1993年、ブリットポップ前夜のイギリスで、たった1枚のアルバムを残して姿を消したバンドがいます。
ソングライターのジョニー・メールを中心に、ネオアコからクラブミュージック、そしてギターポップへと音楽性を変遷させてきたプロジェクトの到達点がこの作品です。
Sensation - Burger Habit
One Little Indian - TPLP045

センセーション (Sensation) の出発点は、1980年代後半のマンチェスターに遡ります。
ジョニー・メールが最初に結成したMetro-Trinityは、後にDovesで知られるジェズ・ウィリアムズをギタリストに擁した短命のインディー・カルテットでした。
Prefab Sproutの「Steve McQueen」期を思わせる端正なギターポップを志向し、自主レーベルから12インチEP「Die Young」を1枚残したのみですが、そのネオアコースティックな佇まいは一部のファンからカルト的な支持を集め、現在では高額で取引されています。
1989年、メールはガイ・バットソン、そしてリードボーカルにジェリサ・アンダーソンを迎え、Soul Family Sensationを結成します。
シカゴ・ハウスの隆盛に触発されたクラブミュージックとポップスの融合を試み、1991年にOne Little Indianからアルバム「New Wave」をリリース。インディー・ダンスシーンを象徴する1枚となりました。
中でも「The Day You Went Away」は、ソウルフルなボーカルとメランコリックなメロディが印象的な佳曲です。
ジェリサはその後、同じOne Little Indian所属のThe Shamenに参加し「Boss Drum」でプラチナを獲得、さらにビョークの「Debut」にも客演するなど活躍の場を広げていきます。
彼女の脱退後、メール自身がボーカルを引き継ぎ、バンド名をSensationに改めて制作されたのが本作「Burger Habit」です。
デンマークのGangwayの後期エレポップ路線を、よりギターポップに寄せたようなサウンドが特徴です。
一聴すると素朴で垢抜けない印象を受けるかもしれません。しかし、少しずれた感覚のメロディや気だるいボーカルの奥には、クラブミュージックを通過したグルーヴが確かに息づいており、それが独特の中毒性を生み出しています。ネオアコからクラブへの接近という表現は大げさかもしれませんが、この絶妙なバランス感覚は、後のSpearmintやフレンチポップのPhoenix、Tahiti 80といったバンドへの橋渡し的な位置にあると感じさせます。
Burger Habitの後、Sensationはセカンドアルバムの録音に着手しますが、リリース先が見つからずプロジェクトは頓挫。
メールはその後、Flowered Up出身のティム・ドーニーに誘われRepublicaに加入し、「Ready to Go」の大ヒットで商業的成功を収めることになります。どの時代においても独自の魅力を放つメールの仕事の中でも、本作はネオアコとクラブの感覚が最も自然に溶け合った瞬間を捉えた1枚です。
Roon
SACD
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