[Kama Sutra KLP-8059] ジ・イノセンス (The Innocence)

1967年というロックが変革の只中にあった時代に、メインストリームとは少し離れたところで、無垢で美しいメロディを奏でたバンドがいました。

ソフトロックの名盤として知られるThe Innocenceの唯一の作品です。その正体は、60年代ポップスを影で支えた超一流のソングライター・チームでした。

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The Innocence – The Innocence

Kama Sutra – KLP-8059

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The Innocenceというグループの実体は、ピーター・アンダース (Peter Anders) とヴィニ・ポンシア (Vini Poncia) という二人のソングライターによるスタジオ・プロジェクトです。

彼らは60年代初頭から活動し、ザ・ロネッツ (The Ronettes) の「(The Best Part of) Breakin' Up」やザ・クリスタルズ (The Crystals) の楽曲を手掛けるなど、フィル・スペクター (Phil Spector) の下で数々の名曲を生み出した、いわば60年代ポップス黄金期を支えたヒット曲の職人でした。

そんな彼らが自身の名を冠してアルバムを制作したのが1967年。世は「サマー・オブ・ラブ」を迎え、サイケデリック・ロックがシーンを席巻していた時代です。しかし、このアルバムで聴けるのは、そうしたムーヴメントとは一線を画す、徹底的に磨き上げられたポップ・ミュージックの世界です。彼らがソングライターとして培ってきた経験のすべてが、この一枚に凝縮されていると言っても過言ではありません。

アルバム全体を貫くのは、陽光のように明るく洗練されたハーモニーと、巧妙に構築されたメロディライン。トップ40ヒットとなった「There's Got to Be a Word!」に代表される楽曲群は、一聴して耳に残るキャッチーさを持ちながら、フォークロックやボサノヴァ、モータウンといった多様な音楽要素がたくみに散りばめられ、聴き込むほどにそのアレンジの緻密さに驚かされます。

本作は、あくまで良質なポップスを作り続けるという職人の矜持が結晶化したアルバムです。アソシエイション (The Association) やスパンキー・アンド・アワ・ギャング (Spanky and Our Gang) といったサンシャイン・ポップ/ソフトロックを代表する1枚です。

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