[EL GA-131] ルイ・フィリップ (Louis Philippe) - Passport to Pamplona

違う名義も含めて、彼のキャリアで一番好きな作品。
フランス人ミュージシャン、ルイ・フィリップ(Louis Philippe)が1987年に発表したアルバムです。

本作は一般的なスタジオ・アルバムではなく、ルイ・フィリップがキャリア初期にel Recordsに残したシングル曲や未発表音源などを集めたコンピレーション・アルバムです。

彼の音楽キャリアの原点であり、当時のインディー・シーンの空気を凝縮した重要な一枚。

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Louis Philippe - Passport to Pamplona

EL - GA-131 

EL GA131

ルイ・フィリップ(本名:フィリップ・オークレール)は、1959年にフランスのノルマンディーで生まれたシンガーソングライターです。音楽家としての活動と並行して、フットボール・ジャーナリストとしても活躍するというユニークな経歴を持っています。

この安定したジャーナリストとしてのキャリアが、商業的な成功に左右されることなく、自身の芸術性を純粋に追求することを可能にしました。  

1986年後半にロンドンへ移住し、カルト的な人気を誇るインディー・レーベル「el Records」と契約。単なる所属アーティストに留まらず、レーベルのハウス・プロデューサー、アレンジャー、ソングライターとして中心的な役割を担い、レーベルが持つ特異な美学の音楽的な体現者となりました。

ネオ・アコースティックの瑞々しいギターサウンドを基調としながらも、ジャズのコード進行、軽快なボサノヴァのリズム、そしてストリングスやピアノが彩る「チェンバー・ポップ」の要素が色濃く反映されています。

代表曲「You Mary You」は、ビーチ・ボーイズ風の複雑なコーラスワークと甘美なメロディが融合した、きらびやかなインディー・ポップです。この曲は後のルイ・フィリップのイメージを決定づけました。

また、「Like nobody do」では洒脱なボサノヴァのリズムを取り入れるなど 、多彩な音楽的引き出しを披露しています。彼の柔らかなボーカルと、フランス語と英語を巧みに操る知的な歌詞が、楽曲全体に独特の浮遊感を与えています。

el Recordsの音楽は、英国では商業的な成功には至りませんでした。しかし、その洗練された音楽と美学は、海を越えた日本で受け入れられます。  

1987年、ルイ・フィリップらがプロモーションで来日した際、空港で待ち受けるファンの姿に衝撃を受けたと本人が語っています。英国では無名に近かった彼らの音楽が、日本の輸入盤店を通じて若者たちの間に浸透し、大きな支持を集めていたのです。  

この現象は、1990年代に隆盛を極める「渋谷系」ムーブメントの源流となりました。フリッパーズ・ギターやピチカート・ファイヴといった渋谷系の代表的アーティストたちは、él Recordsの音楽から多大な影響を受けたことを公言しています。

商業的な成功とは別の次元で、本作は一つの音楽ジャンルを育んだ「種」として、時代を超えて聴き継がれるカルト・クラシックであり続けています。

追記。

しばらく2番手としては、「Ivory Tower」でしたが、2007年リリースの「An Unknown Spring」という作品は素晴らしいです。今までで一番良いかもしれません。

良いと聞いてから、見つけるまで少し時間がかかりました。
参考: Bandcamp - An Unknown Spring | Louis Philippe

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