私が今まで使ってきたスピーカーは、すべてブックシェルフ型と言われる小型のタイプです。個人的にはトールボーイと呼ばれる細長いスピーカーがあまり好きではありません。低音の量感と引き換えに定位の良さを失ってしまう気がするからです。また、無駄に膨らむ低音であれば、潔く出ない方を好みます。
ブックシェルフスピーカーを鳴らす上で必然的に必要となるのが、スピーカースタンドです。これまで様々なスタンドを試してきましたが、その中でも特に個性的で、素晴らしい音楽体験をもたらしてくれたのが「Jodelica Tuning Stand」でした。
本記事では、このユニークなスピーカースタンド「ジョデリカチューニングスタンド」について、その特徴と音質、そして実際の使用感を解説します。
Jodelica Tuning Stand

Jodelica Tuning Standは、オーディオアクセサリーブランドとして知られるJODELICAが開発した日本製のスピーカースタンドです。華奢ともいえる細身のデザインが特徴で、一般的な「重くて剛性が高い」スタンドとは反対の思想です。
元々は、Penaudio (ペナウディオ)のCharismaというスピーカーを理想的に鳴らすためのスタンドとして設計されました。その優れた性能から、後に「Jodelica Tuning Stand」として他の小型スピーカー向けにも販売されるようになった経緯があります。
「無制振」と「メカニカルグラウンド」
このスタンドの最大の特徴は、その設計思想にあります。多くのスタンドが振動を抑え込む「制振」や「防振」を目指すのに対し、Jodelicaは真逆の「無制振」を掲げています。振動は無理に抑えず、積極的に受け流すという考え方です。
その思想を実現するのが「ワンポイント・メカニカル・グラウンド・コンストラクション」と呼ばれる独自の構造です。スピーカーから伝わる振動を、スタンドの特定の1点(中央のスパイク)に集中させ、そこから床へと効率的に逃がします。これにより、スピーカーキャビネットの不要な共振を防ぎ、スピーカー本来の響きを最大限に引き出します。
小音量時でもスタンドが盛大に振動するのを感じましたが、この「振動を受け流す」構造こそが、後述する広い音場空間を生み出す秘密です。
実際の音はどう変わるか?スピーカーの存在が消える感覚
私がこのスタンドを最も評価している点は、スピーカーの存在を簡単に消すことができる点です。まるでスピーカーがそこには無く、空間から直接音が湧き出てくるような、広大なサウンドステージを体験できました。
部屋を暗くすると、視覚的にも極細の支柱が見えにくくなり、スピーカーが浮いているように見ます。
「音が空間全体にふわりと柔らかく拡がる」「音の定位や奥行きなど細かい情報量が増える」傾向があります。反面、芯のある強い低音は出づらいです。
オーディオラックもそうですが、良い音のするものは組み立て式ではなく、溶接などで強固に一体化されたものが多いと感じます。このスタンドも分解できない溶接構造であり、設計思想が細部まで徹底されていることがわかります。
相性の良いスピーカーと注意点
このスタンドは、特に小型で、エンクロージャーの響きを活かす設計のスピーカーと非常に相性が良いです。例えば、LS3/5Aのような歴史的名機には最適でしょう。
私自身は、Focus Audio「model68」、Neumann 「KH120」、そしてSchulz 「KSP130K」といったスピーカーと組み合わせて、その効果を実感してきました。
注意すべきは耐荷重です。公称の耐荷重は10kgまでとされており、B&Wの805シリーズなど、重量級のブックシェルフスピーカーには使用できません。購入を検討する際は、必ずお持ちのスピーカーの重量を確認してください。
生産終了と今後の入手方法
残念ながら、このJodelica Tuning Standは、下請け工場の閉鎖により現在は製造を中止しています。メーカーによると、今のところ再生産の予定はないそうで、オーディオファンとしては非常に残念なニュースです。
そのため、現在このスタンドを入手するには、中古市場を探すほかありません。その独特なコンセプトと優れた性能から中古でも人気は高く、見つけたら早めに確保することをおすすめします。
まとめ ー 唯一無二のサウンドステージを描く名機
Jodelica Tuning Standは、単なる「スピーカーを置く台」ではありません。スピーカーの能力を最大限に引き出し、音楽の再生に積極的に関与します。その見た目の華奢さからは想像もつかないほど広大で、リアルな音場空間を生み出す力を持っています。
生産が終了してしまったことは本当に惜しまれますが、もし中古市場で見かける機会があれば、ぜひ一度そのサウンドを体験してみてください。スピーカースタンドの重要性が再確認できると思います。
現在は、Solidsteelに変更しました。

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