Sergiu Luca - Bach: Sonatas & Partitas for Solo Violin

モダン楽器による力強いバッハ演奏が主流であった1977年、ピリオド楽器による無伴奏ヴァイオリン全曲録音という画期的な試みが世に問われました。

古楽器によるバッハ演奏が一般的になる遥か以前に制作された、先駆的な一枚です。

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Sergiu Luca - Bach: Sonatas & Partitas for Solo Violin

Nonesuch - HC-73030

HC-73030

セルジュ・ルカは1943年ブカレスト生まれのヴァイオリニストです。9歳でハイファ交響楽団と共演してデビューし、ロンドンでマックス・ロスタルに、カーティス音楽院でイヴァン・ガラミアンに師事しました。

1965年にはフィラデルフィア管弦楽団でアメリカ・デビューを果たし、同年レナード・バーンスタインに選ばれニューヨーク・フィルでも演奏しています。

本作は3枚組LPの全集で、1669年製ニコロ・アマティをバロック仕様に戻し、当時の様式の弓を用いて全曲を録音しています。バッハの無伴奏全曲盤としてバロック楽器を用いた世界初の録音とされ、リリース当時は大きな反響を呼びました。ノンサッチの公式サイトでも「バロック・コンサートの実践に革命をもたらした」と紹介されています。

本作がリリースされた1977年は、テレサ・スターンがノンサッチのディレクターを務めていた時期(1965〜1979年)にあたります。スターンは先進的な録音企画を次々と世に送り出した人物であり、この歴史的録音もその在任期間中に実現したものです。LPはMasterdiskでカッティングされています。

ガット弦ならではの、鋭すぎず芯のある柔らかな響きが特徴です。

現代の演奏とは一線を画す、温かみのある音が収められています。ルカの演奏解釈も独特で、バッハが楽譜に記した多声的な書法を、和音の響きとして垂直に捉えるのではなく、複数の旋律が水平に絡み合う線の音楽として表現しています。

ふだんモダン楽器の演奏に親しんでいると、最初はずいぶん地味に感じられるかもしれません。

しかし全集を通して聴き進めるうちに、2枚目の後半あたりからその世界観に引き込まれるような感覚があります。当時の楽器と奏法で原点の響きを再現するアプローチには説得力がある一方、それでもモダン演奏に魅力を感じる向きも多いでしょう。もし現代にバッハが生きていたら、どちらのスタイルを選ぶだろうか。

そんなことを考えさせてくれる録音です。

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