1970年のアルバム「…Em Pleno Verão」(真夏のさなかに)は、ジャケットの通り喜びに満ち、祝祭的で、活気に満ちています。
しかし、その作品が構想され、リリースされたのは、ブラジル軍事政権下で最も残忍な弾圧が行われていた時期です。
1968年12月に発令された軍政令第5号(AI-5)の影響下にあり、ブラジル現代史において最も暗黒の時代の一つでした。
AI-5は、人身保護令状を停止し、議会を閉鎖し、政府に絶対的な権力を与え、検閲を制度化しました。これにより、カエターノ・ヴェローゾやジルベルト・ジルのようなトロピカリア運動の中心人物が逮捕され、ロンドンへの亡命を余儀なくされています。
Elis Regina - Em Pleno Verao
Philips - 811 467-1

当時のブラジル音楽界は、ボサノヴァの第一波は過ぎ去り、トロピカリアは暴力的に弾圧され、商業的にはホベルト・カルロス率いるポップ・ロックムーヴメント「ジョーヴェン・グアルダ(Jovem Guarda)」が市場を席巻していました 。
エリス自身、ジョーヴェン・グアルダに対して批判的であったことが知られており、その彼女がホベルト&エラズモ・カルロスの「As Curvas da Estrada de Santos」をレコーディングするという決断は、音楽的な外交政策ともいえます。
彼女は、確立されたサンバやボサノヴァの枠を超え、このアルバムは、新たな政治状況に対応するためのレパートリーの転換点となりました。
70年代当時は、まだラジオとの互換性も考慮し、モノラル録音が珍しくありませんでした。
この作品もオリジナルはR 765.112 Lでモノラルです。
ステレオの初では83年の81146718です。
手元にあるのは、まだオリジナル盤がどうこう知らない時期に購入したステレオレコード。
90年代の再発盤です。
エリスレジーナは36歳という若さで亡くなっています。その短いキャリアとしては、多くの作品をリリースしています。
全部を持っているわけではありませんが、手元にある作品ではこれが一番気に入っています。ジャケットの力が大きいかもしれません。
夏っぽいというか、太陽を連想するジャケット、テンポも良く歌にも力があり、ロックな要素も感じます。
国民的シンガーですので、映像もたくさん残っています。
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