1963年、アメリカの清涼飲料水メーカーHires Root Beerの販促用として制作されたブロッサム・ディアリーのアルバムです。
50セントとボトルキャップ2枚で入手できたこのレコードは、長らく「幻の名盤」として知られていました。当時のヒット曲12曲を収録しながら、完全にディアリーの音楽として消化された内容はさすがの一言です。
Blossom Dearie - Sings Rootin' Songs
Diwthegarden - DGLP-1

ブロッサム・ディアリーは「少女のよう」とも評される可憐なウィスパー・ヴォイスで知られますが、その本質は卓越したピアニストであり、知性とウィットに富んだジャズ・ミュージシャンです。
ただし本作では自身のピアノは弾いておらず、ジョー・ハーネル(ピアノ・編曲)、ジェローム・リチャードソン(テナーサックス・フルート)、ディック・ロモフ(ベース)、テッド・ソマー(ドラムス)のカルテットが伴奏を務めています。プロデューサーはエド・マホニー。ハーネルのアレンジにはボサノヴァの要素が取り入れられており、当時の流行を反映した軽快なサウンドに仕上がっています。
収録曲はヘンリー・マンシーニの「Days of Wine and Roses」、アントニオ・カルロス・ジョビンの「Desafinado」、「Fly Me to the Moon」、「I Left My Heart in San Francisco」など、いずれも1962年前後のヒット曲ばかりです。力で押すのではなく、ささやくように、それでいて的確に楽曲の核心をつくディアリーの歌唱は、聴き手に親密な空間を提供してくれます。商業的なプレッシャーから解放された企画盤であったからこそ、かえってリラックスした表現が引き出されたのかもしれません。今聴くと、やや計算された印象も受けますが、それもまた彼女の知性のなせる業でしょう。
オリジナル盤は極めて希少ですが、日本ではディスクユニオン系列のDiwthegardenおよびDIW Recordsから複数回再発されています。
本盤DGLP-1は2003年の再発LPで、アル・コーン編曲のCMソング「The Rootin' Theme」と「Meet Blossom Dearie」を収録した7インチ・ボーナスシングルが付属します。