[UNI Records 73056] ジョン・バリー (John Barry) - フォロー・ミー (OST - Follow Me)

夏になると一度は聴いている気がします。

映画音楽界の巨匠ジョン・バリー (John Barry) が1972年に手掛けた本作は、彼の膨大なディスコグラフィの中でも、ソフトロックのファンから熱烈な支持を受ける隠れた名盤です。スパイ映画の緊迫感とは対極にある、ロンドンの曇り空と甘美なロマンティシズムが見事に融合した一枚です。

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OST - Follow Me

UNI Records – 73056

73056

1972年に公開されたイギリス映画「フォロー・ミー」 (原題: Follow Me! / 米題: The Public Eye) は、「第三の男」などで知られる名匠キャロル・リード (Carol Reed) 監督の遺作となった作品です。

上流階級の堅物な夫が、自由奔放な妻ベリンダ (ミア・ファロー) の浮気を疑い、私立探偵ジュリアン (トポル) に素行調査を依頼するというストーリーですが、そこで繰り広げられるのはサスペンスではなく、ロンドンの街を舞台にした奇妙で温かい心の交流です。この映画の持つ「大人のおとぎ話」のような雰囲気を決定づけたのが、ジョン・バリーによるスコアです。

ジョン・バリーといえば「007」シリーズにおけるブラスを多用した「ボンド・サウンド」や、「ダンス・ウィズ・ウルブズ」のような雄大なオーケストラ作品で知られていますが、本作ではそれらとは一線を画す、繊細でメランコリックな側面が際立っています。

特にメインテーマである「Follow, Follow」は、ソフトロックの金字塔として評価されるべき美しさを持っています。甘く切ない旋律は、当時の少し憂鬱で、しかし美しいロンドンの空気感を真空パックしたかのようです。劇中で流れるボーカル・バージョン(歌唱はテルマ・キーティングとされることが多いです)の儚げな響きは、ヒロインの孤独と純粋さをうまく表現しています。

アルバム全体を通じて、バリー特有の美しいストリングス・アレンジが際立っていますが、単なるイージーリスニングには留まりません。例えば、「This Is How You Dance」は、ジャズ・ファンク的なアプローチが取られており、モッズ(Mod)的なラウンジ・グルーヴとしてDJやレア・グルーヴのコレクターからも人気があります。

美しいメロディの裏に潜む、こうした都会的で洗練されたリズムセクションの存在が、本作を単なるサントラ盤以上の「ソフトロックの名盤」として成立させている要因と言えるかもしれません。

本作は、ジェームズ・ボンドの作曲家というパブリック・イメージだけでジョン・バリーを語ることがいかに勿体ないかを教えてくれます。「彼ほど映画の心を捉える音楽を作れる者はいない」とジェリー・ゴールドスミスに言わしめたその才能は、アクション大作だけでなく、こうした親密な人間ドラマでこそ真価を発揮しているのかもしれません。

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