1980年代前半、英国バーミンガムのインディー・シーンから登場したバンド、Man Upstairs。切なく瑞々しいメロディーと物憂げなボーカル、巧みなギターワークを持ち味としていました。活動中にはThe Smithsの前座も務めるなど、各地で精力的にライブを展開しています。
公式にリリースされた音源は7インチシングル3枚と12インチEP1枚のみ。
スタジオ・アルバムは残されていませんが、「Country Boy」はネオアコ・ファンの間で今なお語り継がれる名曲として知られています。ここでは、彼らが残した全公式音源と、2016年にリリースされた編集盤CDを紹介します。
Man Upstairs ー Singles / EP

バンドの中心人物は、後にTerry and Gerryの共同創設者として知られるようになるボーカリスト。
1983年中盤にメンバーの大幅な入れ替えがあり、その後の編成でボーカル、ギター、ベース、パーカッションを含む5人体制が確立されました。以下、公式リリースを時系列で見ていきます。
- Summa [1982]
Clock House Records – CH 0502 (7")
A1. Summa
B1. Gospel According To Mark
デビューシングル。後の作品と比較すると荒削りな部分も感じられますが、バンドの原点となる初期衝動が詰まった一枚です。軽快なカッティングギターと少し屈折したポップセンスは、この頃から彼らの個性として確立されています。
- Sad In My Heart [1985]
Side Line – SIDE 1 (7")
A1. Sad In My Heart
B1. Country Boy
A面の「Sad In My Heart」も哀愁漂うメロディーが胸を打つ名曲ですが、このシングルの価値を決定づけているのはB面に収録された「Country Boy」に他なりません。
イントロのアルペジオが鳴った瞬間から空気を変えてしまうほどの存在感。
切なくも美しいメロディーラインと完璧なバンドアンサンブルが、わずか2分半に凝縮されています。ネオアコというジャンルが生み出したポップソングの最良の結晶のひとつと言えるでしょう。極論を言えば、Man Upstairsはこの7インチシングルだけを手に入れれば良い、とさえ断言できます。
- Consumer Song [1986]
Side Line – SIDE 2 (7")
A1. Consumer Song
B1. Shouldn't Try
ラストシングル。前作までの瑞々しさを残しつつも、よりソリッドで洗練されたバンドサウンドへと進化を遂げています。この時期にはメンバー構成が変わり、3名体制で制作されました。
そして、一番有名なのがこのジャケットです。

- The Consumers' EP [1986]
Side Line - Wide1 (12")
A1. Consumer Song (American Club Mix)
A2. Shouldn't Try
B1. Country Boy
B2. Sad In My Heart (Russian Club Mix)
B3. I Bet They're Really Missing Me Downstairs
「Sad In My Heart」と「Consumer Song」の7インチ収録曲4曲に、このEPでしか聴けない「I Bet They're Really Missing Me Downstairs」を加えた全5曲入りの12インチEPです。活動を総括するような内容で、彼らの代表曲がほぼ網羅されています。
アイコニックなジャケットデザインも印象的で、コレクターズアイテムとしても人気が高い一枚です。ただし、音質面では注意が必要です。
アナログレコードの世界では、一般的に7インチよりも12インチの方が音質的に有利とされています。
しかし、Man Upstairsの「Country Boy」に関しては、この常識が当てはまりません。7インチシングル盤の方が明らかに鮮度が高く、生々しいサウンドを体感できます。7インチ盤こそがオリジナルのマスターからカッティングされたものではないかと推測しています。
手軽に聴くならこの一枚 ー 決定版CD「Home From The Picnic」
Home From The Picnic [2016]
Firestation Records – FST140 (CD / LP)
1. Country Boy
2. The Boy Next Door
3. Barratt Homes
4. I Can Be Anything
5. Shouldn't Try
6. Sad In My Heart
7. The Person In Front
8. Cry Cry Baby
9. No Smokes Without Fire
10. Don't Be Afraid Of The Dentist
11. They Wanna Be Like You
12. It's Raining
13. I Bet They're Really Missing Me Downstairs
14. One Kiss At Sunset
15. Jack
16. One Lump Or Two
17. The Consumer Song
18. When Jealously Starts Again
19. You've Gotta Keep To The Beat In Ballroom Dancing
20. No Smokes Without Fire (Version)
21. Cry Cry Baby (Version)
22. Desperate Dan
23. Raging Fool
24. Lipstick Shuffle
25. Big Fish
26. Ba Ba Ba Ba
27. The Eye Of The Needle
28. My Way
ベルリンのインディーポップ専門レーベル、Firestation Recordsからリリースされた編集盤です。公式リリース音源はもちろん、当時お蔵入りになっていた未発表音源を大量に追加収録した全28曲入りの内容を誇ります。LP版は全19曲、CD版にはさらに9曲のボーナストラックが追加されています。彼らの活動の全貌に迫ることができる、まさに決定版と呼ぶにふさわしい一枚です。
楽曲を手軽に、そして網羅的に楽しめるのは、この編集盤ならではの魅力です。アナログ盤を探求する前の入門編として、また全ての音源をコンプリートしたいコレクターにとっても必携の1枚です。
Roon
SACD
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