[Enja enja 9864] ペトロス・クランパニス (Petros Klampanis) - Latent Info

音楽との出会いには様々な形がありますが、「音」そのものの魅力に強く惹きつけられ、アーティストや楽曲の世界に深く没入することがあります。

ギリシャ出身のベーシスト、ペトロス・クランパニス (Petros Klampanis) が2025年にリリースした最新作「Latent Info」は、まさにそのような体験をもたらしてくれました。

Roonのおすすめで出会い、その音質と音楽に惹かれた1枚です。

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Petros Klampanis - Latent Info

Enja – enja 9864

enja 9864

私がこのアルバムに初めて出会ったのは、Roonのおすすめで聴いた、Qobuzの96kHzストリーミングでした。

ピアノ、ベース、ドラムの三者が織りなす音は、個々の楽器が分離しつつも、一つの空気感に見事に溶け合っていました。そのサウンドに魅了され、すぐに旧譜や関連作品も聴きました。これはRoonがもたらす理想的な音楽体験だと思います。

レコードが出る情報も確認し、すぐに購入しました。デジタルも素晴らしいですが、レコードも期待を裏切らない内容です。

本作のタイトル「Latent Info」とは、「潜在情報」を意味します。

レコーディング・エンジニアであるジョージ・カリオティス (George Karyotis) が提唱した言葉で、録音時に各マイクが他の楽器の音を拾ってしまう「音のかぶり」を指します。通常、これはミキシングを困難にするため排除されがちですが、クランパニス達はこれを音楽の生命感と捉え、積極的に活かす道を選びました。  

そのために選ばれたレコーディング手法は、現代の主流とは真逆を行くものでした。

メンバーであるクリスチャン・ランドゥル (Kristjan Randalu) のピアノ、ジヴ・ラヴィッツ (Ziv Ravitz) のドラム、そしてクランパニスのベースは、個別のブースではなく、全員が同じ一つの部屋で同時に演奏し、その様子を「ワンテイク」で収録しています。この手法により、その場の空気感、つまり「Latent Info」が余すところなく捉えられました。

録音が行われたアテネのシエラ・スタジオ (Sierra Studios) が、世界的な音響設計家トム・ヒドレー (Tom Hidley) による優れたアコースティック空間だであること、エンジニアのカリオティスの卓越した技術があったからに他なりません。  

最終的なマスタリングは、ECMレコードの仕事で名高いクリストフ・スティッケル (Christoph Stickel) が担当しています。

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