Julius Katchen - Encores

アメリカ出身のピアニスト、Julius Katchenは1946年にパリへ移住し、Deccaの専属アーティストとして膨大な録音を残しました。

とりわけブラームスのソロピアノ作品全集は高い評価を受けていますが、42歳での早世により、その活動は1960年代末で途絶えています。本盤「Encores」は、技巧と詩情の両面を一枚で味わえるアルバムです。

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Julius Katchen - Encores

Decca - SXL 2293

SXL2293

1961年6月、ロンドンのDecca West Hampstead Studio 1で録音されたピアノ小品集です。

エンジニアはKenneth Wilkinsonが担当しました。バッハ「主よ、人の望みの喜びよ」(Myra Hess編)に始まり、ブラームス「ラプソディ第2番」、ベートーヴェン「悲愴」第2楽章、リスト「ハンガリー狂詩曲第12番」、メンデルスゾーン、ショパン、そしてファリャ「火祭りの踊り」まで、時代も国も異なる作曲家の小品が並びます。

Katchenは、これらの多様な作品に対し驚くほどの集中力で没入していきます。華やかな技巧を見せる曲では情熱的なヴィルトゥオジティが全開になる一方、緩徐楽章では内面を深く見つめるような繊細さが際立ちます。実際、パリの自宅にはRichterが演奏を聴いて訪ねてきたというエピソードも伝わっており、同時代の巨匠をも惹きつけるピアニズムの説得力がこのアルバムにも存分に表れています。

Wilkinsonによる録音は、ピアノという楽器の持つ響きを余すところなく捉えています。

ハンマーが弦を打つ瞬間から、豊かな倍音が空間に溶けていくまでの過程が、生々しいリアリティをもって迫ってきます。ステレオ録音黄金期のDeccaが到達した水準を体感できる一枚であり、1961年の録音から60年以上が経過した現在でも、その音の鮮度は色褪せていません。

こちらは廉価版です。
Decca SPA110

SPA110

これはDeccaの廉価盤にあたるSPAシリーズです。SXLナローバンドと同じ小さい四角のロゴで、レーベル面が青いのが特徴です。

Decca SXL 2293は比較的手に入りにくい稀少盤ですが、その価値は十分にあります。

オリジナル盤との音質の差はありますが、もし廉価盤で見かけることがあれば、同じ内容を収録したDecca SPA 110も、この名演に触れる良い機会としておすすめです。

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