[EMI SLS 5045] ユーディ・メニューイン (Yehudi Menuhin) - バッハ: 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ (全曲)

20世紀を代表するヴァイオリニスト、ユーディ・メニューイン。

彼が遺した数多くの録音の中でも、バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータは特別な位置を占めています。本作は、1976年にリリースされたLPボックスですが、収録されているのは彼の芸術性が一つの頂点に達した1950年代後半のステレオ録音です。これは彼の3度にわたる全曲録音のうち、唯一のステレオ盤です。

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Yehudi Menuhin - Bach: Unaccompanied Violin Sonatas and Partitas

EMI - SLS 5045

SLS5045

このレコードのプロデューサーはジョン・モードラー (John Mordler)、エンジニアはネヴィル・ボイリング (Neville Boyling) が担当しました。1950年代後半の録音で、ヴァイオリンの質感がリアルに捉えられており、当時のEMIの録音技術の高さを物語っています。豊かで温かみのある響きの中に、メニューインの弓使いの細やかなニュアンスまで感じ取ることができます。

メニューインの演奏については、「神童」と呼ばれたキャリアの初期から、しばしばその基礎技術について様々な評価がなされてきました。確かに、ヘンリク・シェリング (Henryk Szeryng) のような構築的で非の打ちどころのない演奏や、ナタン・ミルシテイン (Nathan Milstein) のような気品と鋭い切れ味を求める方には、メニューインのバッハは異質に聴こえるかもしれません。技術的な完璧さで感心させるというよりは、聴き手の魂に直接語りかけてくるような、強い精神性がこの演奏の核となっています。

英国の権威ある音楽雑誌「Gramophone」は、この1950年代の録音を評して「極めてロマンティックなアプローチ」であると指摘しています。その言葉通り、メニューインのバッハは、楽曲の構造的な美しさよりも、むしろ人間的な感情の深さやドラマを重視した、主観的で情熱的な解釈が特徴です。一音一音に込められた深い思索と祈りのような響きは、聴く者に強烈な感動をもたらします。特に、シャコンヌの深い精神性や、フーガの複雑な声部の描き分けには、彼のバッハへの深い共感が表れています。

この作品に限らず、好みの演奏、録音ではありませんが…。

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