[PM PMR 017] キャスリン・モーゼス (Kathryn Moses) - ミュージック・イン・マイ・ハート (Music in My Heart)

1970年代後半、フュージョンやクロスオーバーの熱気がジャズシーンを包み込む中、一枚の傑作がカナダから届けられました。

フルート、サックス、そして歌声を自在に操るキャスリン・モーゼス (Kathryn Moses) が1979年に発表したセカンド・アルバム「Music in My Heart」。本作は、彼女の類稀なる音楽的才能が凝縮された、温かくも洗練されたソウル・ジャズの名盤として、今なお多くの音楽ファンを魅了し続けています。

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Kathryn Moses - Music in My Heart

PM - PMR 017

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本作は1979年のリリースですが、2000年代に入ってからCDやLPで再発されており、オリジナル盤も比較的入手しやすい作品です。私が所有するオリジナル盤は、後年の再発CD(celeste盤)で感じられた高域の鋭さがなく、全体的に太く安心感のあるサウンドが魅力です。

モーゼスは単なる演奏家にとどまらず、優れた作編曲家でもあります。

本作に収録された全曲が彼女のオリジナルで、その卓越した音楽的ビジョンが隅々まで貫かれています。オクラホマの交響楽団でクラシック奏者としてキャリアを始めた彼女は、1967年にカナダのトロントへ移住し、ジャズの世界へ。その確かな技術に裏打ちされた演奏はたちまち評判を呼び、1976年のデビュー作でカナダの音楽賞を受賞するなど、当時から高い評価を確立していました。

このアルバムを特別なものにしているもう一つの要因が、彼女のビジョンを具現化するために集結したミュージシャンたちです。ピアノには、レイ・チャールズ (Ray Charles) との共演でも知られるカナダ音楽界の重鎮、ダグ・ライリー (Doug Riley)。ギターのロブ・ピルチ (Rob Piltch) とベースのデヴィッド・ピルチ (David Piltch) は、彼女のレギュラー・カルテットのメンバーとして、息の合った演奏で楽曲の核を支えます。

さらにこの鉄壁の布陣に、アメリカから二人の巨匠が加わりました。マイルス・デイヴィス (Miles Davis) との共演で知られる伝説的パーカッショニストのドン・アライアス (Don Alias) と、本作のプロデューサーであり、エルヴィン・ジョーンズ (Elvin Jones) のベーシストでもあったジーン・パーラ (Gene Perla) です。パーラが主宰した先鋭的なレーベルPM Recordsから本作がリリースされた事実こそ、モーゼスの才能が国境を越えて認められていた証明ともいえます。

こうして生み出されたサウンドは、ソウル・ジャズやジャズ・ファンクを基調としながら、ラテンやブラジルのエッセンスが溶け込んだ、温かく生命力に満ちたもの。その心地よいグルーヴと普遍的なメロディは、発表から数十年後、日本のクラブシーンで「キラーチューン」として再評価されるに至りました。

アルバムタイトル曲であり、クラブシーンで特に人気の「Music in My Heart」も素晴らしいですが、個人的にはラストを飾る「Shine on Me」が好きです。

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