1982年にシュターツカペレ・ドレスデンの常任指揮者に就任した若杉弘が、同オーケストラと残したマーラーの交響曲第1番「巨人」です。
CBS/Sonyとの共同制作としてEternaレーベルからリリースされたデジタル初期の録音で、若杉はEternaに録音を残した唯一のアジア人指揮者としても知られています。
Hiroshi Wakasugi - Mahler: Symphony No. 1 "Titan"
Eterna - 725 119

1986年8月、ドレスデンのルカ教会で行われたデジタル・セッション録音です。
型番が「725」で始まるEternaのデジタル初期シリーズに属する1枚で、若杉はこのほかにもベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」やワーグナーの序曲・前奏曲集を同オーケストラとEternaに録音しています。
LP盤で聴くと、同音源のCDと比較して、より一層キレのあるサウンドが楽しめます。デジタル録音はCDでその真価を発揮すると考えられがちですが、この盤に関しては、LPの方が音楽の鮮度をよりダイレクトに伝えてくれます。なお、CD盤はチェコスロバキア製で、Eternaの一部CD製品に見られる特徴です。
若杉の指揮は、楽曲の構造を明晰に描き出しながら、冷静さに終始することはありません。
第1楽章の自然の目覚めを思わせる神秘的な序奏から、終楽章における圧倒的なクライマックスまで、シュターツカペレ・ドレスデンから情熱的な響きを引き出しています。フォルティッシモでもヒステリックにならず、表現のすべてが柔らかく深く聴き手に迫ってくるのは、まさにこのオーケストラならではの持ち味です。
マーラーの交響曲の中では比較的演奏時間が短く親しみやすい作品ですが、若杉の引き締まったテンポ感と相まって、一気に聴き通せる魅力があります。スコアを忠実に音化しながらも、ドレスデンの伝統的な響きと自然に融合した、端正で味わい深い演奏です。
Roon
SACD
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