ヒラリー・ハーンが現代作曲家アントン・ガルシア・アブリルに委嘱し、自ら演奏した無伴奏ヴァイオリンのための「6つのパルティータ」。現代作品でありながらも心に響くメロディーと、ハーンの深い音楽性が融合した意欲作です。
Hilary Hahn - Anton Garcia Abril: 6 Partitas for Violin
Decca - 483 4778

このアルバムに収められた「6つのパルティータ」は、スペインの作曲家アントン・ガルシア・アブリル (Antón García Abril) が、ヒラリー・ハーン (Hilary Hahn) のために書き下ろした作品です。アブリルは、それぞれのパルティータにハーンの名前「HILARY」の各アルファベットにちなんだタイトル(HEART, IMMENSITY, LOVE, ART, REFLECTIVE, YOU)を付しており、これは彼女への深い敬意と友情の現れです。
録音は2018年11月、ボストンのジョーダン・ホール (Jordan Hall) で行われました。
プロデューサーはエイソン・フィクソン (Aison Fixsen)、レコーディング・エンジニアはジョシュア・ヒューバー (Joshua Huber) が担当しました。CDのリリースは無し、ハイレゾのストリーミング配信(96kHz/24bitやMQA)やLPでのリリースが主軸となっていることから、音質にもこだわりを感じます。
本作の最大の魅力は、現代作品でありながらも耳馴染みの良いメロディーラインと、ハーンが作品と深く対峙し、伸び伸びと演奏している様子が伝わってくる点でしょうか。
アブリルの音楽は、ときに瞑想的であり、ときに情熱的で、ハーンのテクニックと表現力によってその多様な感情が見事に描き出されています。特に、各パルティータが持つ独自の雰囲気と、それらが連なって一つの大きな物語をつむぎ出す構成は圧巻です。
ヴァイオリンの弦の響き、弓の動きまでが鮮明に捉えられた録音は、まるで目の前でハーンが演奏しているかのような臨場感をもたらし、聴く者を深く音楽の世界へと引き込みます。

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