1960年代後半、ロックがサイケデリックで実験的な方向へと大きく舵を切る中、ひときわ洗練された美しいハーモニーでチャートを席巻したグループがいました。それがソフトロックの代表格、アソシエイション (The Association) です。彼らが1968年に発表した4枚目のアルバム「Birthday」は、バンドの音楽的成熟と商業的成功が頂点に達した、キャリアを象徴する一枚です。
Association - Birthday
Warner Bros. Seven Arts Records - WS 1733

80年代のネオアコがバンド個々の力で名曲を生み出したのに対し、60年代のソフトロックは、プロデューサーやスタジオミュージシャンといったプロフェッショナルの力がサウンドに大きく影響していました。アソシエイションもまた、プロデューサーの手腕によってその才能を最大限に開花させたバンドです。
本作のプロデューサーであるボーンズ・ハウ (Bones Howe) は、メンバーが持つ卓越したボーカルワークを、緻密で洗練されたサウンドプロダクションで見事にまとめ上げました。
演奏には、当時のヒット曲制作に欠かせなかった伝説のスタジオミュージシャン集団「レッキング・クルー (The Wrecking Crew)」を起用。これにより、適度にビートの効いたリズムと、きらびやかで安定感抜群のアンサンブルが実現しました。この盤石なサウンドの上で、幾重にも重ねられた声のタペストリーが、聴く者を至福の瞬間へと誘います。
1968年にリリースされた本作は、アソシエイションに大きな成功をもたらしました。先行シングルとなった「Everything That Touches You」は全米チャート10位を記録。この曲は、彼らの代名詞である複雑なハーモニーと、壮大なストリングスアレンジが見事に融合した、まさにソフトロックの理想形とも呼べる名曲です。
しかし、本作の魅力は商業的な成功だけではありません。歌詞の世界観にも大きな深化が見られます。これまでの作品で多かったストレートなラブソングから一歩踏み出し、より内省的で、人生や愛について考察するようなテーマが取り入れられました。アルバムタイトル曲「Birthday」や、穏やかながらも芯の強さを感じさせる「Time for Livin'」など、楽曲全体が落ち着いたトーンで統一され、アルバムとしての完成度を一層高めています。
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