Sutherland Ph3Dは、米国の設計者Ron Sutherlandが手がけたフォノイコライザーです。最大の特徴は、単1電池(D-cell)16本のみで動作する完全バッテリー駆動。ACラインとの接続を断つことで、コンセントから流入するノイズやハムの影響を原理的に排除しています。

電池駆動がもたらすもの
フォノイコライザーにとって電源の純度は音質に直結します。Ph3Dの場合、電池が唯一の電源であるため、グラウンドループやトランスからの漏洩磁束といったノイズ源がシステムに存在しません。その結果として得られる背景の静寂感は、同価格帯のAC電源機と比べて一段上の水準にあります。
音の印象をひと言で表すなら「力感と静寂の両立」です。バッテリー駆動のフォノイコライザーはおとなしくなりがちという先入観がありましたが、Ph3Dはむしろ逆で、鮮度の高さと躍動感が印象的でした。ヴォーカルやアコースティック楽器の質感表現にも優れており、音楽的な表情が豊かです。
以前に使用したTrigon Advance(バッテリー駆動)やNagra BPS(電池駆動)と比べても、力感・空間表現ともに明らかに上回っていました。
設定と使い勝手
ゲインと負荷インピーダンスは内部の金メッキピンとジャンパーで設定します。設定変更にはカバーを開ける必要があり、ディップスイッチ式と比べると手間はかかります。ただし一度決めてしまえばほぼ触らないため、実用上の不便は感じませんでした。
| 項目 | 選択肢 |
|---|---|
| ゲイン | 40 / 45 / 50 / 55 / 60 dB |
| 負荷インピーダンス | 100 / 200 / 1k / 10k / 47kΩ |
Denon DL-103系(内部インピーダンス14Ω)との組み合わせでは、ゲイン60dB・負荷100〜200Ωが無難な出発点です。電源ケーブルが不要なため配線はシンプルで、ターンテーブルのそばに置けるのも利点です。

電池の管理について
使用した電池はパナソニックのEVOLTA。おおむね1年に1回の交換で運用していました。電池電圧が1.2V程度まで低下しても音は出ていましたが、新品交換前後で音質の変化はほとんど感じませんでした。これがEVOLTAの安定性によるものか、Ph3Dの回路設計によるものかは判断できませんでしたが、実用上は問題ありません。
長期間使用しない場合は電池の液漏れに注意が必要です。12〜18ヶ月ごとに接点の状態を確認しておくと安心です。
まとめ
Ph3Dの最大の美点は、バッテリー駆動という設計思想を音として体現していることです。静寂感だけでなく、力感と鮮度を兼ね備えた音は、価格帯を超えた完成度を持っています。
その後、フォノイコライザーはFidelix LEGGIEROに移行しました。LEGGIEROはPh3Dとは設計思想が異なりますが、静寂感という点では比較に値する数少ない機種です。

Roon
SACD
コメント