東独エテルナのリリースとしては、私が持っている唯一の無伴奏全集です。
バッハの無伴奏ソナタとパルティータ。その数多ある名盤の中で、旧ソ連のヴァイオリニストとして初めて全曲録音を成し遂げた歴史的偉業が、ヴィクトル・ピカイゼンによるこの全集です。
巨匠ダヴィッド・オイストラフ (David Oistrakh) が唯一、音楽学校から大学院まで一貫して指導した愛弟子の手によるこの演奏は、西側の録音とは一線を画す、孤高の芸術性を宿しています。
目次
Viktor Pikaisen - Bach: Sonatas and Partitas
Eterna - 826 607/9

エテルナから出ていなかったら、手元には無かったと思うこのレコード、ピカイゼンの事ももちろん知りませんでした。
演奏者ヴィクトル・ピカイゼン (1933-2023) は、師オイストラフが1957年に「無限の可能性を秘めたヴァイオリニスト」と称賛したほどの逸材でした。その演奏は、師から受け継いだロシア・ピアニズムに根差す重厚な音色と、鉄壁の技巧に支えられています。
この録音は、現代のハイファイ基準とは異なります。深い残響が特徴的で、ヴァイオリンの直接音の質感よりも、壮麗な空間で鳴り響く音楽全体のスケール感を重視したのでしょうか。ピカイゼンのヴァイオリンは力強く、思慮深く、そして厳粛に鳴り響きます。内省的で重みのあるバッハ像を提示してます。
このレコードは、今でも比較的入手はし易いと思います。それぞれ黒ラベルがオリジナル。他の無伴奏の演奏と比較すると、緩急をハッキリ付けて雄大で聴かせる演奏です。
好みは分かれる演奏かもしれませんが、同レーベルで全集でそろえられる貴重な作品として推奨に値する内容だと思います。
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