クラシック界と、"Cateen"名義でのYouTube活動で幅広く活躍中のピアニスト、角野隼斗 (Hayato Sumino)。
彼のワールドワイド・デビューアルバム「Human Universe」です。
通常、黒とカラーヴィニールが併売されると、かならず黒を買いますが、今回は、悩んで、コバルトブルー盤を買いました。
Hayato Sumino – Human Universe
Sony – SIJP-200/201

角野隼斗氏は、2021年の第18回ショパン国際ピアノコンクールでセミファイナリストに選出される実力を持ちながら、YouTubeでは150万人以上のチャンネル登録者を誇る現代ならではのアーティストです。
その時のショパコンは珍しくリアルタイムで見ていました。
開成高校出身、東京大学大学院で情報理工学を修めた経歴も持ち 、その理知的な探究心は本作の隅々にまで見て取れます。
本作は2024年の1月と4月にロンドンのMaster Chord Studioで録音されました 。
このスタジオは、最高峰の音響設計と、世界的なピアノメーカーであるSteinway & Sonsのヘッド技術者、ウルリッヒ・ゲルハルツ (Ulrich Gerhartz) 氏自らが整備したコンサート・グランドピアノ「Model D」を擁することで知られています 。
そしてエンジニアを務めたのは、かのAbbey Road Studiosに23年間在籍し、BAFTA賞受賞歴も持つジョナサン・アレン (Jonathan Allen) 氏 。この布陣が、ピアノの微細なニュアンスから壮大な響きまでを余すところなく捉え、非常に透明度と奥行きのあるサウンドを実現しています。
アルバムのコンセプトは「宇宙の中の人間、人間の中の宇宙」。古代ギリシャの「天球の音楽」思想にも通じるこのテーマは 、収録曲全体を貫く背骨となっています。
タイトル曲「Human Universe」は超弦理論に着想を得た11拍子で構成され 、自身の編曲によるラヴェルの「ボレロ」では、一台のピアノからオーケストラを思わせる壮大な宇宙を創出するという離れ業を成し遂げています 。
さて、肝心のコバルトブルー盤の音質です。
伝統的に、レコードの素材に添加されるカーボンブラックは盤の硬度を高め、音質を安定させると言われてきました。そのため、顔料で着色されるカラーヴァイナルは音質的に不利、というのが定説です。
標準の黒盤を聴いていないので比較はできませんが、サーフェスノイズは少なく、静寂の中から立ち上がるピアノの音像は鮮明そのもの。きれいなブルーの円盤が回転しているのを見ながら聴いていると、本作の持つ温かな宇宙観と絶妙にマッチしているように思えました。

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