東独エテルナのレコードの中でも、ヴァイオリニスト、カール・ズスケ (Karl Suske) が残した一連の録音は特に魅力的です。今回ご紹介するハイドンのヴァイオリン協奏曲集は、彼の録音の中でも特に音質、演奏ともに素晴らしく、長年探し求めていた一枚でした。
Karl Suske - Haydn: Violin Concertos Nos. 1 & 2
Eterna - 825 560

エテルナのステレオレコードは825から始まります。一部の作品にはVステと呼ばれる扇形のラベル中央にステレオのマークが付きます。
2版以降の黒ラベルのレコードとはジャケット自体が違う場合が多く、中身を見なくても初版かどうか分かります。
ただ、このジャケットでも黒ステレオ盤も存在します。
黒エディション以降はジャケットも変わります。
このハイドンVn協奏曲は、黒エディションで持っていましたが、それでも素晴らしい録音で満足して聴いていました。

黒エディション以降はこのモノクロジャケットです。
1974年という録音年代が信じられないほど、鮮やかで生命力に満ちた音の世界が広がります。ヴァイオリンを奏でるのは、当時シュターツカペレ・ベルリンのコンサートマスターであったカール・ズスケ。彼を支えるのは、指揮者オトマール・スイトナー (Otmar Suitner) 率いる同楽団です。
録音は、数々の名盤を生み出したドレスデンのルカ教会で行われ、プロデューサーにハインツ・ウェグナー (Heinz Wegner)、エンジニアにクラウス・シュトリューベン (Claus Strüben) という、エテルナの黄金時代を支えた名匠たちが名を連ねています。
本作に収録されているのは、「ヴァイオリン協奏曲第1番 ハ長調 (Hob.VIIa:1)」と、ジャケットに「No.2」と記された「ト長調の協奏曲 (Hob.VIIa:4)」です。ハイドンが作曲したとされる本来の第2番(ニ長調)は楽譜が紛失しているため、このト長調の作品が慣例的に第2番として扱われることが多いようです。
ズスケのヴァイオリンは、私が彼のモーツァルトの演奏に感じる「明るさの中に秘めた陰影」をここでも見事に表現しています。ただ優雅なだけでなく、音の伸びやかさ、そして芯のある緊張感が同居したその音色は、ハイドンの古典的な形式美の中に、人間的な深みと温かみを加えています。
特筆すべきは、録音の質の高さです。冒頭のオーケストラによる序奏からして、弦楽器の質感が瑞々しく、音の分離も明瞭です。そして、ズスケのソロヴァイオリンが登場すると、その高音はどこまでも伸びやかに、ピンと張り詰めた緊張感を保ちながら空間に響き渡ります。
初期盤である「Vステ」盤は音の厚みが、後発の「黒エディション」は空間への浸透力にそれぞれ魅力があり、どちらもエテルナ屈指の高音質録音です。スイトナーの指揮するシュターツカペレ・ベルリンの伴奏も、ソロに寄り添いながら決して出しゃばることなく、格調高い音楽作りに貢献しています。
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