90年代後半、私はネオアコに夢中でした。リアルタイム世代ではありませんでしたが、その繊細なメロディと陰のある内省的な世界観が大好きでした。
当時、西新宿のレコード店の近くに住んでいたため、休みの日は午前と午後に分けてレコード屋をハシゴしていました。特に輸入盤を多く扱うショップでは、2000年前後に盛り上がりを見せていた欧米のインディーポップの新譜をチェックするのが日課でした。
そんな中で出会ったのが、ノルウェー出身のデュオ、キングス・オブ・コンビニエンス(Kings of Convenience)です。彼らのデビューはUSのインディーレーベル「Kindercore Records」から。レーベル買いをしていた私にとって、彼らは数多くのバンドの中の一つという印象でした。
正直なところ、初期の作品にはそれほど強い印象はありませんでした。しかし、2004年にリリースされた3枚目のアルバム「Riot On An Empty Street」を聴いたとき、その完成度の高さに驚きました。いつの間にか彼らは、唯一無二の個性を持つメジャーなアーティストへと成長していました。
Kings of Conveniencem - Riot On An Empty Street
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アコースティックギターのアルペジオと二人の繊細なハーモニー。そのサウンドは、これまでの作品にあった瑞々しさを残しつつ、より深く、洗練されたものになっていました。
特筆すべきは、アルバム全体の録音品質の高さです。プロデューサーのダヴィデ・ベルリョーニ(Davide Bertolini)と共に作り上げたサウンドは、アコースティック楽器の響きや息づかいまでが非常にクリアに捉えられています。静寂の中に音が立ち上る様は、オーディオ的にも聴きごたえ十分です。
また、カナダのシンガーソングライター、ファイスト(Feist)が2曲でゲスト参加していることも、本作の魅力を一層高めています。「Know-How」と「The Build-Up」で聴かせる彼女の歌声は、アルバムに新たな彩りを加えています。
リリースから年月が経ち、CDで聴いていたこの作品をレコードで聴きたくなりました。数年前に再発盤がリリースされたのを機に購入しましたが、アナログならではの音の温かみと奥行きは、この静謐な音楽に実によく合います。
キングス・オブ・コンビニエンスの作品はすべて所有していますが、結局、この3枚目と次の4枚目を最もよく聴いています。彼らの音楽の核となる美しさと、アーティストとしての成熟が見事に結実した傑作です。
アコースティックな響きを大切にする音楽ファン、そして良質な録音のアルバムを求めるオーディオファンに、心からおすすめします。

おまけ。
彼らのカバーをしているアーティストを見つけました。本家よりもYouTubeの再生回数が多いです。
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