1970年代初頭、南米ベネズエラから世界へ向けて放たれた、鮮烈で新しい音楽の波がありました。
その名は「オンダ・ヌエバ(Onda Nueva - 新しい波)」。その創始者である音楽家アルデマーロ・ロメロが、コロンビア・レコードからリリースしたアルバムです。
Aldemaro Romero and His Onda Nueda
Columbia - KC 31253

アルデマーロ・ロメロはクラシックの素養を持ちながら、ジャズやラテン音楽など多様なジャンルで活躍したベネズエラの国民的英雄でした。
彼は1968年、自国の伝統的な3拍子の舞曲「ホローポ (Joropo)」を、ピアノ、ベース、ドラムというジャズの基本編成と、ボサノヴァの洗練されたハーモニーを用いて再構築するという、画期的な試みに成功します。これが「オンダ・ヌエバ」の誕生です。
この新しいサウンドは、国際的なムーブメントへと発展していきました。
本作は、まさにその国際的な注目の高まりの中で制作された、世界市場、特にアメリカを意識した戦略的な一枚です。特筆すべきは、プロデューサーにマイルス・デイヴィス (Miles Davis) の「カインド・オブ・ブルー」やデイヴ・ブルーベック (Dave Brubeck) の「タイム・アウト」を手掛けた伝説のプロデューサー、テオ・マセロ (Teo Macero) を迎えている点でしょう。
収録曲も「It's Impossible (Somos Novios)」や「And Still I Love Her (Carretera)」など、英語詞の楽曲が中心です。
洗練された都会的な響きと、南米大陸の風を感じさせる独特の浮遊感が特徴的です。便宜上、ソフトロックのカテゴリーに入れていますが、ボサノヴァとかラテン要素を上手く取り込みつつ、あくまでも軽くまとめている印象です。
今聴くと、ちょっとあざとい気もします。
CDは裏ジャケが、レコードのジャケットになっています。
ブリザ・ブラジレイラの同シリーズは、他にも同じように正面が小さいジャケで、裏面にオリジナルを配した作品がいくつかあります。この配置の趣旨が分かりませんが、内容は素晴らしい物ばかりです。
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