デッカの廉価版シリーズは、多くの作品が再発や編集盤ですが、このシリーズが初出の作品も存在します。
今回紹介するレコードは、ECSから始まるEclipseシリーズです。
ルッジェーロ・リッチのプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲は、SXLには存在しません。
初出はLondon Decca (CS 6059)です。
Ruggiero Ricci - Prokofiev: Violin Concertos Nos. 1 & 2
Decca - ECS 746

ヴァイオリンの巨匠ルッジェーロ・リッチと、エルネスト・アンセルメ率いるスイス・ロマンド管弦楽団によるプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲1番と第2番です。
録音は1958年4月、デッカの名録音で知られるスイスのヴィクトリア・ホールにて、プロデューサーはジェームズ・ウォーカー、エンジニアはロイ・ウォレスとジェームズ・ティムズという布陣です。
英国では当初モノラル盤(LXT5446)しか発売されませんでした。このECS 746は1974年に初めて英デッカのステレオ盤としてリリースされた、ファン待望の再発盤です。
優秀録音盤として、The HP Super LP Listにもノミネートされています。
参考: The Absolute Sound - The HP Super LP List
London Decca盤の方が市場価格は高いですが、TASにノミネートされているのは、Eclipseシリーズなので、安い方で妥協しました。リッチとアンセルメの名前だけで、SXLシリーズでリリースされていたら高額になったはずです。
リッチは技巧派として有名なヴァイオリニストですが、Deccaの初期レコードはいずれも高額ですので、それほど聴いていません。ステレオ初期の録音で、リッチが40代前半、アンセルメは70代半ばです。
現在の水準では、技巧的に素晴らしいという印象は全くありませんが、最大の魅力は、その録音品質です。
深く広大な三次元的なサウンドステージは、まさにデッカ黄金期のサウンドで、リッチのヴァイオリンは、生々しい質感です。
リッチの演奏は、情熱とその激しさが、時にアンサンブルよりも勝ることがあるものの、それがこの演奏に緊張感を与えているのかもしれません。特に、2番での自信に満ちた演奏は聴きどころです。
完璧に磨き上げられた演奏とは一味違う、生々しいエネルギーを感じ取ることができます。
Decca黄金期の録音技術の粋を、現在でも手頃な価格で体験できる、「掘り出し物」と言える一枚です。
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