
オーディオの音質を左右する、電源ノイズ。その対策として有効な「ノイズフィルター」ですが、高価なオーディオ専用品でなくても、効果を得られるかを検証します。
この記事では、オーディオ専門メーカーの高価な製品ではなく、比較的手軽に入手できる汎用的なノイズフィルターを使い、音質への副作用を避けつつ、最大の効果を得るための「賢い使い方」を、測定器による客観的なデータと共に紹介します。
この記事で分かること
- ノイズフィルターのメリットと、オーディオにおける注意点
- 結論:ノイズ源対策におすすめのフィルター2選
- 6製品のノイズ除去効果の比較データ
- 関連する電源・アース対策の全体像
ノイズフィルターのメリットと、オーディオにおける注意点
まず、ノイズフィルターがどのようなもので、オーディオに使う際に何を注意すべきかを解説します。
メリット ー 電源ラインのノイズを低減する
ノイズフィルターの基本的な役割は、コンセントから供給される電源に乗っている高周波ノイズを、内部のフィルター回路で除去することです。これにより、オーディオ機器がよりクリーンな電源で動作できるようになり、S/Nの向上などが期待できます。
注意点 ー 音楽のエネルギー感を損なう可能性
一方で、フィルターの設計によっては、不要なノイズだけでなく、オーディオにとって重要な音楽の躍動感やエネルギー感まで削いでしまう可能性があります。これが、フィルターをオーディオシステムに直接接続した際に「音が痩せた」「つまらなくなった」と感じる原因です。
そのため、最も安全で効果的なのは、オーディオシステム自体にフィルターを使うのではなく、システムに悪影響を与えるノイズの発生源(エアコン、冷蔵庫、PCなど)のコンセントにフィルターを設置し、電源ライン全体をクリーンにすることです。
【結論】ノイズ発生源対策におすすめのフィルターはこの2つ!
この「ノイズは発生源で断つ」という考え方に基づき、6製品を比較検証した結果、特に「ノイズ源対策」として効果が高く、おすすめできるのは以下の2製品です。
あらゆる家電に使える万能選手 ー Greenwave Dirty Electricity Filter
圧倒的なノイズ除去能力と、エアコンのような大電流機器にも使える高い耐久性が魅力です。まずはこの製品を、ご家庭で最もノイズを発しているであろう家電(インバーター式のエアコンや冷蔵庫など)に試してみるのがおすすめです。200Vの製品には対応していませんので、エアコンに使う際は注意してください。
この製品はオーディオ機器に使うと、音痩せなどのデメリットが大きいと感じました。

副作用の少なさが魅力の優等生 ー コトヴェール SFU-005-3P
5Aまでしか対応していないため、エアコンや高性能PCには使えませんが、ノイズ除去能力と音質への副作用の少なさのバランスが非常に良い製品です。PC周辺やルーターといった、オーディオシステムに比較的近い場所にあるデジタル機器のノイズ対策に向いています。特筆すべきは、アースラインから混入するコモンモードノイズにも効果がある点で、システム全体のS/N向上に補助的に貢献します。
副作用が少ないため、やむを得ずオーディオシステムに近い機器(PCやルーターなど)に使う場合でも、比較的安心して選択できます。また、アースピンの着脱が可能なので、アースの有無をチェックするのにも有効です。

今回の検証環境と測定方法
ここからは、今回の比較検証の前提となる、測定環境と具体的な方法について解説します。
電源ノイズ測定器について
電源ノイズを可視化するために、今回は「Entech Noise Analyzer」という測定器を使用しました。
この製品は既に廃盤ですが、感度調整ができるため、絶対的なノイズ量ではなく、フィルターの有無による相対的な変化を比較するのに適しています。
米国のShunyata Researchがデモで使っていた記事を見て興味を持ちました。
参考: Florida 2019: The Shunyata Research Noise Reduction Experiment
リンク先でも書かれている通り、Entechは既に廃業していますので、このテスターは新品で購入できません。
古い製品ですが、一定の評価基準にはなると思います。
現在入手できるノイズ測定器はGreenWaveがおすすめ
新品で購入できるノイズ測定器としては、GreenWaveのEMIメーターがあります。
具体的な測定手順
オーディオ機器に給電しているコンセントは全てノイズ対策済みのため、まったく関係ない部屋のコンセントを使って実験します。

ノイズフィルター6製品の効果 測定結果比較表
製品 | ![]() Panasonic BL-PST15 | ![]() サンワサプライ KT-180 | ![]() コトヴェール SFU-005-3P | ![]() TDK ANF-106 | ![]() Greenwave Dirty Electricity Filter | ![]() Audio Prism Quiet Line |
---|---|---|---|---|---|---|
測定値 | 96.6 | 74.7 | 10.1 | 6.6 | 5.4 | 5.3 |
入力数 | 1 | 2 | 1 | 1 | 1 | - |
サージプロテクト | 無し | 有り | 有り | 無し | 無し | - |
定格 | 1500W | AC125V・15A 1500W | 5A 125V | 6A 125VAC | AC120V・15A | - |
備考 | アースピン着脱可能 コモンモードノイズ対策 | 2P/3P仕様選択可能 | ||||
購入 | Amazon | Amazon | Amazon | 廃盤 | Amazon | 廃盤 |
各ノイズフィルターの測定結果と特徴について
あくまでもEntech Noise Analyzerを私の家で計測した結果であり、この結果がノイズフィルターの優越を決めるものではありません。参考値としてご覧ください。
Panasonic - PLC用ノイズフィルター BL-PST15
測定結果96.6

普段はコードレス掃除機の充電器、寝室のスマホ充電器などに使用。
今回の測定結果は誤差の範囲内で気休め程度ですが、定格1500Wまで対応しているので、以前は100Vのエアコンにも使用してました。
ELECOM - 電源タップ雷サージ対応 KT-180
測定結果74.7

左右から2口給電でき、サージ対策もできるので重宝します。
扇風機や、除湿器、その他オーディオ以外の家電系にはこれを大量使用しています。
コトヴェール - ノイズ・雷サージプロテクタ SFU-005-3P
測定結果10.1

古くからオーディオでも使えるノイズフィルターとして一部では定評のある製品です。
特徴としては、3PIN/2PINどちらでも使用ができ、3PIN接続時はコモンモードノイズの低減ができることです。
我が家は、オーディオコンセントのアースは独立していないので、他の家電のアースの影響を低減するために、1F/2Fの便座のウオッシュレット、冷蔵庫は本製品を通じてアースを接続しています。
また、オーディオ用でも比較的副作用が少ないと思います。
サージプロテクト機能もあり。
欠点は5Aまでしか対応していないこと、スイッチングの比較的大きい電力の製品をつなぐと、本体が唸ることです。

- 多用途性:3PIN/2PINどちらでも使用可能
- コモンモードノイズ低減:3PIN接続時に効果を発揮
- 幅広い用途:オーディオ機器から家電製品まで使用可能
- 音質向上:S/N比の改善、クリアネスの向上を実現
- 副作用が少ない:オーディオ用途でも安心して使用可能
- サージプロテクト機能:雷などによる急激な電圧上昇から機器を保護
- 電流容量:5Aまでの対応で、大型機器には不向き
- ノイズ発生:大電力のスイッチング電源機器接続時に本体が唸る可能性
- 効果の個人差:使用環境や接続機器によって効果に差が出る可能性
確かに変化あり
音質面の効果が感じられなくても雷サージ対策なり何かしら使えるかと試しに購入、
アナログアンプ(iFi pro iCAN)用として電源タップ-ACアダプタ間に追加してみた
型落ちの付属品とはいえ元々ローノイズ電源なのでどうかな?と思っていたが、体感できる位に変化はあり
プラシーボも多少あるかもしれないが籠り感が減り、膜が1枚剥けたようなクリアネスの向上を感じる
あまり沼に嵌りたくはないが、DAC用にもう1台は買っておこうかなと思う
抜群の効果
プリメインアンプ用のオーディオ用電源タップと壁コンセントの間に挟んで使用。
ボリュームを普段では不必要なほど上げてみると流石にノイズが乗るがそれでも十分過ぎるほどに静か。
既に割とクリーンだと思っていた音の薄い皮が一枚剥けたかのよう。結果的にフラット、何の装飾もない裸のままの音源がスピーカーから出てくる印象。
アンプのクセだと思っていた音色傾向はどうやらノイズによる解像度の低下によるものだったらしい。以前より立ち上がりがよくクリーンに音楽が鳴った。聴き飽きない素直な音である。
地味だが確実に良好な変化があり、それなりのアクセサリーを揃えて最後の切り札的に導入するとかなりの効果を得られると思う。
・・・・・・・・・・・・・
追加
使用し始めて二ヶ月ほど。
ふとしたことから電源タップを介さず
プリメインアンプから直接このプロテクタに電源を刺し音を出してみた。
結果的に電源タップに使用した時と比較にならないほどの低域の量感と突き抜けるように広がる音場、音源が見違えるほどの豹変であった。
特に内臓DACから出力するデジタル音源に効果テキメンで、耳に刺さる帯域のピーク感がなくなり繊細で音の輪郭や空気感が弾けんばかりに鳴っている。ハイエンドではないにしろ、それなりの環境で聴いているつもりだったがまだ聴こえていなかった音に気付かされる。しかし耳は以前より疲れない。
アンプのポテンシャルがフルに発揮され爆音まで行かずともスピーカーが朗々と鳴る圧を感じられ、その様はまるで伸び伸びとベストコンディションを維持しているアスリートのよう。
アンプの買い替えを検討している方には是非とも一度試していただきたい。いまいち効果が実感出来ない方もアンプから直で電源につないでみて欲しい。
Amazonより引用

TDK - ノイズフィルタ ANF-106
測定結果6.6

かなり古い製品ですが、ヤフオクやメルカリなどで入手できます。
ノイズ除去能力は高いと思いますが、オーディオに使うと情報量まで削がれる感じがします。
TV関係をつないでいるタップ、パソコン系のタップ、ルーターや電話機のあるタップなどの大元に使用しています。
この製品も6Aまでしか対応していませんので、消費電力の大きなTVには向きません。
Greenwave - Dirty Electricity Filter
測定結果5.4

Greenwaveは、Entechと同様ノイズ測定器を出している会社です。
そして、自社でノイズフィルターも販売しています。
"当社のノイズフィルターを使うと、こんなにノイズが減りますよ。"
と分かりやすい販売スタイルです。
同じ会社の測定器で良い結果が出るのは当たり前ですが、Entechの測定器でもノイズが減るのを確認できました。
Dirty Electricity Filterは、本国から直販で買うのが安いです。
4個単位で送料が上がるシステムなので、4個とか8個買うのがお得です。
表示されている送料のほかに、関税が発生します。
2PINタイプと3PINタイプがあり、違いはアースピンの有無だけだと思います。
記載が無いので確証は持てませんが、感覚的にコモンモードノイズに対しては効果が無いように感じます。
ただ、ノイズ除去能力が高いことに加えて、耐電流も大きいので100Vのエアコンに使えるのはメリットが大きいです。
私はエアコン2つ、洗濯機、NAS用の12V 12.5Aのスイッチング電源に使っています。
オーディオ用には効き過ぎる感じがありますが、オーディオ以外に使った時の塩梅が丁度よいです。
自宅はオーディオ用は別分電盤にしてそこにもノイズ対策しています。
それでもはっきりわかる効果を感じました。

- 高性能なEMIフィルター技術:建物の配線に存在する汚れた電気のレベルを効果的に低減
- オーディオ性能の向上:S/N比、全域のクリアさ、音場の立体感が改善
- 使いやすさ:コンセントに差し込むだけで即効性のある効果を得られる
- 多用途性:オーディオ機器だけでなく、家電製品全般に使用可能
- 高い耐電流性能:100Vのエアコンなど、大電流を必要とする機器にも使用可能
- 安全性:UL認証済み、RoHS準拠で有害物質を含まない
- コモンモードノイズへの対応:現状では効果が限定的な可能性がある
- 価格と入手性:本国からの直接購入が推奨され、関税も発生する
オーディオ用 ノイズカットに素晴らしい効果
直接これから電源を取るのも良いですが、挿したコンセントでノーマルノイズが上がるか下がるかを測り、下がるところに複数を家でさすのが効果的です。(中にはノイズが上がるコンセントもあります)
ハイエンドと呼べるオーディオシステムで直接的なノイズカットも導入して音楽を聴いていますが、Greenwaveを1,2Fのコンセントに使い、オーディオのS/N、全域のクリアさ、音場の立体感が明らかに良くなりました。(直接挿しているのは冷蔵庫のみです)
Amazonより引用

Audio Prism - Quiet Line
測定結果5.3

空きコンセントに刺すノイズフィルターの先駆け的製品です。
オーディオ機器よりも、ホットカーペットとか、パソコンとかノイズの発生源に使う方が吉の製品です。
我が家では出番が無くて、使っていない部屋の空きコンセントに刺しています。
クリーン電源の種類と特徴
今回紹介した製品は、すべて「フィルター方式」に分類されます。クリーン電源には他にも種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
フィルター方式
Entech Noise Analyzerなどノイズを数字化する測定器は、ノイズ量を見ているので、フィルタータイプの効果を確認するのに適しています。今回比較している製品はすべてフィルター方式です。
電源に乗ったノイズをフィルターで除去する方式です。ノイズ除去効果が高い反面、音楽に必要なエネルギー感まで削いでしまう可能性があるため、オーディオ機器以外(ノイズの発生源)に使うのがおすすめです。
リジェネレーター方式
リジェネレーター式は、電源の波形測定で違いがわかります。
一度交流を直流に変換し、再度きれいな交流波形を再生成する方式です。波形はきれいになりますが、ノイズ除去能力は限定的で、測定上はノイズが増えることが多い。
バッテリー方式
バッテリーからの給電で、電源環境から完全に独立できるのが最大のメリットです。ただし、インバーターノイズの発生や、バッテリー残量による電圧変動などの注意点もあります。
電源・アース対策の全体像
電源ノイズフィルターは、オーディオの音質を改善するための強力なツールの一つですが、それだけで全てが解決するわけではありません。より根本的な対策として、電源そのものの質や、アースの取り方も非常に重要です。
電源アダプター自体の質を高める「GaN電源」
オーディオ機器、特にUSB-DACやネットワークハブなどのデジタル機器に付属するACアダプターは、それ自体が大きなノイズ源になっています。これを、スイッチングノイズが少ない「GaN(窒化ガリウム)採用アダプター」に交換するだけで、音質が改善する場合があります。

すべての基本となる「アース接続」
電源ノイズとアースは、密接に関係しています。正しいアースの考え方と、ご自身の環境でアースは有効かを試すための実践的な手順を、以下の記事で詳しく解説しています。

アースライン専用のノイズ対策
もしアースを接続する場合、そのアースライン自体が拾ってしまうノイズを低減するための、専用フィルターも存在します。アースをさらにクリーンにするための、最後の一手です。

まとめ
オーディオの電源ノイズ対策の基本は、オーディオシステム自体にフィルターを追加するのではなく、ノイズの発生源となっている家電製品に対策することです。
まずは「Greenwave」でエアコンや冷蔵庫といった大元のノイズ源を抑え、必要に応じて「コトヴェール」でPC周りなどを補助的に対策する。そして、さらに上を目指すなら、GaN電源やアースといった、より根本的な改善にも取り組んでみてください。
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