[Audiofon 2008-2] アール・ワイルド (Earl Wild) - トランスクリプションの芸術 (The Art of the Transcription)

Audiofon – レーベル名からして良い音がしそうです。既にデジタル録音が珍しくない80年代のプレスですが、アナログ録音を好んでいたようです。ピアノ独奏の作品が中心です。

伝説的なピアニスト、伝説的なコンサートホール、そしてこだわり抜いた録音哲学。1981年11月1日、これら三位一体の奇跡がカーネギー・ホールで結実しました。二度と再現不可能な一夜の音楽体験を封じ込めた、歴史的なドキュメントです。

Earl Wild - The Art of the Transcription (Live from Carnegie Hall)

Audiofon - 2008-2

Audiofon 2008-2

本作は、20世紀最後のロマン派ヴィルトゥオーゾと称されたピアニスト、アール・ワイルドが「トランスクリプション(編曲作品)の芸術」と題して行ったリサイタルのライヴ録音です。

録音は1981年11月1日にニューヨークのカーネギー・ホール。プロデューサーはジュリアン・H・クリーガー、そしてエンジニアは高音質録音で名高いピーター・マクグラスが担当しています。

オリジナル盤は1982年にAudiofonレーベルからLPレコード(型番: 2008-2)としてリリースされ、純粋なアナログ録音・ミキシング・カッティング、名匠ボブ・ラディックによるマスタリングで、当時からオーディオファイルの間で大きな話題となりました。

手元にはLPとCDどちらもあります。
それぞれ2枚組です。

このレコードの最大の魅力は、その圧倒的な「実在感」です。広大な空間が眼前に広がり、ステージ中央に鎮座するボールドウィン製ピアノの響きが、まるで自分のためだけに奏でられているかのように感じられます。

これは、エンジニアのピーター・マクグラスが目指した「音楽が鳴っている空間そのものを捉える」という哲学の賜物でしょう。ピアノの直接音だけでなく、ホールの豊かな響きや空気の震えまでも見事に収録しており、過度な加工のないダイナミックレンジの広さは、聴く者を演奏の場へと瞬時に引き込みます。  

マクグラスの録音は、総じて空間の表現力が優れた物が多いですね。

レコードは当時デッドストックの未開封品を入手しましたが、残念ながらプチプチノイズが割と多かったです。この作品は、客席の咳払いなど周辺のノイズもそのまま録音していますので、レコードのノイズと録音ノイズのどちらかわからなくなる時があります。

CDはレコードのような実在感は減少しますが、弱音時の音数を確認するには最適です。
ハイエンドDACでも、この背景の音が塗りつぶされてしまう製品があります。

彼はリストの孫弟子にあたる系譜を持ち、このアルバムで披露されるトランスクリプションという芸術形式の正統な後継者でした。情緒や詩的な世界観とはまた違った1つの完成された世界を感じます。

完璧な技巧に裏打ちされながらも、即興的な温かみと気品に満ちており、「ヴィルトゥオーゾ」という言葉が持つ本来の意味を再確認できます。

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