ヴァイオリンという楽器の可能性を極限まで追求した、J.S.バッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」。この難曲中の難曲に、現代最高のヴァイオリニストの一人、イザベル・ファウストが挑んだこの録音は、21世紀における新たな指標として高く評価されています。
歴史的奏法への深い知性と現代的な名人芸が高度に融合した演奏、そしてその一音一音を余すところなく捉えた録音の質は、まさに圧巻の一言です。
もともとCDで愛聴していたこの名演。日本国内500セット限定で全集がLP化されると知り、迷わず購入を決めました。
Isabelle Faust - Bach: Sonatas and Partitas
King International - HMLP-0018/20

超音波洗浄を済ませ、通して聴いた感想です。
まずパッケージですが、豪華なボックス仕様のため、ディスクの取り出しに少し手間がかかる点は好みが分かれるかもしれません。
CDと比較すると、その音質の違いは明らかです。CDでは時に鋭く感じられた高音域の角が取れ、LPではより自然で温かみのある響きです。鮮烈さで圧倒するタイプではありませんが、細部まで丁寧に描写された音質は、現代の録音として非常に高い水準にあります。
これまで何度も聴き込んできたはずの作品から、今まで気づかなかった弱音のニュアンスや表現の深みが立ち現れ、ファウストの驚異的な技術力と音楽性を再認識させられました。ステレオ初期の名録音のような生々しい空気感とはまた違う、現代的な録音技術の到達点を感じさせます。
録音は、プロデューサーのマルティン・ザウアー (Martin Sauer) のもと、ベルリンのテルデックス・スタジオ (Teldex Studio) で行われました。このLPは、24bit/96kHzのハイレゾ・デジタルマスターを音源としています。
そのクリアかつウォームな音の秘密は、同スタジオが誇るヴィンテージのノイマン (Neumann) 製マイクと最新デジタル技術の融合にあります。ファウストが奏でる1704年製ストラディヴァリウス「スリーピング・ビューティ」の温かい響きを高精細に記録することで、透明感と生々しい質感を両立させているのです。
すでにCDでこの演奏を愛聴されている方であれば、その価値をさらに深く発見できる、まさに決定盤と呼ぶにふさわしいクオリティーです。
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