1970年代のドイツ音楽シーンが生んだ、心温まるポップス。
歌手メアリー・ルースがキャリアの頂点で発表した本作は、単なる歌謡曲に留まらない、普遍的な魅力を放つ作品です。
Mary Roos - Lieber John
CBS - S 65653

本作が録音された1973年は、メアリー・ルース (Mary Roos)がまさに飛ぶ鳥を落とす勢いだった時期です。
前年の1972年、彼女はユーロビジョン・ソング・コンテストに西ドイツ代表として出場し、「Nur die Liebe läßt uns leben(愛だけが我々を生きさせる)」を歌い上げ3位に入賞。これにより、彼女の名声は国際的なものとなりました。その成功の直後にリリースされたのが、このアルバムです。
このアルバムを語る上で欠かせないのが、プロデューサーであるミヒャエル・クンツェ (Michael Kunze)の存在です。彼は70年代のドイツ語圏ポップス界で最も成功したヒットメーカーの一人であり、後にシルバー・コンベンション (Silver Convention)を率いて「フライ・ロビン・フライ (Fly, Robin, Fly)」で全米1位とグラミー賞を獲得する人物。彼は、従来のドイツ歌謡(シュラーガー)に洗練されたポップスやソウルの要素を持ち込み、サウンドを国際的なレベルへと引き上げた革新者です。
表題曲「Lieber John(親愛なるジョンへ)」は、遠く離れた恋人への想いを綴った、キャッチーながらも切なさを感じさせるポップスです。
アルバム全体が、クンツェの手腕により、非常に暖かく、統一感のあるポップ・サウンドでまとめ上げられています。これは、ピーター・マッファイ (Peter Maffay)やレス・ハンフリーズ (Les Humphries)といった、当時のトップクラスのソングライターが楽曲を提供していることとも無関係ではないでしょう。
ジャケット写真の朗らかな雰囲気そのままに、聴く者を優しく包み込むような作品でありながら、その裏には、キャリア絶頂の歌手と時代を牽引したプロデューサーという、二つの大きな才能の出会いがありました。
非英語圏の音楽にも違和感がない人にはおすすめです。ドイツ語、フランス語の作品が有ります。ドイツ語の作品の方が好きです。
ジャケは違いますが、CDでも各種編集版含めて色々と出ています。
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