1967年というロックが変革の只中にあった時代に、メインストリームとは少し離れたところで、無垢で美しいメロディを奏でたバンドがいました。
ソフトロックの名作として知られるThe Innocenceの唯一の作品です。その正体は、60年代ポップスを影で支えた超一流のソングライター・チームでした。
The Innocence – The Innocence
Kama Sutra – KLPS-8059

The Innocenceというグループの実体は、ピーター・アンダース (Peter Anders) とヴィニ・ポンシア (Vini Poncia) という二人のソングライターによるスタジオ・プロジェクトです。
彼らは60年代初頭から活動し、ザ・ロネッツ (The Ronettes) の「The Best Part of Breakin' Up」「Do I Love You」などを手掛け、フィル・スペクター (Phil Spector) のハウスバンドの一員として数々の名曲に関わった、60年代ポップス黄金期のヒット曲職人です。その後はジェリー・リーバー&マイク・ストーラーのレッド・バードに移り、ザ・トレードウィンズ (The Trade Winds) 名義で「New York's a Lonely Town」のヒットも生み出しました。
そんな彼らが自身のプロジェクトとしてアルバムを制作したのが1967年。世は「サマー・オブ・ラブ」を迎え、サイケデリック・ロックがシーンを席巻していた時代です。しかし、このアルバムで聴けるのは、そうしたムーヴメントとは一線を画す、徹底的に磨き上げられたポップ・ミュージックの世界。ソングライターとして培ってきた経験のすべてが、この一枚に凝縮されています。
アルバム全体を貫くのは、陽光のように明るく洗練されたハーモニーと、巧妙に構築されたメロディライン。全米チャート#34まで上昇した「There's Got to Be a Word!」に代表される楽曲群は、一聴して耳に残るキャッチーさを持ちながら、フォークロック、ボサノヴァ、モータウンといった多様な音楽要素がアレンジに織り込まれ、聴き込むほどにその緻密さに驚かされます。
アレンジ・指揮はジミー・ウィズナー (Jimmy Wisner) 、エンジニアはブルックス・アーサー (Brooks Arthur) が手掛けています。
本作は、良質なポップスを作り続けるという職人の矜持が結晶化したアルバムです。アソシエイション (The Association) やスパンキー・アンド・アワ・ギャング (Spanky and Our Gang) と並ぶ、サンシャイン・ポップ/ソフトロックを代表する一枚です。