東独エテルナのレコードは、820 001からスタートしますが、その前にLPMではじまる4ケタ台のレコードがいくつか存在します。
オリジナルは、西ドイツのドイツ・グラモフォンから、[LPM 18 196] として発売されました。今回紹介するレコード、[Eterna LPV 1014] は、その後に東ドイツでライセンス生産された盤です 。
1954年のモノラル録音ながら、その分厚い盤に刻まれた音は、聴き手を惹きつけて離さない特別な力を持っています。
David Oistrach - Tchaikovsky: Violin Concerto, Op.35
Eterna - LPV 1014

この歴史的録音は、1954年2月11日にドレスデンのルカ教会でセッションが行われました。
指揮は名匠フランツ・コンヴィチュニー (Franz Konwitschny)、管弦楽はシュターツカペレ・ドレスデン (Staatskapelle Dresden) が務めています。旧東ドイツ国営のEternaレーベルが制作し、録音エンジニアはハインリヒ・カイルホルツ (Heinrich Keilholz) が担当しました。
このレコードの物理的な特徴として、一般的な重量盤をもしのぐ「分厚さ」が挙げられます。盤の剛性が高く、反りにくいという物理的な安定感が、再生時のどっしりとした音の基礎を支えているのかもしれません。
この録音は、聴き手を作品の本質へまっすぐに導く力があります。当時46歳、まさに壮年期のオイストラフが聴かせるヴァイオリンは、完璧な技巧と燃えるような情熱、そして気品ある音色が奇跡的なバランスで共存しています。
コンヴィチュニー率いるシュターツカペレ・ドレスデンの、重厚で深みのある響きも聴き逃せません。独奏ヴァイオリンに寄り添いながらも、決して単なる伴奏に終わらない骨太な音楽作りが、この演奏に確固たる骨格を与えています。
チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲の録音は無数にありますが、この演奏に触れ、初めてこの曲が素晴らしいと思えました。後年のステレオ録音とは異なる、壮年期のオイストラフの「真剣勝負」の気迫に満ちています。
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