42歳の若さでこの世を去った天才ピアニスト、ジュリアス・カッチェンが遺した、最後のスタジオ録音です。デッカに残したカッチェンの協奏曲は多分全部持っていますが、その中でも思い入れの強い作品の1つです。
Julius Katchen - Prokofiev: Piano Concerto No. 3, Gershwin: Rhapsody in Blue, Ravel: Concerto for Left Hand
Decca - SXL 6411

このアルバムに収められているのは、20世紀を代表する3つのピアノ協奏曲です。
ピアノがジュリアス・カッチェン、指揮は同じく夭折したハンガリーの巨匠イシュトヴァン・ケルテス、そしてロンドン交響楽団という、理想的な布陣です。
録音は1968年11月、ロンドンのキングスウェイ・ホールにて行われました。
プロデューサーはレイ・ミンシャル、そしてエンジニアには「デッカ・サウンド」の伝説的立役者であるケネス・ウィルキンソンとアレック・ロズナーが名を連ねています。
この録音からわずか5ヶ月後、カッチェンは癌により帰らぬ人となり、このLPは彼の死後、1970年5月にリリースされました。
英デッカのラージバンド、いわゆるED3が初出です。
手元のレコードはED3で、マトリクスは2W/2W。
CDは、Deccaの50枚組ボックス・セットのものを愛聴していました。
A面にプロコフィエフの3番を、B面にガーシュウィンとラヴェルの左手が収録されています。
個人的にはラヴェルは2つの協奏曲を1枚にまとめて欲しかったと思います。この左手もフランソワと並んで愛聴しておりますが、それ以上にプロコフィエフが素晴らしいです。CDでも良く聴いていましたが、LPは別演奏かと思うくらい圧倒的な存在感があります。
プロコフィエフの3番は、個人的にこのレコードを1番手として推薦したいです。
音の鮮度、音場の広さ、そして熱量を感じます。とても癌を患っていたとは思えないような生命力あふれる力強い演奏です。
B面のラプソディ・イン・ブルーも、カッチェンの躍動感あふれる演奏スタイルと相性のよい曲だと思います。
所有している作品だけでも、アンセルメ、ショルティ、ケルテス、フェレンチク、ガンバ、ボールト、アルヘンタなどと競演しています。曲のレパートリーも非常に豊富で、どれも情熱的、躍動感のある演奏です。

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