何年くらい前か覚えていませんが、まだクラシックのレコードに興味を持つ前に、オーディオのアナログ誌でレコードのマトリクス番号の違いによる聴き比べの記事が有りました。
当時メインで購入していたレコードは、そもそもが、数百枚単位でしか製造されていない物ばかりだったので、初版しかありません。マトリクスの記事を読んでも、あまり興味がありませんでした。
マトリクスの比較で使われていたレコードがこれでした。
既にその本が手元に無いのでうろ覚えですが、同じレコードでマトリクスを比較するというマニアックな企画にも関わらず、比較したマトリクス番号が中途半端だった記憶が有ります。
Kyung-Wha Chung - Bruch: Violin Concerto, Scottish Fantasia
Decca - SXL 6573

ソリストのチョン・キョンファは、この録音当時、まだ24歳でした。
1970年のロンドンでの衝撃的なヨーロッパ・デビューからわずか2年、まさに世界的なスターダムへと駆け上がっていく最中の、最もエネルギーに満ち溢れた時期の演奏です。彼女のヴァイオリンは、ある評者が「閃光のようなテクニック」と表現したように、鋭い切れ味と圧倒的な熱量を誇ります。
その激しい情熱を、大きく温かい腕で包み込むのが、指揮者ルドルフ・ケンペとロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団です。当時60代前半だったドイツの巨匠ケンペは、決して音楽を派手に演出することなく、作品の持つ構造と美しさを大切にし、包み込むような温かさでサポートします。
そして、Deccaが誇る録音技術です。
録音場所は、その伝説的な音響で知られるロンドンのキングスウェイ・ホール。プロデューサーのレイ・ミンシャルとエンジニアのジェームス・ロックという黄金コンビは 、まるで目の前で演奏が繰り広げられているかのような生々しいサウンドステージを現出させました。
ヴァイオリン協奏曲の定番ということで、当時、売れたのか今でも入手がし易いレコードです。
その内容と合わせてお勧めできる作品です。ケンペのデッカ作品という観点でも楽しめます。
このレコードは10枚以上買いましたが、入手したもので一番若いマトリクスは2W/2Wでした。次が4W/2Wです。1W/1Wは無い気がします。

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