1968年、わずか16歳でエリザベート王妃国際音楽コンクールを史上最年少で制した天才少女の、若き日の輝きと恐るべき才能が刻み込まれた、歴史的なドキュメント。私が知る限り、CDのリリースはこれ1枚だけです。
Ekaterina Novitskaya - Russian Piano School vol. 20
Melodia - 74321 33218 2

エカテリーナ・ノヴィツカヤ (Ekaterina Novitskaya) は1951年、モスクワに生を受けました。そして音楽史にその名を刻んだのが、1968年のエリザベート王妃国際音楽コンクールでの優勝です。この録音は、まさにそのコンクール優勝と同年に行われたもので、彼女のキャリアの最も輝かしい瞬間のひとつを捉えています。
収録されているのは、すべてセルゲイ・プロコフィエフ (Sergei Prokofiev) の作品です。ピアノ・ソナタ第5番 (改訂版 Op. 135)、風刺的な「サルカズム Op. 17」、色彩豊かな小品集「束の間の幻影 Op. 22」より数曲、そしてバレエ音楽「ロメオとジュリエットからの10の小品 Op. 75」からの抜粋という、彼女の多面的な魅力を伝える選曲となっています。
この演奏を聴いて驚かされるのは、一切の甘えを許さない鋼のようなタッチと、圧倒的な技巧の切れ味です。特に「サルカズム」で見せる鋭利なリズム感や、ソナタの構築的な力強さは、16歳のピアニストとは信じがたいほどの完成度を誇ります。しかし、その強靭さの中にも、「束の間の幻影」や「ロメオとジュリエット」の「少女ジュリエット」などで見せる、ロシア・ピアニズム特有の深く、ガラス細工のように繊細な叙情性が同居しており、非凡な才能を感じます。
この演奏は、もともと1969年にソ連でLP [Melodiya C 01749-50] としてリリースされました。ピアノソロのレコード、ましてメロディア盤はミントの状態で入手するのは極めて困難です。ノヴィツカヤのレコードも例外ではありません。
プロコフィエフの音楽が持つ厳しさと叙情性を、これほどまでに高い次元で両立させた演奏は稀有といえます。
録音について、どうこう言うことはありませんが、彼女の演奏をCDで聴ける貴重な作品です。
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