Louis Philippe - Passport to Pamplona

フランス出身のシンガーソングライター、ルイ・フィリップ(Louis Philippe)が1987年にスペインで発表したLP。

本名フィリップ・オークレール(Philippe Auclair)。Cherry Red Records傘下のカルト・レーベル、el Recordsでの初期作品を独自の選曲で編んだ編集盤です。英国盤「Appointment With Venus」(1986年)をベースに、シングル曲や未収録音源を加えて再構成されたものです。

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Louis Philippe - Passport to Pamplona

EL - GA-131 

EL GA131

ルイ・フィリップは1959年、フランス・ノルマンディー地方のイヴトー生まれ。

もともと哲学教師の職に就いていましたが、音楽への情熱から渡英を決意します。1986年後半、A&Rマンのマイク・オールウェイ(Mike Alway)の助言でロンドンへ移住し、el Recordsと契約。レーベルではハウス・プロデューサー、アレンジャー、ソングライターとして過半数のリリースに関与し、1960年代のバブルガム・ポップやヨーロッパのシャンソン、映画音楽を融合させたelの独特な美学を、音楽面で体現する中心的存在でした。

音楽活動と並行してフットボール・ジャーナリストとしても活動しており、「France Football」誌の英国特派員やエリック・カントナの伝記執筆で知られるなど、異色の二足のわらじを履いています。この安定したジャーナリストとしてのキャリアが、商業的な成功に左右されることなく、自身の芸術性を純粋に追求することを可能にしました。

収録楽曲は、ネオ・アコースティックの瑞々しいギターサウンドを基調としながらも、ジャズのコード進行、軽快なボサノヴァのリズム、ストリングスやピアノが彩るチェンバー・ポップの要素が色濃く溶け込んでいます。録音はPadded Cellスタジオでエンジニアのレイ・ヘッジズ(Ray Hedges)が担当し、プロデュースはルイ・フィリップ自身とリチャード・プレストン(Richard Preston)が分担。Momus(ニック・カリー)がゲスト参加しています。

代表曲「You Mary You」は、ビーチ・ボーイズを彷彿させる重層的なコーラスワークと甘美なメロディが融合したインディー・ポップで、el Records最大のヒット・シングルとなりました。「Like Nobody Do」では洒脱なボサノヴァのリズムを取り入れるなど、多彩な音楽的引き出しを披露しています。

フランス語と英語を自在に操る知的な歌詞と柔らかなボーカルが、楽曲全体に独特の浮遊感を与えています。

el Recordsの音楽は英国では商業的な成功には恵まれませんでしたが、海を越えた日本で大きな支持を集めます。1987年にルイ・フィリップらがプロモーションで来日した際、空港でファンが出迎える光景に本人が衝撃を受けたというエピソードが残っています。

輸入盤店を通じて若者の間に浸透していたelの音楽は、やがて1990年代に隆盛を極める渋谷系ムーブメントの源流となりました。フリッパーズ・ギターやピチカート・ファイヴ、コーネリアスといった渋谷系の代表的アーティストたちが、この音楽から多大な影響を受けたことを公言しています。商業的な成功とは別の次元で、本作は一つの音楽ジャンルを育んだ「種」として、時代を超えて聴き継がれるカルト・クラシックであり続けています。

なお、2007年リリースの「An Unknown Spring」も注目すべき作品です。

Young Marble Giantsのスチュアート・モクサムとの共作「The Huddle House」と同年に発表されたスタジオ・アルバムで、ルイ・フィリップの自主レーベルWonder Recordsからリリースされました。キャリア後期の充実ぶりを示す一枚として高い評価を受けています。
参考: Bandcamp - An Unknown Spring | Louis Philippe

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