完璧主義者として知られた指揮者ジョージ・セルが、彼の手兵クリーヴランド管弦楽団と共にフランス音楽の金字塔に挑んだ録音。その演奏は、あまりの明晰さゆえに物議を醸し、しかし時を経て「予言的」とまで評されるようになりました。
George Szell - Debussy: La Mer, Ravel: Daphnis Et Chloe
Columbia - SAX 2532

このレコードは、1963年1月11日と12日に、クリーヴランド管弦楽団の本拠地であるセヴェランス・ホールで録音されました。プロデューサーは、セルの後期の多くの名盤を手がけたポール・マイヤーズ (Paul Myers) が務めています。
英国ColumbiaのSAXシリーズから1963年にリリースされましたが、初版はセミサークルです。
ブルー・シルバーでないこともあり、比較的入手しやすい作品です。
ジョージ・セルの音楽解釈は同時物議を醸したそうです。
特にドビュッシーの交響詩「海」は、その演奏スタイルからクリーヴランドの楽員に「ダス・メーア(ドイツ語の海)」と揶揄されたほどでした。
当時の主流であった、色彩や雰囲気を重視するアプローチとは一線を画し、セルは楽譜の構造を徹底的に分析し、すべての音符を驚異的な透明度で描き出します。このアプローチは当初、フランス音楽の官能性を欠くとして批判も受けましたが、音楽評論家のスティーヴ・シュワルツ (Steve Schwartz) が指摘したように、後のピエール・ブーレーズによる革新的なドビュッシー演奏を予見する「予言的な」ものとして再評価されることになりました。
B面に収録されたラヴェルの「ダフニスとクロエ」第2組曲でも、そのアプローチは一貫しています。
ラヴェルのオーケストレーションは、無数の音色が複雑に織りなす「音のモザイク」とも言われますが 、セルとクリーヴランド管の演奏は、細部まで鮮明に浮かび上がらせます。
ちなみに、セル&クリーヴランド管弦楽団の作品なら、米盤でも良いという人もいますが、EMI系のリリースはかなり音質が変わります。
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