スピーカーはずっとブックシェルフを使っています。現在のスピーカーはVintage Joinのオリジナルで、ユニットに旧東ドイツのSchulz(シュルツ)社製KSP130Kを採用した密閉型フルレンジです。
スピーカースタンドはイタリアのSolidsteelで、天板はスピーカーに合わせて特注で作りました。
Schulz KSP130Kとは
Schulz Elektroakustik/Mechanikは、旧東ドイツ・ベルリンのスピーカーユニットメーカーです。民生品としては流通しておらず、放送局や録音スタジオ向けのモニター用ユニットを製造していました。
KSP130Kは同社の13cmフルレンジユニットで、1960年〜70年代に製造されたとされています。公称インピーダンスは5Ω、定格入力5W。テキスタイル製ダストキャップと耐久性の高いフォームサラウンドを備えた構造です。
このユニットを採用した製品として知られるのが、Heliradio(ヘリラジオ)社のスタジオモニター「K12」です。KSP130Kを1基搭載し、パッシブ版とアクティブ版(45Wアンプ内蔵)がありました。旧東ドイツのテレビ局などでモニタースピーカーとして使われていたようです。
Heli K12はユニットが内側に向くようわずかに傾斜して取り付けられており、パッシブ・イコライザーで高域と低域を持ち上げる仕様になっていたようです。
Heliradio製品はその工業デザインと技術史的な価値から、ライプツィヒのグラスィ工芸美術館やベルリンのドイツ放送博物館など、複数の博物館に収蔵されています。
このスピーカーに興味を持ったきっかけは、旧東ドイツのレコードレーベル「Eterna」のスタジオでSchulz社のスピーカーが使われていたという話を知ったことでした。確固たる写真や文献で確認できたわけではなく伝聞ですが、このサイトの名前「エテルナ825」も、Eternaレーベルと初期ステレオ盤の型番825XXXから取っています。自分が好きなレーベルのモニターだったかもしれないユニットで音楽を聴くというのは、それだけで楽しいものです。
音の特徴
フルレンジなのでレンジは広くありません。ただ高域の不足感はあまりなく、足りないのは深い低域のほうです。
このスピーカーの良さは、音の立ち上がりの速さにあります。
ネットワークを通さないフルレンジであることに加えて、再生中にユニットの前後のストロークが目視ではほとんど確認できません。経験上、コーンが大きく前後するタイプのスピーカーは低域が出る反面、音の立ち上がりが遅くなる傾向があります。KSP130Kはその逆で、低域は欲張れませんが、ピアノの打鍵音が素直に再現されるところが気に入っています。
密閉型にありがちな詰まった感じもなく、スーッと自然に音が出てきます。最近の金属系ユニットのような凝縮感のある速さとは違い、もっと軽やかな印象です。
もうひとつの美点は、小音量での再生品質が高いことです。能率が90dB以上あるので、小出力のパワーアンプとパッシブプリの組み合わせでも十分な音量が取れます。曲によってはボリューム1クリックでも大きく感じるくらいです。ストロークの小さなユニットは弱音時でも音の質が下がりにくく、夜間の小音量再生にも向いています。
ヴィンテージユニットの修理
エッジはフォームサラウンドの一種ですが、製造から数十年が経過した現在でも弾力を保っています。耐久性の面では心配していなかったのですが、使い続けるうちにピアノなどの特定の音源で微かなひずみが出るようになりました。
日中のほどほどの音量では気づかない程度です。夜中の静かな環境で小音量再生すると、打鍵の瞬間にカサカサという付帯音がつくのがわかりました。ユニットを軽く押すと一時的に治まるので、ボイスコイルのセンターズレだろうと判断しましたが、だましだまし使っていた時期がしばらくありました。
何社かスピーカーのリペア業者に打診したものの、海外のヴィンテージユニットということもあり「うちでは対応できません」という回答が続きました。そのなかで、長野県の吉田リペアサービスさんは「扱ったことはないが、一応診ます」と引き受けてくださいました。
先方の環境では症状が再現できなかったそうです。エンクロージャーや設置条件によって出たり出なかったりする微妙な症状だったため、細かい状況を伝えてやりとりを重ねました。
結果、片方のユニットでボイスコイルボビンのセンターズレと、一部のエッジの接着剥がれが確認されました。磁気回路のスリットとボビンのクリアランスに余裕がない状態で、わずかな条件の違いでボビンがスリットに接触していたとのことです。エッジを全周剥がしてセンタリング調整を行い、接着剥がれも修理してもらいました。
修理後は小音量時のひずみが完全に解消されています。ヴィンテージユニットの不調は「通常の音量では気づかないが、静かな環境で弱音を聴くとわかる」という微妙なケースもあるので、同じような症状で困っている方の参考になればと思います。
今まで使ってきたスピーカーのなかでおそらく一番安いモデルですが、一番気に入っています。壊れない限り使い続けると思います。

