y. "Yip" Harburg | The Other Side / スタジオ録音 (1992年頃) |
スティングのFields of Goldは、色々なカバーがありますが、この曲を聴いたスティング本人が涙したという逸話もあるそうです。彼女の声は、力強さと繊細さを兼ね備え、聴く者を圧倒します。
「Over the Rainbow」や「Songbird」のように、キャシディ自身が伴奏の多く、あるいはすべてを担当しているトラックもあり、歌声だけではない多彩な才能の片鱗が確認できます。
また、このアルバムは、「Live at Blues Alley」からの生のエネルギー(観客ノイズはカット)と、スタジオ録音に見られる洗練されたレイヤーや多重録音された楽器編成を戦略的に混合しています 。このブレンドが、アルバムの幅広い魅力を生み出した要因の一つになっています。
ポピューラー系の女性ヴォーカルとしては、やはりシリマと比較してしまいます。音楽のスタイルはやや異なりますが、どちらも早逝である事、シンプルで素敵な作品、心に響く歌声です。

意外と両者が比較される事は無いのですが、どちらかが好きな方であれば、聴いてみて損は無いと思います。
CDで聴いていても力感や鮮度は素晴らしいと思っていましたが、レコードは暗騒音がちゃんとわかります。
レコードでここまで厚みと静けさを両立できる作品は貴重です。
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