「春の祭典」には古今さまざまな録音が存在しますが、アナログ時代から優秀録音の筆頭として挙げられてきたのが、Georg Solti指揮Chicago Symphony Orchestraによる本作です。
TAS(The Absolute Sound)のSuper Disc Listにも長年掲載され、デッカ・サウンドの黄金期を象徴する一枚として、演奏・録音の両面でオーディオファンから絶大な支持を得ています。
Georg Solti - Stravinsky: Le Sacre Du Printemps
Decca - SXL 6691
Stereo Sound - SSHRS-001/002

録音は1974年5月14日、シカゴのメディナ・テンプルにて行われました。
プロデューサーはRay Minshull、エンジニアはDeccaの名手Kenneth Wilkinsonが担当し、James Lockがアシスタントとして参加しています。メディナ・テンプルは当時Deccaが好んで使用していた会場で、オーケストラ・ホールが空調設備の設置により録音に不向きとなったことから、シカゴでの主要な録音拠点となっていました。
Soltiとシカゴ響の組み合わせは、作品が持つ原始的なエネルギーと複雑なリズムを驚くほどの精度と迫力で描き出しています。1974年のGramophone誌でも高く評価され、激しいパッセージでの力強さとともに、冒頭のファゴット独奏に見られる繊細な表現力が称えられました。特に「生贄の踊り」におけるリズムの推進力と終盤のクライマックスには、凄まじいまでの迫力があります。演奏全体を通じて、厳格さと燃え上がるような情熱が同居しています。
録音の音響面では、広大な音場がまず際立ちます。
オーケストラの各パートが明確に定位し、奥行きのあるサウンドステージが展開されます。打楽器群の衝撃的な響きや金管楽器の輝かしい音色はデッカ・サウンドの真骨頂といえ、Wilkinsonによる録音は細部の解像度と全体のダイナミックレンジを高い次元で両立させています。
同じ英デッカではAnsermeの「春の祭典」(SXL 2042)も人気がありますが、録音・演奏の両面でこのSolti盤と比べるとかなり見劣りします。
LPは累計10枚以上購入しました。マトリクスは2W/1Wが最も古く、以下4W/2W、5W/2W、7W/3Wなどが存在します。
本作のXRCD(JVC)も評価の高いリイシューです。単体で聴く分には近年の録音と比べても十分に優秀ですが、オリジナルのレコードと比較すると埋められない差は感じます。
ステレオサウンドの「オーディオ名盤コレクション」企画により、本作のSACDシングルレイヤー+通常CDの2枚組(SSHRS-001/002)が2016年にリリースされました。
以下の商品説明が示すように、マスターテープの音声をほぼ無加工でデジタル化するというコンセプトが特徴です。
本商品はオリジナル・アナログ・マスターテープの音声をほぼ無加工でデジタル化したものです。そのため、原則として、超低域のカットはおろか、音を聴きやすくするためのイコライジングやマスターテープに起因するノイズカットおよびドロップアウト等の補正処理を行なっていません。これは限られた制作関係者のみが聴くことが可能だったマスターテープの音をできる限り忠実にオーディオファイルの元にお届けしたい、という商品企画に基づくものです。
参考: ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」(SACD+CD・2枚組)
オリジナルのレコードがどの程度編集処理されているかは当事者にしかわかりませんが、EMIがDeccaと比べて音質面で見劣りする要因の一つとして、この編集工程の差が挙げられることがあります。
SACD版は序奏(第1曲)と大地の踊り(第8曲)を中心に比較すると、オリジナルLPと一長一短の仕上がりで、特に低域側の明瞭度が際立って高いです。50年以上を経た現在でも、この録音の価値はまったく色褪せていません。