1980年にスウェーデンからひっそりとリリースされ、今なお音楽ファンを魅了し続ける一枚があります。それが、メタ・ルース & ニッペ・シルウェンズ・バンドによるセルフタイトルアルバム、通称「ホワイト・ディスク」です。
Meta Roos & Nippe Sylwens Band - Same
Click - LP-6580

彼らは1978年にも同名義のアルバムを発表しており、固有のアルバムタイトルを持たない作品が多いのが特徴です。これは、特定のコンセプトに縛られず、バンド名義で生み出される「サウンド」そのもので勝負したいという、彼らの音楽に対する確固たる自信の表れかもしれません。
本作の魅力は、まさしく「ジャズとポップスの良いとこどり」という点にあります。ジャズを基盤としながらも、ソウル、ファンク、そしてブラジリアン・ミュージックの要素までが溶け合ったサウンドは、洗練されていながらも実に心地よいです。様々な要素が見え隠れするこの感覚こそ、80年代という時代が持つ特有の空気感なのでしょう。
その中心にいるのが、ヴォーカリストのメタ・ルース (Meta Roos) と、キーボーディストのニッペ・シルウェン (Nippe Sylwén) です。国民的歌手であるメタのソウルフルで伸びやかな歌声と、ニッペが作り出す都会的なアレンジが、バンドのサウンドを唯一無二のものにしています。
アルバムの中でも特に輝きを放つのが、スティーヴィー・ワンダー (Stevie Wonder) の名曲カバー「ザ・リアル・シング (The Real Thing)」です。原曲の魅力を、疾走感あふれるブラジリアン・ジャズのアレンジで再構築したこの一曲は、クラブシーンでも人気があります。
この一曲だけでも本作を聴く価値は十分にありますが、ファンキーなベースラインが印象的な「オー・ミスター・ミュージック (Oh, Mr Music)」など、オリジナル曲のクオリティも非常に高いです。
フリーソウルやシティポップ、AORのファンであれば間違いなく心惹かれるであろう、北欧産ジャズ/ソウルの隠れた名盤。休日の午後に少し良い音で聴けば、きっとスウェーデンの爽やかな風が部屋を吹き抜けていくはずです。

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