東欧の音楽大国ポーランド。
その国営レーベル「Muza」のレコードは個人的に外れ無しです。本作は、1960年代から活動するポーランドを代表する女性ボーカルグループ、アリバブキ (Alibabki)が1977年に発表した一枚。
Alibabki - Zagrajmy W Kosci Jeszcze Raz
Muza - SX 1494

本作の魅力はまず「アルバムトータルとしての構成力、柔らかで美しいコーラスワーク、各楽曲のアレンジの仕方」にあります。そのサウンドは、ブラジルの名門コーラスグループ、クアルテート・エン・シー (Quarteto em Cy) のポーランド版のような雰囲気で、完成度はこちらの方が上だと感じます。
このアルバムは、可憐なコーラスワークの下に、非常にソウルフルでファンキーなグルーヴが特徴です。
例えば、タイトル曲「Zagrajmy W Kości Jeszcze Raz」は、ファンキーなベースラインと軽快なホーンが絡む、洗練されたジャズファンク・ナンバー。また、アルバムのハイライトと名高い「Samotna Rękawiczka」は、その複雑で美しいハーモニー構成から、かのビーチ・ボーイズ (The Beach Boys) を彷彿とさせるクオリティを誇ります。
一方で、キャリア初期のスカを彷彿とさせる軽快な楽曲や、当時の空気感を反映したメロウなディスコ・ポップ調のナンバーまで、アルバムを通して聴き手を飽きさせません。
この多様性を支えているのが、作曲を手掛けたヴォイチェフ・チシンスキ (Wojciech Trzciński) やイェジー・ドブジンスキ (Jerzy Dobrzyński) といった才能ある音楽家たち、そして、全編の作詞をポーランド文学を代表する詩人の一人、アグニェシュカ・オシェツカ (Agnieszka Osiecka) が手掛けているという事実です。美しいメロディとハーモニーに、普遍的な詩の世界が溶け込んでいるのです。
美しいコーラスワークはもちろん、ファンクやソウル、ジャズといったブラックミュージックの要素を洗練されたポップスへと昇華させた作品です。
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