【測定データで比較】オーディオ電源ノイズ対策|「音痩せ」しないフィルターの賢い使い方

ノイズフィルターの効果を測定

「どうも音がクリアに聴こえない」「音楽の躍動感が足りない」。その原因は、部屋のコンセントに繋がれた家電製品が発する電源ノイズかもしれません。

電源ノイズ対策として有効な「ノイズフィルター」ですが、「使うと音が痩せる」といった副作用を心配する声も少なくありません。

この記事では、高価なオーディオ専用品ではなく、手軽に入手できる汎用フィルターを使い、音質を劣化させずに最大の効果を得るための「正しい使い方」を解説します。専用測定器による客観的なデータで、本当に効果のある製品とその設置場所を明らかにしていきましょう。

この記事で分かること

  • 「音痩せ」しないノイズフィルターの正しい使い方
  • 【結論】ノイズ源対策におすすめのフィルター2選とその根拠
  • 6製品のノイズ除去効果を測定データで比較
  • 電源・アース対策との関係性と、改善の次の一手
目次

【結論】音痩せさせずにノイズ対策するなら、この2つのフィルター

オーディオの音質を損なわずに電源環境を改善する基本は、「ノイズはオーディオ機器ではなく、その発生源で断つ」ことです。

この考え方に基づき6製品を比較検証した結果、特に「ノイズ源対策」として効果が高く、自信を持っておすすめできるのは以下の2製品です。

あらゆる家電に ー Greenwave Dirty Electricity Filter

あらゆる家電のノイズ源を強力に断つ、対策の基本となる最優先フィルター。

4個以上買う場合はオフィシャルで購入がお得です

デジタル機器に ー コトヴェール SFU-005-3P

音質への副作用を抑えつつPC等のデジタル機器を静かにさせる、バランスに優れた優等生。

アースピン着脱可能 コモンモードノイズ対策できる貴重な製品

【基本原則】オーディオの音を損なわない、ノイズ対策の鉄則

メリット ー 電源ラインのノイズを低減する

ノイズフィルターの基本的な役割は、コンセントから供給される電源に乗っている高周波ノイズを、内部のフィルター回路で除去することです。これにより、オーディオ機器がよりクリーンな電源で動作できるようになり、S/Nの向上などが期待できます。

注意点 ー 音楽のエネルギー感を損なう可能性

一方で、フィルターの設計によっては、不要なノイズだけでなく、オーディオにとって重要な音楽の躍動感やエネルギー感まで削いでしまう可能性があります。これが、フィルターをオーディオシステムに直接接続した際に「音が痩せた」「つまらなくなった」と感じる原因です。

そのため、最も安全で効果的なのは、オーディオシステム自体にフィルターを使うのではなく、システムに悪影響を与えるノイズの発生源(エアコン、冷蔵庫、PCなど)のコンセントにフィルターを設置し、電源ライン全体をクリーンにすることです。

【測定比較】全6製品のノイズ除去効果をデータで見る

検証環境と測定方法

電源ノイズを可視化するため、「Entech Noise Analyzer」という測定器を使用します。


画像

この測定器は、米国のオーディオアクセサリーメーカーShunyata Research社がデモで使用していたことでも知られています。現在は廃盤ですが、フィルターの有無によるノイズの相対的な変化を比較するのに適しています。

現在入手できるノイズ測定器はGreenWaveがおすすめ

新品で購入できるノイズ測定器としては、GreenWaveのEMIメーターがあります。

本国の公式サイトで買うのが一番安いです

具体的な測定手順

今回はオーディオシステムとは無関係の部屋にある、未対策のコンセントを使って実験します。

STEP
まず、何もしていない状態でノイズの数字を100前後に合わせます。

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STEP
次に各ノイズフィルター接続し、接続前の値と比較します。
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今回検証に使った6機種

ノイズフィルター 測定結果比較表

スクロールできます
製品
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Panasonic
BL-PST15
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サンワサプライ
KT-180

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コトヴェール
SFU-005-3P

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TDK
ANF-106
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Greenwave
Dirty Electricity Filter


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Audio Prism
Quiet Line
測定値96.674.710.16.65.45.3
入力数12111-
サージプロテクト無し有り有り無し無し-
定格1500WAC125V・15A
1500W
5A
125V
6A
125VAC
AC120V・15A-
備考アースピン着脱可能
コモンモードノイズ対策
2P/3P仕様選択可能
購入 Amazon Amazon Amazon 廃盤 Amazon 廃盤
ノイズフィルター比較表

【製品別レビュー】各ノイズフィルターの測定結果と特徴

ここからのレビューは、あくまで私の環境での測定結果と主観的な試聴感に基づくものです。ノイズフィルターの効果は、ご家庭の電源環境によって大きく変動する可能性があることをご了承ください。

Panasonic - PLC用ノイズフィルター BL-PST15

測定結果96.6
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PLC(電力線通信)の信号を減衰させないための製品であり、オーディオ帯域のノイズ除去を主目的とはしていません。測定結果は誤差の範囲内で、効果は限定的です。定格1500Wまで対応しているため、様々な家電に安心して使えます。

ELECOM - 電源タップ雷サージ対応 KT-180

測定結果74.7
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雷サージ防護を主目的とした製品ですが、一定のノイズ除去効果も確認できました。左右から2口給電できるため、扇風機や除湿器など、オーディオ以外の一般的な家電周りで重宝します。

コトヴェール - ノイズ・雷サージプロテクタ SFU-005-3P

測定結果10.1

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古くから定評のある製品で、測定値も大幅に改善しました。3PIN接続時にはアース経経由のコモンモードノイズにも効果があるのが大きな特徴です。音質への副作用が比較的少ないため、PCやルーターなどオーディオシステムに近い場所での対策に向いています。ただし、定格が5Aと低いため、消費電力の大きい機器には使えません。

コトヴェール - SFU-005-3P
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総合評価
( 4.5 )
メリット
  • 多用途性:3PIN/2PINどちらでも使用可能
  • コモンモードノイズ低減:3PIN接続時に効果を発揮
  • 幅広い用途:オーディオ機器から家電製品まで使用可能
  • 音質向上:S/N比の改善、クリアネスの向上を実現
  • 副作用が少ない:オーディオ用途でも安心して使用可能
  • サージプロテクト機能:雷などによる急激な電圧上昇から機器を保護
デメリット
  • 電流容量:5Aまでの対応で、大型機器には不向き
  • ノイズ発生:大電力のスイッチング電源機器接続時に本体が唸る可能性
  • 効果の個人差:使用環境や接続機器によって効果に差が出る可能性

確かに変化あり

音質面の効果が感じられなくても雷サージ対策なり何かしら使えるかと試しに購入、
アナログアンプ(iFi pro iCAN)用として電源タップ-ACアダプタ間に追加してみた
型落ちの付属品とはいえ元々ローノイズ電源なのでどうかな?と思っていたが、体感できる位に変化はあり
プラシーボも多少あるかもしれないが籠り感が減り、膜が1枚剥けたようなクリアネスの向上を感じる
あまり沼に嵌りたくはないが、DAC用にもう1台は買っておこうかなと思う

Amazonより引用

抜群の効果

プリメインアンプ用のオーディオ用電源タップと壁コンセントの間に挟んで使用。

ボリュームを普段では不必要なほど上げてみると流石にノイズが乗るがそれでも十分過ぎるほどに静か。

既に割とクリーンだと思っていた音の薄い皮が一枚剥けたかのよう。結果的にフラット、何の装飾もない裸のままの音源がスピーカーから出てくる印象。

アンプのクセだと思っていた音色傾向はどうやらノイズによる解像度の低下によるものだったらしい。以前より立ち上がりがよくクリーンに音楽が鳴った。聴き飽きない素直な音である。

地味だが確実に良好な変化があり、それなりのアクセサリーを揃えて最後の切り札的に導入するとかなりの効果を得られると思う。

・・・・・・・・・・・・・

追加

使用し始めて二ヶ月ほど。
ふとしたことから電源タップを介さず
プリメインアンプから直接このプロテクタに電源を刺し音を出してみた。

結果的に電源タップに使用した時と比較にならないほどの低域の量感と突き抜けるように広がる音場、音源が見違えるほどの豹変であった。

特に内臓DACから出力するデジタル音源に効果テキメンで、耳に刺さる帯域のピーク感がなくなり繊細で音の輪郭や空気感が弾けんばかりに鳴っている。ハイエンドではないにしろ、それなりの環境で聴いているつもりだったがまだ聴こえていなかった音に気付かされる。しかし耳は以前より疲れない。

アンプのポテンシャルがフルに発揮され爆音まで行かずともスピーカーが朗々と鳴る圧を感じられ、その様はまるで伸び伸びとベストコンディションを維持しているアスリートのよう。

アンプの買い替えを検討している方には是非とも一度試していただきたい。いまいち効果が実感出来ない方もアンプから直で電源につないでみて欲しい。
Amazonより引用

アースピン着脱可能 コモンモードノイズ対策できる貴重な製品

TDK - ノイズフィルタ ANF-106

測定結果6.6
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廃盤ですが、中古市場で入手可能です。ノイズ除去能力は高いものの、オーディオに使うと音楽の情報量まで削いでしまう印象があります。PCやルーター、電話機などをまとめているタップの大元に使用するのが適しています。定格が6Aのため、消費電力の大きなTVなどには向きません。

Greenwave - Dirty Electricity Filter

測定結果5.4
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ノイズ測定器も販売するメーカーの製品だけあり、測定値は非常に優秀です。ノイズ除去能力が高いことに加え、耐電流も15Aと大きいため、100Vのエアコンや大型冷蔵庫に使えるのが最大のメリットです。ただし、効果が強力な分、オーディオ機器に直接使うと音痩せを感じやすいため、ノイズの発生源となっている家電に使うのが最も効果的です。

Greenwave - Dirty Electricity Filter
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総合評価
( 4.5 )
メリット
  • 高性能なEMIフィルター技術:建物の配線に存在する汚れた電気のレベルを効果的に低減
  • オーディオ性能の向上:S/N比、全域のクリアさ、音場の立体感が改善
  • 使いやすさ:コンセントに差し込むだけで即効性のある効果を得られる
  • 多用途性:オーディオ機器だけでなく、家電製品全般に使用可能
  • 高い耐電流性能:100Vのエアコンなど、大電流を必要とする機器にも使用可能
  • 安全性:UL認証済み、RoHS準拠で有害物質を含まない
デメリット
  • コモンモードノイズへの対応:現状では効果が限定的な可能性がある
  • 価格と入手性:本国からの直接購入が推奨され、関税も発生する

オーディオ用 ノイズカットに素晴らしい効果

直接これから電源を取るのも良いですが、挿したコンセントでノーマルノイズが上がるか下がるかを測り、下がるところに複数を家でさすのが効果的です。(中にはノイズが上がるコンセントもあります)

ハイエンドと呼べるオーディオシステムで直接的なノイズカットも導入して音楽を聴いていますが、Greenwaveを1,2Fのコンセントに使い、オーディオのS/N、全域のクリアさ、音場の立体感が明らかに良くなりました。(直接挿しているのは冷蔵庫のみです)
Amazonより引用

4個以上買う場合はオフィシャルで購入がお得です

Audio Prism - Quiet Line

測定結果5.3
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空きコンセントに挿すタイプの先駆け的製品です。測定値は最も優秀でしたが、これもオーディオシステムに直接使うよりは、PCやホットカーペットなど、ノイズを発生させている家電製品の近くの空きコンセントに使うのが適しています。

より万全を期すために ー アース・電源アダプター対策

ノイズフィルターは強力なツールですが、それだけで全てが解決するわけではありません。より良い音を目指すなら、他の電源対策と組み合わせることで、相乗効果が期待できます。

クリーン電源の種類と特徴

今回紹介した製品は、すべて「フィルター方式」に分類されます。クリーン電源には他にも種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。

フィルター方式

電源に乗ったノイズをフィルターで除去する方式です。ノイズ除去効果が高い反面、音楽に必要なエネルギー感まで削いでしまう可能性があるため、オーディオ機器以外(ノイズの発生源)に使うのがおすすめです。

ノイズを取ることで雑味の無い静かな音になる。音場は広がりやすい。

必要な音楽情報まで無くなってしまう場合もある。音が痩せやすい。

リジェネレーター方式

一度交流を直流に変換し、再度きれいな交流波形を再生成する方式です。波形はきれいになりますが、ノイズ除去能力は限定的で、測定上はノイズが増えることもあります。

電源の波形がきれいになる。力感が出やすい。映像機器にも効果大(明るくなる)

ノイズ除去効果はない。測定すると悪化しているケースが多い。音場は狭くなることが多い。

バッテリー方式

バッテリーからの給電で、電源環境から完全に独立できるのが最大のメリットです。ただし、インバーターノイズの発生や、バッテリー残量による電圧変動などの注意点もあります。

独立しているため、他の電源環境の影響を受けない。

インバーターノイズが音に影響することも。バッテリーの消耗があり、残量が減ると出力電圧が下がりやすい。

すべての基本となる「アース接続」

電源ノイズとアースは密接に関係しています。正しいアースの考え方と、ご自身の環境でアースが有効かを試すための実践的な手順を、以下の記事で詳しく解説しています。

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電源アダプター自体の質を高める「GaN電源」

オーディオ機器、特にUSB-DACやネットワークハブなどのデジタル機器に付属するACアダプターは、それ自体が大きなノイズ源です。これを、スイッチングノイズが少ない「GaN(窒化ガリウム)採用アダプター」に交換するだけで、音質が改善する場合があります。

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まとめ

オーディオの電源ノイズ対策の基本は、オーディオシステム自体にフィルターを追加するのではなく、ノイズの発生源となっている家電製品に対策することです。

まずは「Greenwave」でエアコンや冷蔵庫といった大元のノイズ源を抑え、必要に応じて「コトヴェール」でPC周りなどを補助的に対策する。そして、さらに上を目指すなら、GaN電源やアースといった、より根本的な改善にも取り組んでみてください。

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