[Dorian SRM039LP] ジャン・ギユー (Jean Guillou) - ムソルグスキー: 展覧会の絵、ストラヴィンスキー: ペトルーシュカからの3つの舞曲

録音の質で語られる名盤は数多くありますが、この一枚はオルガン録音のベンチマークとして特に有名です。

単なる名曲のオルガン編曲という枠に収まらない、演奏家と楽器、そして録音技術の幸福な出会いが記録された、聴き応えのあるアルバムです。

目次

Jean Guillou - Mussorgsky: Pictures At An Exhibition, Stravinsky: Three Dances From Petrouchka

Dorian Recordings / Sono Luminus - SRM039LP
                - SRM039SACD

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オリジナルは、高音質レーベルとして名を馳せたDorian Recordingsが1989年にリリースしたCD [DOR-90117] です。オルガンを演奏するのは、20世紀フランスを代表するオルガニストであり、作曲家、編曲家でもあったジャン・ギユー (Jean Guillou)です。

彼の超絶的な技巧と、大胆かつ独創的な解釈がここに刻まれています。

録音は1988年、スイスのチューリッヒにあるトーンハレで行われました。
特筆すべきは、ここで使用されたKleuker社とSteinmeyer社によるパイプオルガンです。この楽器はギユー自身が設計に深く関与しており、彼の音楽的要求を完全に満たすために作られた特別なものでした。しかし、このオルガンはホール改修に伴い2021年に新しいものへ置き換えられたため、今となってはこの録音でしかその響きを聴くことができません。

当時の録音エンジニアはBrian C. PetersとCraig D. Doryが務め、オルガンの持つ広大なダイナミックレンジと、ホール全体を揺るがすほどの重低音を見事に捉えています。

ギユーによる編曲は、ラヴェルによる有名な管弦楽版とは全く異なるアプローチです。彼はオーケストラの響きを模倣するのではなく、オルガンという楽器の可能性を極限まで引き出すことで、ムソルグスキーの原曲が持つ荒々しさや神秘性を「再創造」しました。冒頭の「プロムナード」から鳴り響く壮麗な響き、そして「キエフの大門」で地を這うように奏でられる16Hzの重低音は、オーディオシステムの再生能力を試すリファレンスとしてあまりにも有名です。

B面に収録されたストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」もまた圧巻です。バレエ音楽の複雑なリズムと色彩感を、ギユーはオルガンという楽器で完璧に表現しきっています。

私が所有しているのは、Dorianのカタログを引き継いだSono Luminusが2017年にリイシューしたLP [SRM039LP] と、2016年リリースのSACD [SRM039SACD] です。

オルガンという楽器の録音・再生は難しいことで知られますが、この作品はオーディオシステムの実力を試す上で挑戦しがいがある一枚と言えるでしょう。 私の環境ではSACDの方が高域の音数が多く、厚みもあって有利に聴こえます。

残念ながらオリジナルのCDは持っていません。

タワレコ: ムソルグスキー(ジャン・ギュー編曲): 「展覧会の絵」、ストラヴィンスキー(ジャン・ギュー編曲): 「ペトルーシュカ」組曲

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