旧東ドイツの国営レーベル「エテルナ」において、ワルター・オルベルツ (Walter Olbertz) は特別な存在感を放つピアニストです。カール・ズスケ (Karl Suske) とのモーツァルトのヴァイオリンソナタをはじめとする数々の室内楽録音で、その知的で端正なピアニズムを披露してきました。
しかし、彼がストラヴィンスキーの作品を録音していた事実は、あまり知られていないかもしれません。
Walter Olbertz - Stravinsky: Concerto for Piano and Wind Instruments
Eterna - 825 566

初出はVステですが、所有しているものは、黒ラベルのフラット厚手盤。
このレコードは、1966年にライプツィヒのコングレスハレで録音されました。A面にはヴァーツラフ・ノイマン (Václav Neumann) 指揮、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 (Gewandhausorchester Leipzig) との共演による「ピアノと管楽器のための協奏曲」を、B面にはオルベルツの独奏で「イ長調のセレナード」と「ピアノ・ソナタ」が収録されています。
いずれもストラヴィンスキーが「新古典主義時代」に作曲した、古典的な形式美とモダンな感覚が融合したユニークな作品群です。
まずA面の協奏曲ですが、ピアノは過度に響きを伴わず、打楽器的な性格を鮮明に捉えており、オルベルツのタッチの正確さがダイレクトに伝わってきます。ノイマン率いるゲヴァントハウス管の響きも、重厚でありながら各楽器の輪郭は明瞭で、作品の持つバロック音楽のような厳格な構造を浮き彫りにしています。
オルベルツの演奏は、ハイドンのソナタ全集の録音でも聴かせた、構築的で冷静なアプローチがここでも貫かれています。
そして、このレコードの真価はB面のピアノ独奏にあります。
協奏曲同様、ピアノの質感をリアルに捉えた録音で、目の前で演奏しているかのような親密な響きが魅力です。
ストラヴィンスキーのピアノ曲は、一聴するとメロディーが捉えどころなく、不思議な印象を受けるかもしれません。しかし、古典派の作品を得意としたオルベルツの手にかかると、そのメカニカルなパッセージの中に、古典的なソナタ形式や舞曲のリズムが息づいていることが見えてきます。
彼の演奏は、これらの作品が単なる実験的な音楽ではなく、ベートーヴェンやハイドンから続くピアノ音楽の伝統の上に成り立っていることを、示しているように感じます。

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